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飲食店大進化論Ⅱ投稿集202301

【2023年1月分Twitter履歴】

2022年は国家中心の国際社会という古典的なリアリズムへの回帰が強まった年だった。グローバル化にブレーキがかかり、食材や燃料が外交カード化してしまった。飲食店の人手不足はますます深刻だし、外食市場は縮むばかり。 今年は新しい戦前になるというタモリの読みに奥深さを感じる。
 
バブル崩壊は日本に失われた30年をもたらしたが、飲食は産業として成長し、日本人に豊かな食生活を目覚めさせた。 しかし30年間の足踏みで国内消費が振るわず、コロナ禍が飲食店に内在する前時代的な欠点を浮き彫りにしてしまった。飲食は抜本的な構造改革で産業力をあげる必要がある。

外食市場規模の推移と時代背景

家業だった飲食店はチェーンストア理論で経営の近代化が進み、バブル後の出店競争で外食があたりまえになる。日本人の口が肥えたので独自性を求めて新業態開発が競われグルメサイトやSNSでの評判が重要になったが、コロナ前では考えられない生活変化によって新たな対応を迫られている。

外食の成長期はオールマイティな百貨店食堂が代表的存在だった。日本社会が成熟し一億総グルメの時代になるとコスパ勝負になり他店と一味違う個性や専門性が競われるようになった。 コロナ禍は飲食業の弱点を表面化させたので高価格店のコスパ追求や低価格店の付加価値化が進んでいる。

ヘーゲルの弁証法は時代の流れを3段階で考え新しい見識を発見する。経済成長のインフレ期が(正)でバブル崩壊によるデフレ期が(反)ならば、コロナ以降の今を(合)という新しいステージで捉えることができる。店のコンセプトやオペレーションは正→反→合で考えると導きやすくなる。

ヘーゲルの弁証法で時代を捉える

感染リスクで外食にストレスを感じる人が増えたので、コロナ後のイートインにはあえて店に行かなかれば得られない強いパワーが求められるようになった。 自宅では体験できない特別な食事が今年の飲食店にとっても大事なテーマになるだろう。お客様に寄り添って何ができるかを考えたい。

コロナ禍以降は世界的に飲食店を小型化させる傾向にある。わが国でも分割により小型化して身の丈にあった店づくりをしようという動きが見られた。 例えばせんべろ居酒屋の店内を卓上サワーのセルフ焼肉と立ち食い寿司に2分割し別々の暖簾をかけた小型飲食店にする取り組みなどがある。

コロナ以降に開業した飲食店ではモバイルオーダーの導入が増えている。モバイルオーダーは非接触や高効率を具現化するだけではなく ホールサービスを抜本的に変えてしまう力がある。スタッフが出向いて声をかけなくても勝手に注文してくれるメリットは計り知れない。動向を注目したい。

公式サイトより塚田農場さんのモバイルオーダー画像を借用した。システムはトレタO/Xを利用している。商品案内には文字情報+写真+動画で効果的に組み合わせられるのでシズル感あふれる説明が可能。お客様は少しずつオーダーするので品出しが分散し注文数も増えやすいという。

渡航自由化で海外修行してきた料理人が70年代にヌーベルキュイジーヌ(仏)を伝えビストロブームが起こり、よりカジュアルなヌオーヴァクッチーナ(伊)やヌーベルシノワ(中)に広がった。 一億総グルメでは新奇性が求められたが、今は復古主義的だから伝統和食やガチ中華の時代が来ている。

今年はエスニック系の伝統家庭料理にトレンドの気配がある。 インドの炊き込みご飯で一般的にはカレーと茹でた米をミルフィーユ状に重ねて蒸し上げるビリヤニを耳にするようになったし、松屋で知られるようになったマッサマンカレーや無印良品で広がったルンダンも気になる存在である。

