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お母さんがパパで、お父さんがママでしょ?

 これは我が家の末っ子の発言。

 祖父母と同居こそしていなかったが、父方の祖父母も母方の祖父母も同じ市内に住んでいた。そのため、小さい頃はよく母方の祖父母のところに預けられていた。

 日本人たるもの、基本的には日本語を使うべき。と、昨今のカタカナ語に対抗して母方の祖母はティッシュすら「ちり紙」と呼ぶように私に教育した。まあ孫に対してあまあまな祖母なので、「できるだけそうしようね」という程度であったが。

 そんなわけで(?)私は維持でも両親を「パパ」「ママ」などとは呼ぶものかと思っていた。そのため、この2語は決して家の中では使われない言葉であった。

 一応それぞれが父と母のどちらを指すか、なんてことは社会常識としてわかっていた。また、幼稚園に行くようになって、よその家のお母さんを指すときには「だれだれのママ」というように言っていた。
(どこの家も自分の母親はママと呼ばないのに、そういう社会通念ができあがっていたことを母は面白がっていた。)

 話をうちの末っ子に戻そう。彼は兄、姉(私のこと)に比べて言葉を覚えるのが少し遅かった。そのうえ、みんなが構うので「あれ」「それ」というような簡単な指示語だけで生活が成り立っていたのである。

 そこで彼がどの程度言葉を知っているか夕飯を食べながらテストをした。
「これ何か知ってる?」机の上の調味料。普段なら「あれとって」で会話は終了する。頭をフル回転した彼がひねり出した言葉は
「黒い……..塩?」なんだ黒い塩って。黒くてしょっぱい液体を懸命に表現しようとしたのだろう。これによって彼が「しょうゆ」という言葉を覚えていないことがわかった。3歳くらいだったと思うが、、

 どういう文脈か忘れたが、「パパ」「ママ」の話になった。いつかの日のように、末っ子に聞いてみる。「どういう意味かわかる?」

「パパがお母さんで、ママがお父さんでしょ?」

 これ以降、彼は母に甘えるときに嫌にかわいらしい声で「ママ」というようになった。そのたびに私は「盛大に間違えたくせに…….」と内心イライラした。

 そして、私は兄弟の真ん中に生まれて母を独占する時間が短かった弟を可愛がるようになるのであった。(付きまといすぎて弟には逆に嫌われた)

※兄弟構成
女(私)→男(弟その1)→男(末っ子、弟その2)



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