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映画「すみっコぐらし」をみて号泣する男

「映画のすみっコぐらしがやばい」というのを幸せの青い鳥的なSNSで見かけたので、その謎を解明するべく僕はアマゾンの奥地へと向かった。
SNSでの反響を見て映画館に行くのは、去年の「若おかみは小学生!」以来である。

車を走らせ映画館に着いた。11時45分開始の「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」のチケットを購入する。「ご一緒にポティトゥはいかがですか?」と訊かれた。うるせぇ俺は映画を観に来たんであって食事に来たわけじゃねーんだ、あと発音いいな! 「結構です」と断りすぐに座席へと移動した。

「俺と…ブラスポに行ってくれないかぁー!」 
バリバリの地方感溢れるCMが流されるスクリーンの前に座っていた観客は3人だった。まあ平日だし、こんなもんでしょう。
「ママー、チュロスとってー」 と幼女がお母さんと話している。
チュロス! そういうのもあるのか。そういえば今日朝ごはん食べてねーわ。やはり売店でポティトゥを購入するべきだったのか…? 私の忠告を聞かないからですよ、とほくそ笑む店員の姿が脳裏をよぎった。ポティトゥだけじゃなくてオォウレンジジュゥゥスとかも一緒にオススメしてくれねーと、口ん中パッサパサになるんだが?

もう1人の観客は女性で、スマンホホを弄っていた。上映時間が迫ってることもあり、すぐに鞄の中に仕舞った。映画泥棒の例のCMを挟み、劇場内が暗くなる。いよいよ映画の始まりである。

ナレーションとともにすみっコ(キャラクター)たちの紹介がされていく。僕は以前書店に勤めていた際に、彼らのキャラクターグッズを扱ったことがあったが、どういうキャラなのかまでは知らなかった。なるほどなるほど、みんな部屋の隅っこが好きで、自信がなかったり、暗い過去をもっていたりするわけだ。俺じゃん。陰の者じゃん。

映画の内容はタイトルにもある通り、とびだす絵本が舞台になっていた。すみっコたちが絵本の世界に閉じ込められ、そこで旅をするという感じだ。桃太郎や、赤ずきん、マッチ売りの少女といったメジャーな作品にスポットが当てられており、未就学児でも楽しめる明るい物語が繰り広げられた。ラスト手前までは。

大人…おそらく中学生にでもなればラストの展開は読めてしまうだろう。しかし、待ち受けている結末がわかるからこそこの作品は大きな反響を呼んだのだと思う。

気付くと僕は泣いていた。スクリーンの向こうにいるすみっコたちと同じように。ポロポロと温かい涙の粒が頬を伝っていた。後ろからもすんすんとすすり泣くような声が聞こえた。僕の前に座っている幼女はじっとスクリーンを見つめている。きっと心に残る大切な物語になるんだろう。

物語が終わっても僕の涙は止まらなかった。だってスタッフロールが温かすぎるんだもの。鼻水まで出てきた、ハンカチで拭ったら鼻血だったわ、やべぇな。

とりあえず、穴という穴から液体を放出しながら「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」の観賞は幕を閉じた。

どうせお子さまむけでしょ? と舐めてかかった僕の心は完全に抉られた。とても温かい気持ちになれたよ。すみっコぐらし、ありがとう。

 

 

おわり

【おまけ】