メシ屋で聴いたピーナッツ
シモキタのメシ屋で聴いたピーナッツが忘れられない。
なんの帰りだかなんて覚えていない。僕はそれくらいすごく疲れ切っていた。
パワーの出るスタミナ飯的なものが食べたい。とふと思った気がする。いや、間違いなくその時は思った。少なくとも、一食で600キロカロリー以上あって、白米が丼の器にこんもり盛られていて、そこにちょい味付けの濃い飯が進むなにかが乗ったエネルギーフードを!よく言えば味噌汁に、箸休めのお新香をくれ!と。
そんなことで小田急線の下北沢駅で途中下車した。夜のシモキタはいつ来ても、いい意味で湿っぽくて、派手すぎず、弱い集合体が緩く繋がっている。そんな皮膚感覚がなんとなく背伸びをせずに居心地がよくて、夏の終わりの湿度に帯びたジメッとした空気とどことなく秋の匂いも相まって、さらにホームタウンのような感じだった。
僕の求めていたメシ屋は駅から数分のところにあった。
中に入ると、最新式タッチパネルで注文するタイプの食券機が一台そこにあった。なので僕は、その店でたぶん一番スタンダードで、店一押しだと思われる、一番左上の丼ぶりを発見、発券。カウンターの一番左の席に座った。すぐ隣には浄水器があって席を立たなくてもコップをとって水を汲み取れるような席だ。カウンターの内側の店員さんはもう23時すぎだというのに、元気に気持ちのいい挨拶と接客、隣にいるアシスタントらしき男と楽しそうに調理をしている。店内には音楽のまち、シモキタらしい曲が流れている。
僕の意識が変わったのはたぶん、着丼するおよそ3分半前の、Em7のコードから始まる心地のいいギターリフのイントロに、軽快なドラムのリズムが重なる瞬間だった。
どこかで聴いたことのあるような懐かしいそんな感覚。
歌詞はなんのこっちゃわからない。けど濃度の低い方から高い方へ浸透圧がかかってすっと身体に入ってくる曲。調べてみたらすでにプレイリストに入っていて、なんどもスキップしていたくるりの「愉快なピーナッツ」だった。
軽快なポップチューンのイントロのギターで食いつき、軽やかなエイトビート。くるりのちょっと難解、愉快、豪快なメロディーラインとリリック。
くるりというバンドは、常に1番にくるような物凄く好き!というわけじゃないんだけど、もうずっと細く長く好きで、不意打ちでやってきたときに再び完全に虜にされるタイプだ。
いまや高架化された小田急線と京王線の下北沢には踏切がないけれど、まだ当時の面影が十分に残っていて広大なコンクリートの空き地が残っているし、どことなく昭和っぽい区画もある。
曲の最後、このラインがもっともすきな一節。
あつあつの丼メシをかきこみながら、このメロディーラインを聴いた。
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