チェーンストア理論の申し子ともいうべきテーブルサービスレストランはファミレスチェーン店と居酒屋チェーン店だろう。
外食業界をけん引してきたかつての成功体験を見直すパラレルな生き方が求められていると思う。
https:// bit.ly/3VYR7GZ

次世代の調理技術として注目したいのが水素調理だ。 プロパンではなく水素ガスを燃焼させる調理法で、水素が燃焼によって酸素と結合し水蒸気を発生させて蒸し焼きにするので食材の水分や旨味が閉じ込められジューシーに焼きあがる。もちろん脱炭素効果もあり今年のヒットが期待される。

2023年で最も気になる話題はニューヨークに実店舗がオープンする世界初のNFTレストラン。 NFTはWeb3.0の要であるブロックチェーン技術のデジタル資産。 世界にひとつの非代替権だから購入者はVIP待遇の権利をリースや転売で現金化が可能。正にリアルとデジタルを合体した未来型外食だ。

コロナ禍によってデジタル化に目覚めた飲食店も多いがクラウドサービスによるWeb3.0時代が到来したのでDX化で徹底的に人件費を削りその分で食事の付加価値を高めるフードテック業態とDX化を利用してヒューマンタッチな顧客接点を高度化するフードサービス業態に大きく分かれるだろう。

Z世代を中心にアルコール離れが進んでいる。今は各自が飲みたいものを飲んでよい雰囲気がありノンアルを含め飲み物の選択肢が増えたし、そもそも飲み会への強制参加を嫌う人が多いからだ。 ネオ居酒屋やカスタムビールの出現はトレンドがライトドリンカーに軸足を移した証と言えよう。

Pinterestはお洒落なノンアルやモクテルの検索が急増しているとして2023年の飲料トレンドを「フリースピリッツ」と捉えた。 微アル商品はビール離れの進む若者層がターゲットだったが実際には中高年層にヒットしている。 カクテルはベースのスプリッツにこだわらないのが新しさだろう。
 
コロナ禍で生まれた時代変化をもっとも色濃く反映させているのがネオ居酒屋だと思う。 ネオ居酒屋は新しい付加価値を楽しませるオシャレで個性的な体験空間で、従来からの大衆居酒屋業態をベースに今の若者ニーズを取り入れ目を引くギミック満載の店づくりでZ世代の心をつかんでいる。

カフェはオシャレな場所提供でブームになったが、低回転率と低客単価を克服するために目的指向力で悪立地に成立させ付加価値で単価アップを狙う進化系カフェが増えている。 仕掛けは嗜好性に訴えるイベント系や創作スイーツを提案するグルメ系、高級ブランドが運営するブランド系など。

食欲のままに食べるのではなく身体づくりに必要なものを食べるというのがタイパ時代の健康意識のようである。 高たんぱく低カロリーの羊肉や鶏むね肉が好んで食べられる様になり鹿や蛙などジビエも栄養食材と紹介されている。牛肉も穀物肥育一辺倒ではなく国産の牧草肥育肉が出始めた。
 
健康食の歴史は1981に薬膳レストランが紹介されてから1991医食同源がブームになり1995マクロビオテック2001スローフード2006ローフード2011ローカーボとヘルシー系が主流だったが 2015にケトン体ダイエットや原始人食が紹介されてから筋肉メシなどがっつり系へ流れが切り変わってきた。
 
コロナ禍とウクライナ侵攻を経て輸入食材の調達が厳しくなっている。輸入への依存度が高い大豆じゃが芋小麦など輸入原料の価格高騰が異常になったので 輸入に頼らない米の活用を見直す空気が生まれている。寿司や丼ぶりものだけではなく炊き立てが売りのオンザライス系業態が増えそう。

日清食品はカップヌードル46年目の告白で"謎肉"の正体は大豆と肉などをあわせた近未来ハイブリッドミートだと明かしたが 今年のグリーントレンドはハイブリットミート系食材に注目したい。昨年話題になった完全植物由来のプラントベースミートだが、人気が低迷し販売量が伸びていない。

