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『ファクトフルネス 』を読んでみて


 今年は梅雨の季節が例年よりも長く日本の大地に居座っている。やっと明けたらしい。梅雨好きには悪いけど、俺は一年の中で一番この季節が嫌い。ほんまに大嫌い。


もちろん、湿気が急に多くなって過ごしにくくなることも嫌やけど、一番辛いのが、皮膚にベタつく水分が体内にあるエネルギーを芯から吸い取って、やる気を奪ってしまうこと。とにかくこの時期の無気力や倦怠感といったら一年で一番激しい。


低気圧の力は恐ろしい、毎年この時期になるとそう思わされる。梅雨が好きな人はいるかもしれないけど、低気圧が好きな人っていないんじゃないかな、なんて俺は勝手に思っている。


こうやってやる気が失われるときは、「あーあこれもすべて低気圧のせいやな」って思うようにしている。こうしたら誰にも八つ当たりすることもないし、自分も相手も不快な思いをさせないから。だから物事がうまくいかないときは低気圧のせいにしよう。それで丸く収まるはず。


 パンデミックの影響で、極端に家の中で過ごすことが多くなった。最初は何をすればいいのかわからなかったけど、ある友人が俺にオススメの本をいろいろと紹介してくれるので、勧められた本を順番に読み進めている。


そのおかげで、ただ本を読む習慣がついただけじゃなく、心を動かされることがすごく多くなった。昔はインプットだけで満足していたけど、今は外に自分の思いを吐き出さないと(アウトプット)気が済まないから、自分の気づきをここに書いていきたい。


 今回は昨年ベストセラーになった、『ファクトフルネス 』を見ていく。テレビで紹介されたこともあって知っている人も多いんじゃないか。


この本は人間の内面にこびりついている「思い込み」というものから脱却して、物事を正しく見ることの重要性を説いている。


よく、「学校で勉強することなんてほとんど役に立たないし、なんの意味があるんや」というのを耳にする人やそう思っている人は少なからずいるはず。実際、数学の代数とか微分積分、関数や物理化学、古文漢文を今の仕事に大いに役立てている人はほんの一握りである。


地理や倫理などは直接日常生活で使うことはなくても、学生の時に習った見方が大人になっても根強く残っているように思う。歴史や科学的な事柄は研究者によって次々と刷新されていて、1年経てば全く正反対の事実が判明することもあり得る。


でも時間が過ぎて10年経っても、不思議なことに、多くの人は学生の時に習ったことを不変の事実、真実として思い込んでしまっていることはよくあるように思う。


例えば、本著にも書いてあったけど、「発展途上国」と聞くと先進国の人たちはものすごく貧しい生活を強いられていると思い込んでいるかもしれない。しかし実際は、途上国全てが貧しい生活を送っているわけではない。途上国の中でも急速な発展を遂げている国はいくつもあるし、アフリカ圏だと、エチオピアやエジプト、コートジボワールなどは成長著しい国である。


『ファクトフルネス 』ではこういった事実を、データを基にして説明している。確かに「データが確実である保証がない」と反論されたらそうかもしれないけど、参考には多いに値する。


 また、学校教育だけでなく、マスメディアの報道によって悪い方にばかり目が向いてしまって、ネガティブ感情や不安に支配されることもよくある。人間はポジティブなことよりもネガティブなことのほうが反応しやすい傾向があるから、ニュースだけを見ていると世界はどんどん悪くなっていると思い込んでしまう。


自分がどれほど思い込みで物事を考えていて、誤った認識をしているのかがはっきりとわかるように、本書のイントロダクションでは世界の認識に関するクイズを13問挙げている。自分ももちろん、クイズにトライしたけど、正解したのがたったの3問だけやった。


「いや、それはお前が単にあまりにも無知なだけやろう。それを周りの人と一緒にするのはどうかと思うな」ってヤジを飛ばされそうな気がする。それが実際、著者が統計を取ったところ、正解率を見てみると平均2、3問。つまり俺はなんとか平均点は取れていた。面白いことに全問正解者はゼロで、全問不正解者は15%もいたらしい。


その後、我々が日常生活で抱いている誤った「思い込み」を10個挙げ、先ほど出されたクイズと照らし合わせながら解説、説明されている。


 前にも紹介したけど、『ワークシフト』を読んで、明るい未来よりも暗い未来の方が俺には印象が強く、現実味があると思っていた。


しかし、未来に関して懸念すべきところがないわけではないけど、昔に比べれば世界は格段と良くなっていることをこの本で知った時は度肝を抜かれた。


一番驚愕したのは、「減り続けている悪いこと」が予想以上に多かったこと。俺が今まで勘違いしていたのは特に以下の5つだった。(第2章のネガティブ本能)

・児童労働

・核兵器

・大気汚染

・オゾン層の破壊

・災害による死者数


これらは今でも増え続けており、世界は本当に大丈夫なのかと思っていた。また、反対に「増え続けている良いこと」も予想以上に多かった。例えば、

・自然保護

・識字率

・安全な飲料水

・絶滅危惧種の保全

などなど。


情報社会によって容易に世界の情報を知ることができるが、上にも書いたように、発信する情報はネガティブであればあるほど人の目につきやすく、インパクトが大きいので、ネガティブな内容のほうが多く世に出回っている。


 一通りこの本を読み終えたあと、今までの自分の思い込みがいかに激しく、いかに無知であったかを痛感せずにはいられなかった。しかし同時に得体の知れない満足感が俺の心をより占領していた。


じゃあ俺の内面を満足させたものは何なのか、それを次の記事で書くことにする。













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