世界で一番大切な友達

まだ携帯なんてなかった時代に、昼間彼女が僕に連絡を取るには会社に電話するしかなかった。
個人名で「〇〇さんから電話です」と取り次がれるのがとても肩身が狭くて、こそこそと電話に出るしかないのに、結婚している人だと「奥様からです」と取り次がれて堂々と電話ができるという会社の雰囲気だった。
結婚なんてお互いいつでもいいと思っていたけど、社会人になって大人になって日本の社会は結婚という制度に守られる面がたくさんあることがわかってきた。結婚してないと、いちいち冷やかされたり、余計な心配をされるけど、結婚すればもう何も言われない。

それが僕の結婚の動機のひとつになりました。
結婚したけど、いまだに、結婚前と同じような友達のような関係性は続いています。

僕は日本のそんな制度に違和感を感じるとことはありませんでした。
制度を利用しているだけで、二人の関係性が制度に縛られていると思ったことはありません。

だからというわけではないけど、子どもはいません。
結婚して子どもをつくってというプランは二人の間に全くありませんでした。
ただ、一緒にいたい。それだけで27年経ちました。
結婚というより、共同生活という感じかな。
すでにもう銀婚式も過ぎましたけど、
デートの約束をしないとフクれてしまいます。

家計は僕がやりくりします。
奥さんがするものというのは、だれが考えたのかわかりませんが、うちではそこに合理性は感じません。
家事をしてくれている彼女は自由に使えるお金がないので、僕がお小遣いをあげます。そのなかから、誕生日のプレゼントをしてくれたりするんです。
すごくうれしいですよ。
今日は私のおごりだよなんて言ってくれるのです。
それ僕の稼いだお金だけどなんて思うのは下衆の極み。
僕は二人の共同生活のためのお金を稼ぐ役割というだけ。
それは二人で使うお金。
だから僕だけのお金じゃない。
ただ、彼女にお金の心配はさせないようにしてるんです。
今月ちょっと家計が厳しいんだといえば、
「じゃあ、今月は贅沢やめよう。今度のデートは公園にお弁当もっていこうか」
なんて言ってくれます。

彼女は、僕の
世界で一番大切な
仲のいい友達で時々奥さん。

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