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#8 Where the crawdads sing (novel)

今回は番外編で映画ではなく小説のレビューをしたいと思います(^_-)-☆
日本語名は「ザリガニの鳴くところ」なんとも奇妙な題名です。
ディーリア・オーエンズ著の「ザリガニの鳴くところ」は全世界で1500万部を突破し、ベストセラーとなっています。しかもこれが彼女の小説デビュー作ということらしく、二重に驚かされました。
わたしがこの本に出合ったきっかけはこの小説の映画化でした。2022年に待望の映画化がされ、私は予告編とポスター、題名を見てぜったいに見ようと心に決めていました。しかし、日本での公開が年末だったので、なかなか予定が合わず公開中に見に行くことができなかったんです。どうしても気になったので、自分で小説を買いにいきました。正直、本を手に取ったとき、これは長い戦いになるな…と思うほど私にとってはぶ厚い本でした。幼いころから読書は好きでしたが、最近は本から離れていたので、自分にとっては少しハードルが高いんじゃないかと不安になりました(-_-;)実際、かなり長くてボリュームのある本でしたが、気づけば夢中になって読み終えていました。
これはレビューを残しておきたいと思ったので、番外編として書きます。ぜひ読んでいただける嬉しいです!
⚠️大きなネタバレあひますので、気をつけてください

あらすじ
ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアは湿地の小屋で立ったひとり生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くも、彼は大学進学とともに彼女のもとを去ってしまう。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ、蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のまま生きる「ザリガニの鳴くところ」へ思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく…
みずみずしい自然に抱かれて生きる少女の成長と不審死事件が絡み合い、思いもよらぬ結末へと物語が動き出す。
(小説からの引用)

ディーリア・オーエンズ著 「ザリガニの鳴くところ」


感想
私が今まで読んできたミステリー・サスペンス小説の中で、ダントツで一番面白かったです。圧倒的に引き込まれました。よくあるミステリー小説かと思えば、実際は1人の少女の一生を描いた小説。それと同時に社会問題や差別問題にも触れている社会派小説でもあります。
色々な要素が絡み合いながら物語が進んでいくので、読んでいる側の私も場面場面、多感情で読み進めました。

小説の舞台は1900年代のノースカロライナ州。湿地で男の死体が発見されるところから物語は始まります。幼いころ家族に捨てられた孤独に生きる少女カイア。父親からの暴力に悩まされながらも生きることに貪欲であり続け、父親のボートを乗りこなし、生活に必要なものを手に入れる。貝を掘っては、わずかな現金にかえていき、その日を凌ぐので精一杯な生活を送っています。そんな湿地の少女に向けられる町の人の怪奇や嫌悪の目。カイアの少女時代は目を背けなくなるような悲惨な設定。読んでいて辛くなるような場面が山ほどあり、かわいそうだなで済むレベルではなかったです。それに対比するように、自然に対しては息を呑むような美しい表現がされていて、そのギャップに余計やられてしまいます。そんな中でも、カイアに対して優しく接してくれる存在、幼馴染(?)でカイアに読み書きを教えてくれたテイトや燃料屋のジャンピン、その妻のメイベルがカイアの人生に光を差し込んでくれます。その様子を見ていると、まるで私がカイアの保護者になったように感じさせ、安心させてくれました。
終盤の怒涛のミステリー要素も、しつこくなく、テンポよく進んでいったのでちょうどいいハラハラ感にページを捲る手が止まりませんでした。
最後の最後のたった2ページで驚愕させられたのは初めてです、、開いた口がしばらく閉じませんでした。それを踏まえて私にとっては新しいジャンルのミステリー小説でした。

本を通して、よく描かれているのは自然と、そこに生きる生物。それらを人間と重ね合わせ、生々しいほど具体的に描かれています。ホタルやカマキリを例とする、生物の生存本能の描写はなんとも言えない気持ちを引き起こしてくれました。

また、作者の自然に対する描写はこれまでになく美しく、卓越しているので、本を読んでいるとカイアが見ているであろう湿地の情景が絶えず浮かんできます。まるで自分も湿地の一部のような感覚に陥りながら読むことができました。翻訳小説にありがちな、おかしな表現もなく、翻訳された感がなくて、とても読みやすかったです。

2023年始まったばかりですが、これを超える本に出会えるか心配です、、私のナンバーワンのお気に入りになりそうです、、(╹◡╹)♡

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