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飲食店大進化論Ⅱ投稿集202307

【2023年7月分Twitter履歴】

未だにマスクを外せない人の多い日本民族は同調圧力が強いけれどもWebのおかげで多様性に身をさらしておりしんどくもなっている。流行りは試したいけれど身銭を切らなくてもどんなものかは知ることができる。みんなが買っているからは購入理由にならなくなり、買う理由づけが重要になった。
 
飲食店は調理した料理提供というモノ消費から始まった。物欲の次は楽しい食事というコト消費が重要になり店の伝えたいコトが問われてイミ消費も問われるようになった。SNSで画像共有が進むと再現できないコトを求めてトキ消費に変化しコロナ後は心が満たされるエモ消費が求められ始めている。

渋谷109研究室が発表したZ世代のトレンドワード2022「界隈消費」は時代の気分をよく表していると思う。趣味や価値観が多様化する中で万人受けするサービスよりも仲間うちのトレンドが重視されているのだという。「○○界隈で流行っている」自分達だけという狭くて深い特殊感が重要だ。
 
人の欲求は際限ない。物欲が満たされるとコト消費に移行したが、リア充を競う中でフォトジェニックが注目され料理内容よりもインスタ映えが外食目的になり、同じ写真では驚きがないからその場限りが重要なトキ消費が生まれ、更には刹那的に共感を得られるエモ消費が来店動機になっている。

1975年に料理天国の放映が始まるとグルメを楽しむ人が増えていった。 昭和フーディーが飛びついたのはフレンチだ。当時流行のヌーベルキュイジーヌが日本人の舌にあったというのもある。この流れがイタ飯ブームに展開し外食が身近なものになっていく。昭和は料理が目的のモノ消費時代だった。

バブル崩壊をきっかけにカフェ飯が持て囃されるようになる。客足の遠のいたフレンチが中心となり、オープンエアが売りのおしゃれなカフェを出現させた。ワンプレートの創作料理を居心地のよい店内で食べさせるスタイルが日本人の外食嗜好をモノ消費からコト消費へと進化させていった。
 
電車の中でほとんどの人がスマホをいじっている。なぜ必死になってスマホを見るのかと言えば、トレンドになるものはひと通り見ておく必要のある教養だからだ。みなが見ているや話しているものは外したくない。中でも料飲関係の話材はSNSに晒して安全だし、誰の目も引きやすい表現財になる。
 
インスタグラムがフォトジェニックによるリア充アピールを容易にした。色鮮やかな食べ物や絵画の如く盛りつけられた料理は注目を浴びやすく趣味嗜好を自慢する道具にもなる。店としてはSNS拡散を期待できるのだが映え消費は食べるのではなく撮影目的で来店するという弊害も生み出した。

ボルケーノ鍋 /出典:ダルビッマル公式サイト掲載画像 https://dalbitmaru.owst.jp/

人々は時間に対して敏感になっている。情報の氾濫で自分時間の投資効果が気になり始めたからだ。 そして自分がその時間を楽しんだというログは残しておきたい。タイパのよい体験とログによるリア充の彩りにコト消費の目的が変わってきている。SNSで趣味嗜好が透けて見えるので尚更だ。
 
インスタグラムも通信技術の高次化で写真から動画へとトレンドが移り変わり、ストーリーズからインスタライブへと使い方も変化している。 重要なのはフォトジェニックの「映え消費」が物足りなくなり、その瞬間にしか味わえないイベントに参加するという「トキ消費」への進化だと思う。

NHKニュース@nhk_news7月10日
【ことし上半期倒産 5年ぶり4000件超 サービス業や小売業などで】
このうち、新型コロナに対応した実質無利子・無担保融資、いわゆる「ゼロゼロ融資」を受けたあと倒産した企業は304件で、半年間の件数としては、これまでで最も多くなりました https:// www3.nhk.or.jp/news/html/20230710/k10014124381000.html #nhk_video

どうせ外食にお金を使うなら社会的に意味のある食事にした方がよいとコト消費の発展形態でどのような価値を生み出すかを大切にしたのがイミ消費だ。同じ価値観が集まるコミュニティ内のみで支持されるものを好むのが界隈消費で、その盛り上がりが私的な満足感でエモ消費へとつながる。
 
外食で店選びの判断軸に「その店での食事が社会的文化的あるいは個人的に意味のあるものなのか」を組み込むのがイミ消費だ。東日本大震災の被災者応援が時代の気分を盛り上げ、コロナ禍による社会変化が必然性を拡大した。デジタル化による社会問題への関心の高まりが背景になっている。
 
社会的な存在意義をパーパスと言う。未来に向けてこうありたいと一人称的に表現したのがビジョンやミッションであり、多様性に満ちた世界でどのようなインパクトを提供できるのか三人称的な視点で描くのがパーパスになる。破壊的イノベーションから優しいビジネスへ時代が動いている。
 
パーパスは慈善でも空漠たる美辞麗句でもない。短期的な予算達成と収益改善を目指しお客様第一に便利な店を目指してきた経営を見直し既存市場への最適化から脱出し未来を創造するために戦略の中心へ置くべきものだ。飲食店を再定義し利用客を束ね動機づけによって推しの店を実現する。
 
仲間うちで支持されているものに価値を見出すのが界隈消費である。界隈は概念として推しに近い意味合いだろう。 推しの店というのは万人受けするのではなく特定の界隈で強烈に支持されている店を指すからだ。間口の広さよりも奥行の深さを重視するから所在の秘匿や会員制も戦略になる。
 
