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朱鳥 蒼樹 掌編選

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#一次創作小説

守り神《創作掌編》

 うっすらと東の空が明るくなる頃、僕は人が一人余裕で入ってしまいそうな大きなトランクを持って外へと出た。石畳を踏む音は僕以外にない、まだまだ町は眠りの中だ。
 僕は振り返って今しがた出てきた門を見上げた。黒いカラスと小さなスズメが鳴き声も上げず静かにこちらを見下ろしている。門に掲げられた聖なる印も色を失って黙っている。生命の呼吸が聞こえないこの場所で今動いているのは僕だけ。僕はこの時間にしか動けな

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