食のトレンド予測2022で第1位だった青パパイヤは免疫力を高める酵素の王様と紹介され日常的に見かけるようになってきた。 以前は沖縄から送るしかなかったが日本中に生産農家が広がってきている。料理用途の広い健康食材なので引き続き注目したい。タイのソムタムが代表的サラダ料理。

コロナ禍が長引いたためリモート宴会に違和感がなくなっている。身内で飲むなら家飲みで十分と考える人が増えているから、外食には店でしか味わえない家飲みでは不可能なエンターテイメント性が求められるだろう。 これからは料理内容よりも特別な食事体験の内容が競われるようになる。

絵画などで高額取引が話題になったNFT技術だが今年はエンタメ系のデジタル入場券に活用が増えそうだ。 入場券代わりのQRコードをNETから生成するので入場が簡素化でき会場でもたつくことがなくなる。半券ビジネスも展開しやすいから飲食店のファンサービスに活用できそうで注目したい。
 
2023年は時代の気分にあわせて店づくりを抜本的に見直すターニングポイントになるだろう。コロナ禍によって店舗ビジネスの利点が欠点になり外食する意味合いが薄れてしまったからだ。 飲食店にはこれまでとは違う強力な利用動機が求められ、安全安心への配慮もより一層不可欠になった。

あふれる情報で店の魅力が伝わりにくくなっている。飲食店に重要なのがファンベースの考え方だ。 客数の拡大が難しくなった今、量的な客数拡大から質的深化に路線変更する必要があるだろう。お客様の感情によりそい食事のプレミアム感を高めてファン層をベースに事業価値を高めていく。

アメリカ西海岸から発展したスタバに代表されるシアトル系コーヒーはエスプレッソにアレンジを加えるのが基本。その前にブームになったイタリア系とは異なりアレンジを楽しむコーヒーであり、アプローチがどんどん進化していておもしろい。
 
これからの飲食店は不特定多数の外食需要を囲い込んだり刈り取るのではなく、少数でも店の価値観を支持してくれる目の前のファンを大切にしたい。 コロナ禍でも常連客が多い推しの店は強かったがファンの共感性が高ければ自然にクチコミが拡散するし、推し活で類友を呼び込んでくれる。
 
インフレ期に成長しデフレ期で発展した外食業界は原価率を下げて安く売り、便利な食事を追求してきた。お客様はコスパを価値基準にする様になりクチコミ評価点が来店動機になっている。 しかしコロナ後は食べる楽しさだけではない楽しさをどう作るかが課題で心に響く価値を工夫すべき。

コロナ禍をきっかけに外食業界は挑戦期に突入した

コロナ禍によって外食メニューはおうちゴハンでも楽しめることに気がついたお客様は多い。だから外食にはおうちゴハンでは不可能な非日常感が求められている。 飲食店ではわざわざ足を運んで非日常の食事を体験し、その内容をクチコミで発信してシェアしたいお客様への対応を整えたい。

飲食店で非日常を感じる食事体験とは、ホットペーパーグルメ調べによると豪華な料理/旬の食材/食べ放題飲み放題が上位でアトラクション要素は思ったほど高くなかった。 店選びは料飲内容の評価が前提になるということか。おうちゴハンで味わえない飲食店ではの食事品質に期待が大きい。

最近は大手チェーン店のサービス品質に劣化を感じることが増えた。 コロナ禍で大量解雇せざるを得なかったツケだろうか。人数不足に加えスタッフが間に合わないのにマニュアルはコロナ前のままで修正されていないから利用客は不信感を噴出している。今すぐ時代対応に着手すべきだろう。

これからの飲食店は自分たちの世界観を大事にしたい。店の世界観でキュレーションされた事業内容を場に集うお客様の感性に寄り添って編集するのである。 飲食店はかくあるべきという従来発想に縛られていては時代に取り残される。世界観に裏打ちされた新しい価値創造が求められるのだ。


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