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第4回「そいつ」10月❹

週一で、同じ映画を見る。ただそれだけ。
観る映画は「遊星からの物体X」、つまり「THE THING」です。

ルール

  1. 毎週1回「遊星からの物体X」をみる

  2. 毎週1回みて、気づいたことを書く

  3. 木曜または金曜の通勤時間で見る

  4. ネタバレとかは気にせず書く


通勤中。ほぼほぼ電車内での視聴となる。デバイスはiPhone se(3G)。
イヤホンはAppleの有線イヤホン。
画面は小さく、音質についても良好とは言えない。
製作陣が期待する映画館という環境からも程遠い。この点については留意。
あくまで「通勤中のiPhoneでの体験」という狭苦しい体験ということは気をつけないといけないかもしれない。

第四回目 10/27通勤電車

習慣化までの道のり

(前回の記録からわたし自身の変化)

10/20
残業で何もできず。

10/21
海外のファンサイトを覗き始める。fandomはシンプソンズとかで見たことがあったけど少し使いずらい。
1番凄そうなサイトはoutpost#31
マップまで作ってあった。世の中には本当にすごい人たちがいる。
(サルゴリラ優勝で泣き、笑う)

10/22
エクソシスト2を見る、イナゴがたくさん出てくる、虫が苦手だから気持ち悪かった。ザルドスの監督の作品。ザルドスとエクソシスト2はメタファーが露骨なのが似てるかもしれない。
遊星からの物体Xも、アメリカの番組「モンティホール」や、20〜30年代の性病検査ポスターvsセクシーギャルの写真、という隠喩となる小道具はいくつも出てくる。

10/23
博物館の照明についての講義を聞いていた。
仏像に対して、一つの大きな光を当てると片側に影ができてしまうので、部分的な照明をあちこちから重ねる方が影のない展示にできるそうだ。もちろん色の印象も大きく変わる。YouTubeで映画のライティングについて調べてみる。
ジョンカペが選ぶ映画の一つ、ハワードホークス「コンドル」を鑑賞(素晴らしい)。まるで歯車じかけのおもちゃみたいにヒトやモノが役割を繋いでく。

10/24
川島雄三の「須崎パラダイス赤信号」を鑑賞(大傑作)。考えてみると以前、無理して「不安は〜」と比較しようとしたが、やはり無茶な比較だったと思えてきた。
ホラー映画は「自分がなくなりそうで不安→自分を消そうとしてくる対象が無くなってほしい」という状況から「恐怖」を撮っている。
「不安は〜」や須崎パラは、「自分がなくなりそうで不安→自分を成立させてくれる対象がなくならないでほしい」という状況から不安がってるのを撮ってる。いずれも不安とはいえ、志向対象への感情がおおきく異なる気がしてくる。
間違いだったとは言い切るほどのものではないが、自分はいつも頓珍漢な答えに行きつくと反省する。

10/25
ジョンカペの新インタビュー。カンディーの瞳の色理論は勝手な解釈とのこと。マジか。
かなり重要な演出だけど、スタッフ間でこういう感覚共有されてないことに驚き。
映画制作は、その人数の多さだけでなく、個々の思いが混ざり、統制され、その裏でやはり勝手なことをして、偶然に出来上がってるものなのかもしれない。

10/26
鑑賞しようとしたが、恥ずかしい話、仕事のストレスで集中できず、途中で寝てしまった。断念。
明日の通勤に回すことにした。
社外出る時間やサントラを聞き直す。

10/27
鑑賞

恥は掻き捨て、ヘッドフォン通勤

通勤中の電車でホラー映画を見てるのだけど、4回もやってると開き直ってきて、今回は大きめなヘッドホンを使うことにした。オーディオテクニカのATH A-700。低音が凄い鳴るわけではないし映画向きではないけど、我が家では1番いいやつ。高音低音バランス良く鳴るのと、音の分離がわかりやすいので、iPhoneのイヤホンよりは立体感出るはず。

