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軽井沢町国土強靭化地域計画(案)に関する意見書

この投稿は「軽井沢町国土強靭化地域計画(案)」、つまり軽井沢町の有事の防災計画についての意見募集をうけて、2021年3月19日に軽井沢町総務課 防災係へ僕が提出した意見・構想を、より詳細に説明したものです。

まず意見として提出した内容は以下の通りです。

コンセプト「誰ひとり置き去りにしない防災情報アクセス構想」
→ 有事に町民自身が避難所・避難場所へアクセスできるようにする
→ 有事に救急消防等の救助活動が無駄なく高速にできるようにする
A. 平時の備え
アナログ施策1:避難所等の緊急情報集約ポスターおよび訪問での配布
アナログ施策2:有事にのみ町の全監視装置をフル活用可能な権限整備
デジタル施策1:電波寸断でも地図が動作する避難所等の情報アプリ
デジタル施策2:町のデジタルツイン化と災害シミュレーション
B. 有事の緊急対応
アナログ施策1:ポスターで緊急時連絡先、掲示板の場所等確認できる
アナログ施策2:対災害用の監視カメラ、センサー、ドローン等を稼働
デジタル施策1:上記情報アプリを用いた町民による救難及び情報提供
デジタル施策2:デジタルツイン活用でリアルタイム災害状況の把握

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意見用紙では簡潔にしか書けなかったため、以下補足します。

コンセプトを「誰ひとり置き去りにしない防災情報アクセス構想」にした理由

軽井沢町国土強靭化地域計画(案)を読むと、建物の耐震化や無電柱化、治水工事、避難訓練、水・食料等の供給、感染予防、道路の復旧などフィジカル(物理)的な内容がほぼすべてであり(もちろんこれらはとても重要ですが)、情報伝達やデジタル化についての施策が不足しているように思えました。

ただ、「デジタル化すればいい」という単純な問題ではなく、そもそもインターネットやスマホアプリに馴染みがない(そもそも画面に表示される細かい文字などが読みにくい)と思われる高齢者の方への情報伝達を達成せねばなりませんし、有事に携帯電話用の電波(4Gなど)の断絶も前提に考えねばなりません。

そこで、どのような状況、状態にある人も取りこぼさない、「誰ひとり置き去りにしない防災情報アクセス構想」とコンセプトを決めました。

ポイントとしては2点。

有事は救急・消防・警察・役場などのリソースが膨大に消費されるので、前提として町民一人ひとりが、自分で動けるならば自力で避難所などへ避難することを推奨する点。

その上で、救急・消防・警察・役場などのリソースを無駄なく活用できるようにする、つまりどの家が火事であるとか、どの場所が停電・断線しているのかといった情報を情報提供者からの受け身ではなくリアルタイムに把握し、リソースを高速投下できるようにする点が欠かせないと定義しました。

有事に情報伝達の観点でどんな問題が起こるか

では今のまま有事になった際、情報伝達の観点ではどんな問題が起こると考えられるのかシミュレーションします。

1. 避難所・避難場所がわからない

軽井沢町では防災ハンドブックが配布されています。これ自体はとても良いと思うのですが、いざ突然地震がきた!山が噴火した!という時に、ハンドブックが即座に見つかる人が多くないと想像できます。(実際我が家でもなにそれ?と言われる始末)

そもそも自分はどこの避難所に行けばいいのか?と困った時、ハンドブックが見つかったとしても、そこから避難所マップ(ハンドブックp.38以降)を見て「自分の地域はどこだ…」と探すのも時間がかかります。

2. どこに連絡していいのかわからない

いざ有事になった際、困った人はどこへ連絡するかというと、おそらく119番、または110番へかけるだろうと想像できます。

これは間違いではないですが、どんなケースにおいても119番、110番へ連絡が集中してしまう(そこしか連絡先を思い浮かばないから)のは、リソースの観点から厳しいと思われます。

3. 情報源が絞られていない

いざという時に、「まず○○を見れば良い」という定めがありません。ガイドブックは 1. で挙げた課題があるため、もっと日常的に目に付く、たった1つの何かが必要です。

