香水

人間の記憶には、
目で見て覚える「視覚的記憶」
耳で聞いて覚える「聴覚的記憶」
動作や体の動きなどで覚える「動作記憶」 
などがある。
私は、時々どこからか香ってくる匂いに懐かしみを感じ何かの出来事、あるいは特定の人物を思い浮かべることがある。
そう。嗅覚による記憶である。
この現象をプルースト現象というらしいが、
私はこの嗅覚による記憶がどの感覚の記憶よりも鮮明に思い出され、また私自身好きである。
小さい頃によく私を抱いてくれた、懐かしい
母や祖母の匂いを感じると
あの頃を思い出し心が落ち着いたり、
昔、好意を寄せていた相手の匂いを感じると
その人との楽しかった記憶、悲しかった記憶、
忘れかけていたその全ての思い出が蘇ってくる。切なくなって時々、悲しい気持ちになったりするけど、なりより大切な思い出だったことは変わりないので、忘れさせないでくれる貴重な体験だ。
冬も終わりに近づき、風は冷たいものの暖かい太陽の光が差し込んでいるある日、
私はふと春の匂いを感じた。
別れや出会い色々な事が頭の中によぎってきた。
するとそこに新しい匂いがしてきた。
それは香水の匂いだった。
反射的に振り返ってみたり、周りを見渡して見たけどそれらしき人はいない。
昔、付き合っていた相手の香水の匂いだった。
私は、ふとその人を思い出し元気にしてるかなと空を見上げ微笑んだ。
そして私は、暖かい春の光の中を歩いていく。

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