例えばゲームは「どうでもいい」が鍵だ。リアルな社会生活とは無関係に隔絶されているどうでもいいものだからこそゲームの持つ世界観に没入できる。夢中になれる感情的な満足感が厳しい日常生活を乗り越える糧になる。推し活の対象はすべからく同様の意味を持つ。飲食店も例外ではない。
 
お客様はモノ消費ではなく体験や物語に大枚をはたいている。せっかくの時間をよりよく過したいというのはみなが同じだからデフレ化しており可能なら自分だけの体験をしたいと考えている。自分に分かりやすく誰もやっていないような特別な体験が欲しい。その思いがエモ消費に向かわせる。
 
コト消費はコロナ禍によるソロ生活の拡大でエモ消費へ軸を移行しつつある。「エモい」はエモーショナルの略だが、論理的に説明できないけれど満たされる精神的な充足感と理解したい。モノやコトは手段にすぎないから将来感覚的にズレてくる。お客様の心を満たす精神的満足に取り組みたい。
 
エモ消費を意識したメニューは現実として想像しやすい小さな幸せを提案する。自分に向けられた料理と思ってもらうために料理内容の説明をやめてお客様視点で客席のシチュエーションを突きつめる。飲食店集客で何となくヤバ可愛いメニューだからちょっと食べてみたいなと思わせれば成功だ。

フルーツホタル/ 出典:ハカタホタル中目黒店(@hakatahotaru.nakameguro) _ Instagram

何がエモいかは目の前にいるお客様に聞くしかないだろう。日常生活に埋もれた小さな心地よさを過去の記憶から掘り返していく。聞き出したエモい情景は発想を広げてどこに共感のポイントがあるのかを探る。見つかったら仮設で具体的な状況を設定し自店の強みに結びつけてメニューに落とし込む。
 
昭和レトロはエモいものの代表格だ。古き良き時代への懐かしみは心理学で歴史的ノスタルジアと呼ばれ、脳科学者はこの古さに目新しさがバランスよく結びついた状態に好感が生まれるという。意外性のある新奇性をいかにも昭和というメニュー外観で包み込んで成功した料飲メニューは確かに多い。
 
全てで及第点を取ろうとすれば尖がりがなくつまらない店になる。及第点のぼんやりとしたコンセプトでは数多の競合飲食店に埋没して存続すらできないだろう。一点突破こそがコロナ後の新天地を開く鍵だ。客層の絞りこみで客質を高め、その界隈に向けてイメージリードの看板メニューを展開する。
 
店の強みを煮詰めて沢山の組み合わせを試作し「これが一番」と自信を持ってお勧めできる看板メニューが決まったら、お客様への訴求を考えて盛りつけの映え感、背景にある意味性、非再現性の演出方法、濃いファン獲得に向けた界隈性を整理して、料理の機能的価値にデコレーションしていく。
 
一点突破の尖がったイメージリードメニューを明確に打ち出す。次に対比で誘導する釣りメニューを配置する。目に留まりやすくするポジティブな関係が基本だがネガティブ要素を組み込み売らない前提で見せるだけの品も忘れてはならない。更にステップアップさせた惹きつけメニューで心をつかむ。

外食はデフレを背景とした新業態開発競争で発展を遂げた。新しいものや珍しいものを追求していったので業態のニッチ化が進み、どん詰まりの状況下で降ってわいたのがコロナ禍だ。外食市場は抜本的に変化してしまった。業態開発では時代を乗り切れない。人的な共感性開発が求められる。

新規客集めに重きを置いた集客モデルは外部環境の変化に極めて脆い。コロナ禍で外的な立地環境などに依存した店づくりの危険性が身にしみたし安定した常連客を持つ推しの店は来客数9割減という異常事態にあっても強かった。ますます不確実になる世界で頼りになるのは人の輪と言うことだろう。
 
コロナ禍で人間関係が希薄になった反動からか時代はキッチン主導による商品力勝負からホールが中心的な関係力勝負に移行している。料理自慢であれば出数を稼ぎたいので客数を増やしたくなるが、お客様との永続的な関係性が大事になってくると客質を高める必要がある。常連客が店の武器になる。
 
飲食店が大事にすべきは来店の発意であり新規来店に至った心理の変化と固定客化に至った心理の変化だ。消費行動を左右している根本理由を見つけたいが、多くの場合お客様自身も明確に意識していないからやっかいだ。平均値や最大公約数から導き出した統計的な市場調査からは中々見えてこない。
 
商圏を規模で捉える定量調査もアンケートで傾向を捉える定性調査も市場をマスで捉えてるからコロナ後の情勢変化についていけなくなっている。市場調査の専門家はニッチで捉える経験に乏しく躊躇しがちだろうが、それでは当たり障りない既視感しか生み出さない。もっと調査対象を絞り込むべき。
 
飲食店の再訪率は来店2回目から4回目ぐらいに急上昇し以降は緩やかな曲線を描く。来店数が増える程間隔が短くなり10回を超えればファン化により8割方定着する。コロナ後は家でも職場でもないサードプレイスと心地よい関係性を飲食店に求めるお客様が増えているから上手くニーズに応えたい。
 
外食は大きくバブルショックでモノ消費からコト消費に力点が移りコロナショックでコト消費からエモ消費に力点が移っている。コト消費はトレンドに身を委ねて映え消費・トキ消費・イミ消費・界隈消費を要素として組み込んできた。だからコト消費はそれぞれの意味合いからアプローチするとよい。

https://twitter.com/solink_pub


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