モリコーネ(ジョンカペ寄りの)

せっかくだから今回は何処でBGMが鳴っているかだけでもメモしていくことに。
始まってすぐ、音楽モリコーネという文字、嘘みたいだなと思う。こんなボンボンって音、ジョンカペでしかないでしょ。
たしかモリコーネは完成品見ないまま入稿したためカペ&ハワースで一部追加したそうだ。
なので、このボンボン音はカペ&ハワースの仕業だと思っていた。
でも今回みるにあたって、前日にサントラを聞いててこれモリコーネの曲「humanity pt2」だとわかった。
思い込みは良くない。
事前に「モリコーネの曲は半分と使われてない」とか、「あとからカペ&ハワースが追加した」という情報で、「半分もジョンカペ作ってるんなら、冒頭もジョンカペでしょ」とか思っていた。あのボンボン音、映画未完成の時点で考えついたの奇跡だと思う。

もしも全ジョンカペなら

こういうことを考えてすぐ遊ぶ人がいる。ジョンカペの最近のアルバム「LOST THEMES」、架空のホラー映画用のサントラというアルバムで遊星からの物体Xを編集。もちろん当時と現在のジョンカペの音楽性は異なるところはあるけど、全然異なった作品に感じる。
モリコーネの方が圧倒的に面白い。
引用しといてなんだけど、編集した人はMV感覚で音楽を差し込んでしまってる気もする。そうでなかったら、superstitionが流れてるはずのシーンにBGMを当てがわない。
面白い試みだし、モリコーネの凄さを再確認できたら良かったが、すこしモヤモヤする。

未使用で終わった曲たち

サントラの曲リストを整理。*が未使用らしい。

Humanity (Part 1)  
Shape *
Contamination
Bestiality*
Solitude
Eternity*
Wait
Humanity (Part 2)
Sterilization*
Despair

サントラだけ聴きかえすと、「ここで使われてた!」と映像が目に浮かぶのだけど、実際に見てみると全く違う曲が使われてる。なんという自分の記憶のメチャクチャさ。
未使用曲も面白いのだけど、使用された曲たちに比べると映画の不安を煽る感じと少し違うかな、結果論的なのかもしれないけど。Bestialityはだいぶ古めのモンスター感がある。
使用曲も部分的に取り上げているので、知らなかったパートが出てくる。

BGMのタイミングと同定

映画を見ながらBGMがかかるタイミングをメモしていく。失敗した。
失敗の一つは、あとでサントラ聞き返して曲の同定してみようとしたが、よくわからず。あれこれ曲を聴き比べてたら、完全に混乱。
もっとサントラを聴き込んでないとダメだ。

今回分かったけど、BGMで使う時にはモリコーネの曲をあちこち部分的に使用するため、一曲まるまるかかることがない。未使用曲ほど特徴的で、一方で使用曲は管弦楽で構成されていて、ある程度一貫性がある。
ノルウェー基地の中を歩く時は、三曲くらい繋いであったがまったく違和感がなかった。

失敗の二つ目は、タイムコードの記録忘れ
シーン概要と、音楽の有無しかメモしなかったので、
何分ぐらい音が鳴っていたか、何分無音だったか、がハッキリしない。
マクレディ火薬室あたりから3人で基地を爆破するとこまで、結構長い時間音楽がなかったのに、観てる側としてはなにも違和感なかった。

廊下に響くスティービーワンダー

この作品内でモリコーネ、またはカペ&ハワースのいずれでもない音楽は以下の通り。

Stivie Wonder/Superstition

Billie Holiday/Don’t explain


スティービーは、1日目の夕方にノウルズがカセットテープでかけている。
ビリーホリデーは1日目の夜中に(ジュークボックスなのか?)娯楽室でかかっている。
それ以後、隊員たちは音楽を聞いてるシーンはない。聞く暇もないのかもしれないが…2日目のUFOに向かってる間、待ってる人間たちは音楽くらい聴くかもしれないなとも思う。いずれにせよ音楽を聴いてるシーンの必要がなくなる。

