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真・女神転生V感想

2017年1月13日に行われたNintendo Switchの発表会と共に発表され、約5年の月日を経て発売した真・女神転生V。発売前は期待も不安もとても大きかったですが、結果的に大満足の作品でした。

とてもいい作品なのですが、メガテンといってもペルソナの派生元の作品ということくらいしか知らない、なんとなく暗くて難しそうなイメージ...という人は少なくないはず。
これを読む人に女神転生シリーズと、真女神転生Vの魅力が少しでも伝わればと思います。

真女神転生シリーズは、荒廃し悪魔が跋扈する現実世界を舞台としたRPGシリーズです。主に現代の東京が舞台になっていて、主人公は悪魔を会話で仲魔にして戦い、様々な価値観の間で翻弄されながら、やがて世界の行く末を決める戦いに向かっていくこととなります。
エンディングは複数に分岐し、プレイヤーは決められた形に世界を救うのではなく、自らの望む世界を創ることが最終的な目的となります。

魅力的に描かれた悪魔達

メガテンにおける悪魔とは、世界中の様々な神話や伝承に登場する神様や妖怪などの総称。悪魔と言われてすぐに思い浮かべるような存在だけでなく、天使や女神、妖精といった存在も悪魔として登場します。
彼らは敵として戦うだけでなく、会話をして交渉することで仲魔にすることが出来る、要するに会話で仲間を増やすポケモンみたいなシリーズです。(ファミコンの女神転生が1987年、SFCの真女神転生が1992年なのでシリーズ的にはメガテンの方がかなり先輩)

これまで以上に魅力的になった悪魔たち
広大なフィールドで直接3Dの悪魔達と出会えるのは(昔のオンラインゲームとかを除くと)今作がシリーズ初。
シンボルエンカウントになった悪魔は時に個性的な動きを見せ、背景やNPCとして登場する悪魔もそこでしか見れない専用のモーションが作り込まれていることも。
これまでの作品では見られなかった悪魔達の暮らしぶりようなものが垣間見えて、気分は完全にメガテンスナップ。

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ガキが飢えてる…!!

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ザントマンが砂集めてる……!!!

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ケットシーが可愛い!!!!!!!!

悪魔は超常的な存在ですし、メガテン的にも世界観的な設定も解釈もシリーズによって大きく変わることが多かった為、フィールドに存在する悪魔達に生を感じられる今作はかなり衝撃的でした。

また悪魔から受けられるサブクエストでは、その悪魔の逸話,キャラクター性を活かしたイベントだったり、プレイヤー自身の価値観によって協力する悪魔が変わる展開だったりとメガテンらしい悪魔解釈のされたイベントが盛りだくさん。
他にも悪魔固有の専用スキルのモーションが非常に凝っていたり、戦闘中に縁のある悪魔を手持ちに入れていると特殊な会話が発生したり、エンカウントした悪魔に脅されて金を毟り取られたり、一緒に魔界を駆け回ってアイテムを探してもらったり、これまでの作品以上に悪魔とのコミュニケーションが楽しめ、個々の悪魔に対してこれまで以上に愛着が沸くような作りになっています。

悪魔達はアトラスゲーにはよく登場する子たちなので、彼らに愛着が沸くと結果的にペルソナなどの派生作品もより一層楽しめるようになるはず。
そういう意味でも真Vはアトラスゲーの入り口として非常におすすめです。

幅広い難易度選択と、戦略性の高い戦闘システム

アトラスゲーは基本的に難易度ノーマルでもゲームシステムをフル活用しないと雑魚敵からボスまで歯応え抜群ですが、最近のアトラスゲーはバトルに関しては難易度選択が豊富。
気軽に進みたい人用のカジュアル、超低難易度でストーリーや世界観だけ楽しみたい人はセーフティという選択肢が用意されています。
ちなみに難易度ハードはコアなアトラスゲーマー向けの難易度。
悪魔合体のシステムがあるアトラスゲーはある程度共通のセオリーがあるので過去作に慣れているとハードが丁度よく感じるようになってきますが、最初のうちはノーマルでも十分歯応えがあるはず。
しかしメガテンの代名詞ともいえる悪魔合体とプレスターンバトルは高難易度だと面白さがより際立つシステム。この2つに慣れれば高難易度でもきっと楽しめるはずです。

