愛着障害と愛着不全の回復過程は違うのか?|双子から見た違いについて

【質問】note(2021.9.28) の 「なぜ愛着障害の定義を狭く取る方がいいかというと、愛着障害のアプローチと愛着不全のアプローチは結構違うからです。その異同の詳細については、いつかお伝えしましょう。」について、ラジオなどでそのうち深掘りいただけたら幸いです。

noteは、この記事になります。

※今回の記事はラジオでも視聴できます。テキストを見ながらどうぞ▼

【お返事】ありがとうございます。今回は愛着障害と愛着不全のアプローチの違いについて、基本的なところを少しお話します。それは双子のカメレオンの視点の違いです。これが全てではありませんので悪しからず。愛着障害のアプローチと愛着不全のアプローチの差を小出しにしていき、ある程度たまったら、ブログ記事としてソレアのWebサイトに載せる予定にしています。

双子のカメレオンについては下記をご覧ください。

この双子という概念は、愛着障害でも愛着不全でも、両者とも重要な概念です。愛着を考えるときは【双子】を意識しましょう。

※この記事は、Twitterの質問箱に来た質問を深掘りして回答したものです。

■愛着における双子とは

上のカメレオンの記事にもあるように、双子(自己対象)とはハインツ・コフートによって定義された概念です。

  • 双子とは、【同じこころの闇をもつ親友・同士・兄弟】と考えていいでしょう。

コフートの著作は生涯3冊だけです。3冊目もコフートの弟子によってまとめられたものです。そのくらい著作が少ない人なのですが、その3冊目の最後のほうに、この双子の話が少しだけでてきます。双子自己対象というのが正式名称です。

彼は双子(自己対象)の概念を生み出す前に、鏡自己対象と理想化自己対象の説明をしています。なんだか難しい言葉ですが、母性と父性のことです。この2つは心理学上、外せないものでしょう。そこに双子をプラスしたところが、コフート心理学の面目躍如。おそらく彼以外では、双子のことに言及している人はいないのではないでしょうか。

この双子、愛着の治療をしていくうえで必要不可欠なものです。とはいうものの、この重要性を言っている人もあまり多くなく、他でこの話をしても怪訝な顔をされるかもしれません。高間の試論ということにしておいてください。けれど、愛着の問題のカウンセリングをずっとやっていると、双子が愛着治療のキーになると確信できるでしょう。

◇同じこころの闇とは?

ここで「闇」について考えると、同じ悩みをもった人という狭い範囲のものではありません。闇とはシャドーです。影ですね。太陽が物質を照らし出すと、影が現れます。これは誰にでも共通のものです。ですから、少し言葉を変えていうと、「同じこころの影の質をもった」という感じでしょうか。シャドーは誰にでもあります。劣等感があれば、誰にでもありますね。劣等感は普通、誰にでもあります。(サイコパスは劣等感がありませんので、サイコパスのシャドーは除いてください。)

ですから、愛着障害の双子は、同じ闇だから愛着障害の双子か?というとそうでもないわけです。愛着障害でなくても、成人期のうつ病の人でも愛着障害の人とシャドーの質が同じであれば、影の陰影が同じであれば、カメレオンになる可能性もあるのです。

◇影(シャドー)の質

では、影(シャドー)の陰影とは?という話になりますね。それは「よみの国」の話になります。よみの国から立ち現れる元型の話。訳わからないですよね(笑)。ユングの元型心理学の話になります。長い加筆が必要ですので、参考図書(*1)を紹介するにとどめます。私の説明は、またいづれ。

■愛着障害と愛着不全の双子の違い

双子は双子でも、愛着障害の双子と愛着不全の双子は少し違います。

  • 愛着障害の双子はカウンセラーです。愛着障害の人が人生初めに出会った双子がカウンセラーです。責任重大です。そこをスタートとして、彼は現実世界で、他の双子に出会っていくでしょう。

  • 愛着不全の双子は、日常生活の中でリアルに出会っていきます。カウンセラーはその目撃者となります。自分では双子の判断がつかないので、「それは双子だよ」というカウンセラーの眼差しが必要になるでしょう。つまりカウンセラー側が双子を見抜く力が必要となってきます。これも責任重大ですね。

カウンセラーがこれらの役割を果たすには、まず愛着障害の臨床で「双子」を学んで、それを愛着不全の臨床へ活かしていくのがいいでしょう。愛着障害のカウンセリングはハードですが、愛着不全のそれは難しい。

◇双子を見抜く力

この力はどこからやってくるのか?それは愛着についての深い理解です。そのためには勉強と実地の両輪の輪による学習が欠かせません。占いをやったから見抜く力がつくなんてことはありません☺

コフートの本はとっても難しいですが、数年かけて彼の3冊目の著作「自己の治癒」に取り組めば、双子についておぼろげながら分かってくるでしょう。取り組むとは、本を読みながら、臨床現場(実地)で思考訓練して、仮説・検証を繰り返し、自分の理論を作り上げていくことです。100人の臨床家がいれば100通りの臨床がありますが、肝は同じです。

寒く晴れた冬空の下、あなたの週末の思索テーマとしても愛着について考えてもいいでしょう。

参考図書

(*1)ジェイムズ・ヒルマン, 夢はよみの国から, 青土社, 1998

⇒解決しない悩みのある方は、ソレア心理カウンセリングセンター へご相談ください。

Twitter でも発信しています。フォローいただくと、発信ばかりでなく質問箱のQ&Aを見ることもできます。
【Twitter】→ https://twitter.com/soleapsy


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?