おむすびころりんトレイン

丸ノ内線にのったら、
立っておにぎりを食べてる女性がいた。
30代半ばで、どことなく疲れ切っているように見える。

コンビニの、炊き込みごはん的なカラーのおにぎりを、あろうことか、吊革につかまらず、両手で食べている。
そしてとてもスローモーション。

1口1口味わって、米に感謝しているかのよう。

周りの目も気にせずマイペースで食べる姿が、不思議とだんだん羨ましくも見えてくる。

おれにも1口わけて。

しかしだ。
きっと周りのひとびとも思っただろう。
「絶対、ころりんしちゃうぞ」と。

誰もが固唾をのんで見守った。

すごい。
電車の揺れを感じさせない安定感で、
食べすすめる。プロサーファー並みの体幹。
つりかわなど彼女にとってアウトオブ眼中。

でも・・・
そろそろ食べ終わらないと、
次の赤坂見附はもみくちゃで人がおりるから、
とてもころりん指数高め!
ころりんMAX危険地帯だ。

ところで、みなさん、
おむすびころりんのストーリーを覚えているだろうか?
わたしはすっかり忘れてしまったので、その結末を目の当たりにするのではなかろうかと、
大至急Google検索した。

ざっくりいうとこうだ。

おじいさんが誤って落としたおむすびは、
ころころころころころがって、
穴に落ちる。
そこはネズミの棲み家だった。
おなかぺこぺこのネズミたちは、そのおむすびの残りを有り難く食べ、ネズミはおむすびのお礼にと、おじいさんに、大きな葛籠と小さな葛籠を差し出す。
おじいさんは、小さな葛籠をもちかえると、たくさんの財宝が入っていた。
それを聞いた悪いおじいさん、自分も真似して、ネズミを騙し、大きい方も小さい方も葛籠を持ち帰ろうとすると、罰が当たる。(この、戒め部には、いくつか物語にバリエーションあり)
この手の「欲の戒め系童話」は、日本だけでも、誰もが知ってる浦島太郎以外にも神話にもあり、世界にも、きこりが斧を池に落としたり、類似性があるのが面白い。

チャクラやクンダリーニの叡智を物語で伝えている、と主張する研究者までいる。

さて、現実のおむすびガールの彼女がおむすびを落とすであろう先には、ちょっと年配のサラリーマンが座っている。

おむすびが飛来したら、彼は汚れたスーツに怒り狂うだろうか。
それとも、おなかがぺこぺこで、残りのおむすびを頬張り、彼女になにかお礼のプレゼントをするのだろうか。

そんなことにドキドキしているうちに、
電車は赤坂見附のホームにすべり込み、
わたしも乗換えなので、降りる。

すごい光景だった。
何人ものサラリーマンが、
下車しながら彼女のほうにぱちくりした👀で、目線を送る、総ころりんウォッチ。
みんなドキドキしていたのだ。

彼女は押されながらも吊革に頼らず耐え忍び、
大切なおむすびを守り抜いた。

気を張りすぎて朝から疲れた。
あのドキドキで、今日は仕事になりません。

てか、ちょっとつまんないなぁ。
と思ってしまった自分がなさけない!

リアルころりんを期待してしまっていたことが否めない自分を、ここで懺悔します。
食い改めます。

問題の一部であり続けるのではなく、解決の一部でありたいと思っています。