名作にくらいつけ! 安部公房 「砂の女」 ~迷路の中の反復~
(2800字程度) ワクワクしながら並んで待っていると、やっと自分の番がやってきた。嬉しさのあまり、歓声を上げながら入り口をくぐる。と、そこまではよかったものの、いざ入ってみると、出口はおろか、自分がどこにいるかすらわからない。不意に怖くなり、入り口に向かって大声で誰かを呼ぶ。誰も来てくれる気配はない。少しの間、待ってみる。誰も来ない。仕方がないので、もう少し待つ。壁を叩く。地団駄を踏む。力の限り、叫んでみる。全てが無駄なことだと分かった途端、絶望と恐怖のあまり、その場に座り