4. 携帯電波が利用できない可能性がある

今やスマホは多くの人が利用していますが、いざという時、町のホームページなどから情報を得ようとしても、そもそも4Gの電波がつながらない可能性も考慮しなければなりません。

5. 町の全体の状況をリアルタイムに把握できない

これは現状どの町でも当然ですが、被災の情報把握の多くは「被災した関係者からの連絡」か「救急・消防・警察・役場などの方が連絡」を入れた場合に限られると思われます。多くは電話やメール(一部SNS)でしょう。

これだと情報は「口頭」「文章」がほとんどで、それを誰かが受け、どの場所で、どのような問題が起き、だから○○をしないといけない、と解釈してさらなる伝達が必要になります。今では当然と思われているこの情報伝達ですが、かなりのリソースが必要となります。

上の問題を受けて、解決案の提示

情報伝達をする対象者について、大きく分けるとアナログな方法しか情報源がない方と、デジタルでも情報を得られる人の2タイプがいると想定します。

まず、アナログ情報源の方向け1〜3の解決案について。

平時に、対象者の避難所エリアと対応してそれぞれ作成された(少なくとも3エリア)、避難所・避難場所および緊急連絡先(119、110番以外で必要な連絡先含む)を大きく明記した1枚ペラのポスターを、「いつも目につくところ、たとえば台所などに貼ってください」と直接訪問して配布する。

有事には、1枚ペラの情報がいつも目に付くところに貼ってあるので、すぐに目にし、避難するなり連絡するなり、即行動することができます。これを実現するためにはポスターを作って郵送するではダメで、一軒ずつわざわざ訪問し、「目に付くところに、この後すぐに貼ってくださいね〜。どうしてかというと…」と説明することが重要です。これをしないとガイドブックの二の舞で、どこかに仕舞われてしまいます。

次にデジタル情報源の方向け1〜4の解決案について。

平時に、避難所・避難場所および緊急連絡先、その他防災情報の入ったスマホアプリを配布。

有事に、携帯電波が断絶したとしても、アプリ内の地図とGPSのみで避難所へ行けるよう設計する。

そして5の解決案について。

平時に、軽井沢町全体をデジタルツイン化(物理空間の状況をまるで双子のようにデジタル化)し、住宅、危険地域、避難所・避難場所、浅間山、水道・電線などライフラインがどう分布しているか把握できるようにする。

参考:日本国土の「デジタルツイン」本格活用が進む、防災や観光にどう使う?
参考:デジタルツインとは

このためには災害時にも耐えられる強度の監視カメラ、センサー、ドローンなども、平時に町の各所へ設置しておく必要があります。

そして平時のうちに、精巧に作られた町のデジタルツインを用いて、擬似的な災害シミュレーションをすることも可能です。これによって机上では思いもよらなかった問題点を発見する可能性もあります。

そして有事には、上記のカメラ、センサー、ドローンなどにより、火災・倒壊・堤防決壊・電線の断線・自動車事故などを自動的に町のデジタルツインへと反映、それを元に救急・消防・警察・役場の方が機動的に動けるようにします。従来の連絡手段で寄せられる情報も、デジタルツインへと集約します。

たとえば町のある一角で火事が起こっているのを、デジタルツイン上の町のモデルで視認したら、念のためその部分をタップすると、火事を映し出すカメラ映像が出てくる(これにより本当に火事が起きているかも確認できる)といったイメージです。

万が一町が完全に停電してしまった際にも、直前の情報を同期した緊急時専用スマホ(タブレット)にデジタルツインを格納しておけば、町の全体情報を持ち歩くことが可能です。

一点気をつけなければならないのは、デジタルツインで町のほぼ完全なデジタル化をした場合、そのデータの重要性・機密性ゆえに、絶対に有事の際に限られた人のみが運用できるように制限を課しておくことです。

以上が僕が考えた、軽井沢町において「誰ひとり置き去りにしない防災情報アクセス構想」です。

長文をご覧いただき、ありがとうございました。

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補足

僕個人としては、デジタル化、デジタルツインに関する知識・技術を持っておりますので、その点でもし聞きたいことなどあればご連絡いただければと思います。

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