プレスターンによる極端な相性バトル

本作のバトルシステムは相手の弱点を突くことで行動回数が増え、反対に攻撃が無効化されたり回避されると行動回数が大きく減るプレスターンバトルを採用しています。
真女神転生3で初登場して以降、ペルソナシリーズ含めほとんどの関連作品で様々なアレンジを加えつつも採用され続けていているアトラスのゲームでは最早お馴染みのバトルシステムです。

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通常1行動で1つアイコンを消費しますが、弱点を突くとプレスアイコンが一つ点滅。最大味方の数×2の8回行動が可能になっています。
反対に攻撃が外れたり味方が倒されると行動回数も大幅に減り、一気にピンチに陥ることも。
弱点やクリティカルで得られるアドバンテージが凄まじく、また状況による有利不利が極端に動く苛烈な攻防が魅力のバトルシステム。

そもそも敵の攻撃が高めに設定されているので、弱点やクリティカルを突かれると雑魚敵相手でも全滅することもザラにありますが、
強力なボスの行動を対策してバトルを有利に進めたり、ピンチに陥って使えるプレスアイコンが大きく制限された後でも、残されたアイコンを上手く使ってピンチを切り抜けたりと激しい攻防を制せると最高に楽しい。

高難易度は基本的にシステムを最大限活用することが常に求められるバランスになっていて、その都度攻略に適した悪魔が求められるバランスは一見するとプレイの幅が窮屈になってしまいそうにも思えますが、後述する悪魔合体システムで悪魔を自由にカスタマイズすることが可能なのでそういった窮屈さは感じず、強敵をガチガチに対策する楽しさと、比較的自由度の高いプレイが両立しているゲーム性が、真Vに限らず多くのメガテンやペルソナに共通するバトルの魅力です。

悪魔合体

悪魔にはそれぞれ初期スキルと耐性、得意な属性が決まっていますが、悪魔同士を掛け合わせ新しい悪魔を作る悪魔合体では、合体元の悪魔のスキルを一部引き継ぐことが出来ます。

一見手も足も出ないような強力なボス相手でも、それに対抗できる耐性と強力なスキルを併せ持つ悪魔を合体で作ることが出来れば戦局を大きく変えることが出来ます。
悪魔の合体法則は複雑で、狙った悪魔に好きなスキルを持たせるにはそれなりの試行錯誤を要しますが、プレスターンバトルが悪魔合体に拘れば拘った分だけ見返りを感じられる戦闘システムだからこそ、悪魔合体に高い中毒性が生まれるんですよね。

写せ身
これまでは作りたい悪魔と、それに持たせたいスキル、その為に合体元に継承させたいスキルを持たせて…と前段階で準備したり考えたりすることが多かったのですが(それもまた醍醐味で楽しい)
今作は悪魔の写せ身というアイテムによってより気軽に悪魔のカスタマイズを楽しめるように。
ポケモンでいうわざマシンのようなもので、悪魔に後付けでスキルを覚えさせるアイテムによって一度作った悪魔を気軽に再強化する事ができます。

本来合体でその都度強い悪魔を作っていくのが重要なゲーム性なので、今までの作品では愛着の湧いたお気に入りの悪魔であってもスキルがストーリーの進行によって型落ちしてきたり、段々レベルが上がりづらくなっていったりと同じ悪魔を長く活躍させるのが難しいゲームでしたが、今作は写せ身などでお気に入りの悪魔を強化して使い続けやすくなっているのが嬉しいところですね。

レベル差はキツいが覆せるバトルシステム
今作はシンボルエンカウント制かつ寄り道要素が豊富なので、どれだけ雑魚敵と戦いレベルを上げるかはある程度プレイヤーに委ねられています。
またレベルを上げた時の恩恵が大きめに設定されて、同じ強敵相手でもレベルが5違えば難易度的が大きく変わってきます。
しかしプレスターンバトルでもっとも重要なのはスキル耐性バフデバフ。
当然レベルを無理に上げずとも合体による対策と立ち回り次第で強力なボスとも太刀打ちすることは可能で、そうして強敵を突破出来た時のしてやったり感がたまらない。

レベルを上げて自分が丁度いいと思えるレベル差で戦っていくのもいいですが、一見勝てなさそうなレベル帯のボスであっても-5レベル下や‐10レベル下の悪魔の中に対策にピッタリの悪魔がしれっと用意されていて、それらを駆使することで突破が出来るようにもなっています。

難易度ハード野良戦闘禁止縛りでも挑戦してクリアしてみましたが低レベルだと敵を倒した時の経験値量も多く、大きなストレスもなく歯応えのある戦闘が楽しめたのでレベル差に気を付ければプレイヤーにとってそれぞれ丁度いいバランスで遊べる仕様にはなっていると思っています。

