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【ネタバレなし】ALTDEUS: Beyond Chronosが形にしたVRゲームの新しい可能性【アルトデウス:BC】

最近買ったVRのアドベンチャーゲームが自分のゲーム観、VRゲーム観を変えてしまいそうになるくらい面白かったです。
元々密かに楽しみにしていた作品だったんですが、まさかここまでよく出来た作品だったとは思わず、いてもたってもいられず感想を書き連ねることにしました。

ストーリー

突如出現した巨大生物"メテオラ"に地上を奪われてしまった260年後の東京が舞台。
主人公クロエはかつて親友のコーコをメテオラの襲撃によって失っており、今も復讐の為メテオラとの戦いの日々を送っていたが、ある日襲来したコーコの姿をしたメテオラをきっかけに運命に翻弄されながらも時に大きな選択と決断を迫られることになる。

本作はマルチエンディング方式でいくつかのエンディングやシナリオが用意されていて、ストーリーの分岐は選択肢による分岐は勿論のこと、時には巨大なマシンを操作したり銃の引き金を引いたりと文字通り自らの手で重要な決断をすることも。
登場するキャラクターは皆魅力的で、またネタバレになるようなことは書かないので詳しくは言えないですがどのルートもシナリオがとても良く、プレイ中は何度も感情を強く揺さぶられました。
全体的に良かっただけに人によって好きなルートやエンディングはバラバラに分かれると思う。自分は赤エンドと白の荒野エンドが特に好きです。

VRだからこそ体感出来るマシンアクション 巨大なメテオラの存在感

400m級の超巨大マシン"マキア"のコックピットで熱い音楽と共にマキアを操縦しメテオラと戦うマシンアクションパートは、VR酔いやVR疲れに対する最大限の配慮とVRらしい大迫力の演出の両方を実現。

早く激しいアクションはVRに慣れていない人は酔ってしまうし、そうでなくとも多くの人が物語を長時間楽しむ前に疲れてしまうが、プレイヤーが乗り込むマキアはその大きさ故に動きもずっしりと重く、酔わず疲れず大迫力のVR体験を楽しめる。

元々VRと巨大な存在の相性はとても良く、例えばモニターでは見切れてしまうような大きさの存在もVRでは簡単に見上げることができる。そして実際に巨大なメテオラを前にするとそれがVRであると分かっていてもその存在感に圧倒されてしまうのだ。
先の読めない展開が繰り広げられる中、初めて目にした人型メテオラの存在感、衝撃、恐怖心は是非多くの人に体験してほしいです。

実在感のあるVRロールプレイ体験

物語を楽しむ媒体はVRでなくても、ゲームでなくても数多くあります。何故わざわざ物語をVRゲームとして楽しむのか。
その理由がここであり、このゲームで自分が一番推したい部分。

プレイヤーがキャラクターの性格を自由に想像できる"喋らない主人公"は時にプレイヤーの分身になることもありますが、プレイヤーとは違う明確な自我を持つ"喋る主人公"は感情移入したり好きになることはあっても基本的にプレイヤーから独立したキャラクターであることが多いと思っています。

アルトデウスはそんな喋る主人公クロエとプレイヤーを強く結び付け、プレイヤー自身をクロエにしてしまう。そんなことを強く感じさせられました。

自分のまさに目の前に存在するキャラクターたちは自分をクロエとして認識し語りかけ、自分自身もクロエとして様々な選択と決断を迫られる。

立体音響によってクロエの声は自分から発せられているかのように聞こえ、ただ立っているだけでまるで自分がクロエを演じているかのような気分にすらなる。いつしかクロエの体験や感情が自分の中に入ってくるような感覚になり、自分がクロエとして行う選択と決断に実在感を強く感じてしまう

また、クロエとプレイヤーのシンクロはVRによる恩恵だけでなく、シナリオ構成でもそれをサポートされているとも感じました。

クロエはメテオラを倒す為に造られたデザインドヒューマンであり本来は感情の起伏に乏しい人物だったが、コーコとの交流を経て人間らしい感情を得ていった。
今のクロエを形作ったといってもいい存在であるコーコとの記憶を辿ることが単なる過去回想にとどまらず、クロエという人物がどのように形成されたかをプレイヤー自らが体験することに繋がる。そうしてプレイヤーがより自然とクロエになっていく…

VRゲームはまさしくゲームの世界に自分がいるかのような体験が出来る。
それまではモニター越しで見ていたゲーム世界の操作キャラクターを、直接自分に置き換えてプレイしている感覚に近いと感じています。
アルトデウスをプレイするまで自分は、VRゲームはプレイヤー=主人公の図式がスタンダードであり、"喋る主人公"とVRの相性については懐疑的だったんですが、プレイしてみて初めて実在感のあるロールプレイの可能性を実感しました。
前作東京クロノスでここまでの感覚には至らなかったのは、やはり選択肢やマシンアクションパートなどで自分が能動的にクロエを演じる機会が前作より圧倒的に増えたからだろうか。

VRで自分がゲームの主人公になる体験は、ゲーム世界の操作キャラクターを直接自分に置き換えることだけが全てではなく、その世界の主人公を自分が演じる"ロールプレイ"の方面にも実は大きな可能性があった。
物語の主人公と自分がシンクロし、まるでそのキャラクターとして運命を辿るかのような体験はVRで、かつゲームでなくては出来ないロールプレイ体験であり、物語をVRゲームで楽しむ大きな意義の1つなのではないでしょうか。

アルトデウスは日本的なアニメやゲームの文法を感じるケレン味の効いた作風と新しい"VRゲームらしさ"の形、VRによるロールプレイという新しい可能性を意欲的な実験作でとどまらず、更にVRゲームとしてのボリューム、シナリオ、音楽、キャラクターなど全体的な完成度も高いVRアドベンチャーゲームとして築き上げてしまった。

今までになかった新しい"VRゲームらしさ"を開拓した作品だからこそ、既に今のVRに魅力を感じある程度満足しているであろう既存VRユーザーではなく、これまでVRに積極的には触れてこなかった多くの和ゲーマー、コンシューマゲーマー、アニメファンにこそ遊んでほしい作品だと強く思います。

余談

実は今のVRの敷居はかなり低くて、スタンドアロン型のVRHMDが家庭用ゲーム機と同じ価格帯で買え、面白いゲームも続々と出てきているんですよね。
最早特別VRに興味があるわけではないコンシューマゲーマーであってもVRゲームが自然と選択肢に入ってくる時代になりつつあると最近は感じています。
もしこれを読んでアルトデウスに興味を持った人がいれば、是非ハードごと買うのも検討してみてはどうでしょうか。

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