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愛着障害と愛着不全の定義は専門家でも違うのか?|回答はYESです。

【質問】恐れ・回避型は愛着障害と今は思ってるのですが 、以前、恐れ・回避型を克服したカウンセラーさんにかかってて、その方は支配型の母との母子葛藤があったようで(動画で自己開示されてる) 、それだと愛着不全じゃないかな? と今は思うし 、またセッション中 「あなたと私はタイプが違う」と言われてて、確かに私の方が親との葛藤が希薄でカウンセラーさんとの齟齬をお互い感じてるようでした。
愛着障害と愛着不全の定義はプ口の中でもそれぞれなのでしょうか。

【回答】愛着障害の定義は専門家の中でも違います。狭くとる人と広くとる人がいます。私は高橋和巳先生の判断基準に準拠して、おおむね「狭くとる派」です。

※この記事は、Twitterの質問箱に来た質問を深掘りして回答したものです。

■愛着障害と愛着不全

質問者の方は愛着障害のことをよく理解されていると思います。おそらく、かかったカウンセラーよりも深く理解しています。素晴らしい!

恐れ・回避型の愛着スタイルの人は、愛着障害と言えるでしょう。親への期待は薄く、しがみつきがないタイプです。親密を遠ざけるタイプです。
不安型の愛着スタイルの人は、愛着不全と言えるでしょう。強い母子葛藤があり、親への期待をなかなか切れない人です。見捨てられ不安がベースにあります。親密であることにこだわるタイプです。

ややこしいのですが、不安型の愛着スタイルの人の中にも、おおむね愛着障害に入る人々がいます。

愛着スタイルについては、下記記事をご覧ください。

現在、愛着障害というと岡田尊司先生の書籍が一番に取り上げられますが、岡田先生は、愛着障害をスペクトラムとして捉えて、かなり広い部分を愛着障害に含めています。ACとほぼ同義と言ってもいいかもしれません。つまり、

愛着障害=愛着障害+愛着不全(不安型愛着スタイル)= AC

愛着障害(異邦人)や虐待のカウンセリングで有名な高橋和巳先生は、愛着障害を狭く捉えています。愛着不全は愛着障害に入れていないように思います。つまり、

愛着障害=愛着障害 (反応性と脱抑制型)

臨床的には高橋先生の捉え方のほうが、治療効果は高いです。なぜならピンポイントでレーザービームのように患部を治療する感じだからです。細かく見立てたほうがブレないからです。

私の場合は高橋先生の捉え方をベースにしつつ、不安型愛着スタイルの人々でも愛着障害っぽい人を意識しながら、対応しています。

愛着障害=愛着障害+不安型愛着スタイルの人の一部

質問者の方がかかったカウンセラーは、岡田先生の定義を愛着障害として使っていたのかもしれません。つまり不安型の愛着スタイルに該当する人です。これでは、あなたと印象が変わるのももっともなことです。

カウンセラーは愛着不全で、あなたは「親との葛藤が希薄」ということですので、愛着障害よりの方なのではないでしょうか。

■見極めは親(母親)の脳機能あるいは精神発達

相談者が、愛着障害か愛着不全か迷ったら、親の見立てを正しくすることです。親の見立てがあいまいなため、相談者の見立てもあいまいになることも多いです。

特に愛着からみの見立ては、親の精神発達が重要になります。以下の3つの場合は、相談者を愛着障害と見立ててもよさそうです。しかし、この見立ては難しいです。十分な経験とスーパービジョンが必要でしょう。

・親(母親)に脳機能障害がある

これは境界知能まで含みます。IQでいうと、70~85(+)くらい。境界知能以下の知能の場合、子どもは愛着障害の可能性が強くなります。恐れ・回避型の愛着スタイルになります。

しかし境界知能は見立てが難しいです。専門家さえ見逃すことがありますので、専門家はしっかりと経験を積み上げていくことが必要です。

・母親の脳機能に問題がなくても偏りがある場合も、愛着の問題が発生する場合がある

ここはとても難しい判断になります。多くのケースを体験していく必要があります。このケースの場合は、「不安型愛着スタイルの一部」になるでしょう。

・母親の脳機能に問題がなく偏りも観察されないが、愛着の問題が発生する場合がある(社会的ネグレクト)

どういう場合かというと、母親は不安型愛着スタイル(愛着不全)で脳機能に問題がないにもかかわらず社会的ネグレクトをしている場合です。この場合、子どもは恐れ・回避型の愛着スタイルを示す場合が多そうです。

■狭く取る方が良い理由

なぜ、愛着障害の定義を狭く取る方がいいかというと、愛着障害のアプローチと愛着不全のアプローチは結構違うからです。その異同の詳細については、いつかお伝えしましょう。今回は大まかに解説しておきます。

◇アプローチが同じところ

・共感と受容ベースで進めるカウンセリング

・どちらもカメレオンのような親友の存在は大きい。カメレオンについては…

◇アプローチが違うところ

・愛着障害はファンタジーが壊れれば、スムーズに運ぶことが多い。しかし、50代以降の相談者は要注意。かなり人間嫌いが加速しているため、治療者の間で安全基地を作ることが難しくなる。

・愛着不全の場合は、治療が進展したり後退したりを繰り返す。ここをしのいでいくには、カウンセラーの力量と相談者のこころの体力が必要。

注意:こころの体力をつけるためには、カウンセラーが強引に引っ張らないことが必要。ともすると、愛着不全のカウンセリングは、カウンセラーが先を急ぎ過ぎる場合も多いのです。それをやると必ず中断します。

明らかに愛着障害と分かる人のケースから始めて、だんだんとグレーな人のケースに広げていくのがいいでしょう。まずは、職場で上司に相談して、そのようにケース分担してもらうのがいいでしょう。

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