世界観、シナリオの魅力

メガテンが神も悪魔と呼ぶ理由
真女神転生シリーズは多くの作品で神や悪魔といった存在によって東京が、現代の社会が崩壊することで物語が始まりますが、そもそも神や悪魔といった存在は単なるファンタジーではなく、現実の歴史や風習、哲学などに強く紐づいた神話や宗教によって生み出されたものと言えます。
神や悪魔の逸話の中には同時期に流行っていた他の宗教の影響が感じられることもしばしばあり、それぞれの神話・宗教に登場する神々が別の宗教でも登場したり、自身の神と他の神を同一視したり、中には一方を邪教、悪魔として貶めたりすることもありました。
例えばベルゼブブやベルフェゴール、アスタロトなど、多くの人も名前は聞いたことはあるような悪魔達の中には、元は異教の神々をキリスト教など一神教が悪魔として扱ったことで生まれたと言われています。

悪魔達は必ずしも人に害を成す存在という訳ではなく、それぞれが違った宗教、価値観から生まれた存在である為に善も悪も立場によって変わります。全ての神魔が平等に"悪魔"として扱われるメガテンでは善も悪もゲーム側から呈示されることは無く、どの悪魔を仲魔とするか、そしてどの結末に至るのかまで全てがプレイヤー自身に委ねられることとなります。

これまでの社会を築いてきた普遍的な価値観、我々が信じてきた"神"は本当に正しい"神"なのか?

それぞれ異なる思想、価値観の象徴である神と悪魔の戦いによって一度崩壊した世界は同時に新しく生まれ変わる転機を迎えており、プレイヤーは決められた形に世界を救うのではなく、プレイヤー自身の価値観で世界を変えることも出来るというのが真女神転生シリーズです。

これまでの作品では、自身を唯一の神であるとし、かつて他の地域の神々を悪魔と貶めてきた一神教の神を絶対的な秩序、画一的な価値観の象徴として描き、一神教に貶められた神々や悪魔を対となる混沌とした対立構造を元にストーリーが語られることが多かったのですが、今作は序盤で唯一神が既にルシファーによって倒されていることが明かされます。

かつて社会を築いてきた共通の価値観、秩序によって作られる時代は既に終わり、新しい社会を築かんと多様な存在が個々の価値観を主張するこの混沌の時代。
神や悪魔を用いた宗教的なモチーフに現代社会における価値観のテーマを組み込んだ真女神転生という作品は一歩間違えると途端に説教臭く、政治的主張が強くなりすぎる可能性があるとも言えますが、作中で投げかけられる問いに対して明確な答えを用意するのではなく、あくまでプレイヤー自身の価値観でエンディングを選ぶことに強い意味のあるシリーズである為に、一つの物語として見た場合は薄味というか、シナリオそのものよりも世界観やテーマ性を自分で汲み取って楽しむタイプのシリーズだと思っています。

特に今作は悪魔達の描写や掘り下げが丁寧なのに対して人間キャラクターの掘り下げに関しては最低限に抑えられているとも感じています。
メガテンのキャラクターはそれぞれのルートにまつわる思想の担い手としての役割が元々強く、キャラクター個人に焦点が当たることが少なめなのですが、今作は特にどの結末に至るとしてもプレイヤー自身が結末を決めることに大きく焦点が当てられていて、各ルートとその担い手となるキャラクターはあくまでプレイヤーが決める結末に関する判断材料の一つである、というかなり俯瞰的な描かれ方がされているように感じます。

シナリオでプレイヤーを受動的に導くのではなく、世界観の根底にある現代的なテーマをプレイヤー自身が汲み取り、その後の世界の行く末を選ぶ体験に振り切った今作のシナリオはメガテン独特の楽しみ方がプレイヤーに要求されますが、今作の世界観が示すテーマと、それぞれのルートとその結末は多くの人々に一定以上の理解と共感が得られるものだったと感じています。
直接的に語りすぎないテーマの語り方も含めて、今この時代に出すメガテンとして相応しい内容だったと個人的には満足しています。なんならシリーズの中でも相当好きな部類かも。


広大なフィールドを闊歩する悪魔達との旅も、攻略し甲斐のある苛烈な高いバトルも、メガテンらしい独特な世界観とシナリオも個人的に大満足の作品でした。switchを持っていてRPGが好きなら、是非購入を検討してみてはいかがでしょうか。

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