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a16z 投資先の宇宙スタートアップ

こちらは衛星データを活用したデータ解析コンテスト「Solafune」を運営しているメンバーが、日々収集している宇宙に関連するニュースや情報を個人的に欲しい形でまとめて整理したものを記事化して外部に公開するという内容のnoteです。


今回の内容は前回の「Y Combinator 投資先の宇宙スタートアップ」に続き、シリコンバレーのVCで世界的に活躍する 「Andreessen Horowitz(通称:a16z)投資先の宇宙スタートアップ」についてです。a16z といえば、Facebook、Slack、Github、Airbnbなど世界的な企業に投資した実績があり、最近だとClubhouseへの投資が話題になったように、常に世界中の投資家・起業家が注目する存在です。宇宙スタートアップへの投資に関してはまだ数は少ないですが投資理由などを含め公開情報をまとめました。

Astrains(衛星ブロードバンドサービス)

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Image Credit: Astrains


小型の通信衛星の開発・運用を行っているAstrains社。a16zが最初に投資した宇宙スタートアップであり、公表されているポートフォリオだと唯一の宇宙関連企業です。多くの企業が低コストブロードバンドを地上で提供するために低軌道(LEO)に衛星コンステレーションを築こうとしている中、同社はGEO(静止軌道)バンドにフォーカスしています

同社は2016年に創業され、YCの2016 Winterプログラムに参加しています(前回のYCの記事にも記載)。先日のリリースではシリーズCで$250M(約272億円)を調達しています。同ラウンドはBlackRock社がリードし、Baillie Gifford、Fidelity、Koch Strategic Platformsなど多くの新規投資が参加しています。既存投資家のa16zとVenrockもフォローオン(追加出資)しており、ValuationはPost $1.4B(約1,523億円)と言われています。株式と借入による累計調達額は$350M(約381億円)超えとなりました。

会社サイト→ https://www.astranis.com/


a16zが投資した理由 

テクノロジーの歴史は簡単に言えば、モノが小さくなり、速くなり、安くなり、その結果、より多くの人にチャンスが与えら得るというストーリーです。コンピューターの歴史を例に考えてみると、一部の人しか利用できなかった大型のメインフレームから、パーソナルコンピュータ、そして多くの人が利用できる携帯電話へと変化してきました。

しかし、地球上のスマホが25億台を超え50億台になろうとしている今でも、どこでも接続できるわけではありません。その理由は難しい問題だからです。遠隔地でインターネット接続するためには、過疎地では負担できないほどの先行投資とコストが必要になり、ブロードバンドを普及させるための現実的な方法は、光ファイバーを敷設するか、Point-to-Pointのマイクロ波タワーを設置するか、あるいは$500Mもする巨大な衛星を宇宙に飛ばすかのいずれかであり、その結果、非常に高い料金を請求されることになります

a16z General PartnerのMartinはこの数年間、自身が関わっている非営利団体の活動の一環として、アメリカの先住民族コミュニティにブロードバンドインターネットを提供してきましたが、このことを直接経験しました。地方でのアクセスの問題は非常に複雑で、インターネットを生み出した国でさえ、地方の部族地域では接続できる人口が20%に満たないところもあります。

幸いなことに、最近の通信技術と宇宙開発技術の進歩により、この問題を解決するための実行可能なソリューションが期待されています。Astranis社は、従来の衛星に比べてわずかなコストで、地球上のあらゆる場所にブロードバンド接続を提供するための適切な技術と戦略を備えています。

超小型衛星を利用したインターネットサービスは、世界中で利用できることが期待されていますが、そのほとんどは数百から数千の低軌道(LEO)衛星が空を飛び交うコンステレーションに焦点を当てています。このような解決策は時間をかければ可能かもしれませんが、大きな問題です。もちろん、巨大な市場でもあります。そのためには、1つの場所を継続的にカバーするために衛星のフルコンステレーションが必要であり、サービスの継続性を確保するためにハンドオフのための膨大な調整が必要となります。

Astranis社のアプローチが素晴らしいのは、彼らが宇宙に送る衛星ごとに、信頼性の高い広帯域のカバレッジを提供するソリューションを考察したことです。しかも、従来の衛星に比べて10倍以上の低コストで衛星を作ることができます。これは、衛星と通信機器の最新技術を駆使し、比較的小型の衛星を地球上のあらゆる場所の定点に位置する静止軌道に乗せることで実現しています。

共同創業者兼CEOのJohn GedmarkはCommercial Spaceflight Federationを共同設立し、オバマ政権下における宇宙技術の民営化において重要な役割を果たした人物であり、技術とビジネスを熟知しています。また、共同創業者でCTOのRyan McLinkoは複数の宇宙船プログラムを経験しており、最近ではPlanet社でエンジニアリングチームを率いて、100機以上の小型衛星の設計に携わっていました。その他のメンバーもSpaceX、Googleなどで豊富な経験を積んでいます。

つまり、既存のアプローチでは解決に時間とお金がかかる課題に対し、独自のアプローチ(コストと時間軸の問題を解決する)とそれを実行する技術チームが揃っていると判断したというのが投資を行なった理由のようです。


まとめ

公開されている a16z 投資先の宇宙スタートアップはAstrainsの1社のみなので、領域として宇宙産業に投資する方針なのかどうか判断するのは現時点では難しいです。Astrainsも通信インフラに投資したというような文脈なので、今後、ロケットや宇宙ロボット、衛星データの活用、などの分野にも投資していくのかどうか引き続き動向を追っていきたいと思います。

また、a16zのPodcastにも宇宙産業について話している回がありますが、そちらではa16z General PartnerのMartin Casado、NASAの元宇宙飛行士で現DiplomatのSteve Smith、AstrainsのCEO John Gedmark、Skybox Imaging の共同創業者Dan Berkenstockが宇宙産業の過去と未来について話しています。特に最後の方に世界の宇宙産業の動向を簡潔に話した上で、「We gonna win. We don't screw it up, new space race. (我々は勝つ。この機会を無駄にはしない。新しい宇宙(開発・ビジネス)レースだ!)」と野心的に話していたのが印象的でした。


参考

Astranis raises $250M at a $1.4B valuation for smaller, cheaper geostationary communications satellites 
Astranis by Martin Casado (a16z.com)
a16z Podcast: Space - the Near Frontier


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