スティービーワンダーのシーンが印象的なのは、廊下にまで音漏れしているところ。
各部屋をカメラが順番に移動して、厨房から離れていくなかで、音も一緒に離れていく。娯楽室までいけば音は聞こえてこない。音の距離感が作り込んである。
厨房の騒がしさとは対照的に、静かな反対側の廊下にイヌが顔を出す。のほほんと過ごす隊員たちの誰も気づかない間に、水面下で物体Xが近づいてきてることがわかる印象的なシーン。
ここを印象的にするために、ワザとジョンカペは各部屋に移動して、音が何処まで届いてるかを確認させてると思う。こういう作品内でかかる音楽を「イン/画面外/アウト」と分類するらしい。

ミシェル・シオンの著書「映画の音楽」では次のように論じられている。映画の中の音(音楽あるいはそれ以外の広範囲の音も含む)にはイン、画面外、アウトの3種類があり、インは画面の中で実際に鳴らしている音。画面外は画面に映っていないが劇中世界の中で鳴って登場人物にも聞こえている音。アウトは劇中世界の外で流れている音や音楽で、劇伴はここに含まれる。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/劇伴

このシーンはインと画面外を上手に使い分けたシーンだと思う。映画前半の見どころの一つ。

物体Xに捧げるではなく

humanity のpt2でかかるボンボン音や、管弦楽のハーモニーなど一定のテーマ、メロディは繰り返される。
ジョーズやゴジラのように襲われるシーンがメインであれば、ヤツらの登場のたびにテーマ音楽をかけることもあると思う。
物体Xは実際に戦う時ほど音楽が鳴らない。
犬X、ノリスモンスター、ヘッドスパイダー、パーマー。これらの対決時は劇伴が鳴らずに、効果音と会話だけだ。

フュークスの変身途中は少し音楽が鳴るはず。humanity pt1の後半だった気がするが、これは変身前だったため、そして仲間のうちから初めて感染者が出たことを印象づけるためだと思う。つまり自分もこうなるという恐怖を植えつけるシーンだからだと思う。
ラストの物体Xは若干低音が鳴る。だが派手な音ではないと思う。低音については後述。

そうなると、物体Xが隠れてる時の方が音楽が鳴っているはずだ。本作は襲われるシーンよりも、互いに疑いあうシーンのほうが重要だからだと思う(もちろんクリーチャーのビジュアルもさいこうだけど!)。
なので、密室の状況でのお互いの猜疑心を管弦楽で表しているように思う。ここらへんは劇伴におけるハーモニーの勉強をしてないので詳しくは語れない自分がダサいことを認める。
本来のhumanity pt1は全部聞くと何段階かハーモニーが変化してくる面白い曲で、何面にも見えてくる「人間性」がテーマとなってる。
しかし、これは同時にミスリードしてしまう可能性もある。ジョンカペはこれを部分的に使ったおかげで、作品の方向性に対しては無駄のない形に出来上がってると思う。このくらいで良い、という感覚の鋭さよ。

ちなみに物体Xの存在を示唆する時、低音が鳴ることが多いと思う。序盤のイヌが顔を出す時は、ボンボン音が多い。
極め付けはノルウェー基地から持ち帰った物体Xを広げるシーン。それまで弦楽のハーモニーで、隊員たちの恐怖と不安を感じさせてたのに、最後イヌが映る瞬間に、ソロのコントラバスの低音で終わる。実際、この曲はまだまだ続いていくはずなのだが、イヌ✖️低音→物体Xと示唆するために使われてるように思う。

来週に向けて

  • 0.5倍速

  • 音だけ鑑賞、または音無し鑑賞。

  • 光の赤、光の青、昼の白を考える

  • 顔、そして視線

  • マップ使いながら視聴

  • カメラの位置

  • BGMの特定

  • それぞれのヤられ方

    無理だったら普通に楽しむ。好きな映画のいいところは、普通に楽しめること。

さて、来週もみます。

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