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【後編】収穫祭2022レポート

息子の前で初ライブ

続いてのライブアクトはJJJ。バックDJには盟友の「Aru-2」。高校生や20代前半の若いヘッズ達からの熱いプロップスを集めていたラッパーだ。この町は、隣接する市町村も含めストリートカルチャーへの造詣が深く、ブラックミュージックへのリスペクトが強い。みんな大切なことを音楽から学んで大人になっていく。収穫祭の意義として、市外の人たちはもちろんだが、この町の住民たちにも改めて町の魅力を感じてほしい、という願いが込められている。だから若い人たちも来やすいようにイベント自体の入場料を無料にした背景がある。その意味を一番発揮できたのがこの瞬間だったかもしれない。若者たちが熱狂できる空間を生み出せたのは、このイベントの大きな意義だ。

多くの若者がJJJのライブを待ち焦がれていた

 ライブでは『ORANGE feat.STICKY』『Changes』『loops』など数々の代表曲を披露してくれた。MCでは「実はいつもより緊張している」と語ったJJJは、この日初めて自分の息子がライブを観に来ていることを明かした。アーティスト人生におけるかけがえのない日に、収穫祭を選んでくれたことが何よりも嬉しい!「Fla$hBackS」の『Sour Picture』を聞けたのはヘッズ達にとって最高のサプライズだろう。終盤のfebb as Young Masonのバースでのステージングは仲間への愛とリスペクトに溢れていた。マジで「いうことはないもない」。余談だが、この日のライブはJJJにとっても印象に残る日になったのか、その後リリースされた「C.O.S.A」との新曲『Leave Me Alone』のリリックには”湯沢の風”、”山の上、夏の終わり”というフレーズが出てくる。これが収穫祭のこととは断定できないが、地元の地名をリスペクトするアーティストの楽曲で聞けるのは無性に嬉しい。

あの熱狂が蘇る瞬間

昼と夜の狭間を彩る音色

 夕方「Kan Sano」出演の前、そしてトリの「田我流」が会場入りするタイミングで雨が止むと同時に麓の町に虹が掛かるという奇跡が起きた。最高のロケーションとグッドタイミングに、会場にいた全員がスマホを手にした。こんな景色が見られるのも山の上ならでは。

田我流さんが会場入りした瞬間に虹が出た

 サウンドチェック中には「七尾旅人」の『サーカスナイト』や「田我流さん、好きなんですよね」と言って『夢の続き』を即興でカバーしてくれたKan Sano。台本にはない本当のライブ感を感じられた瞬間。本編では鍵盤の揺れが心地よい『Natsume』やミドルテンポで躍動的なビートと後半のアレンジが特徴的な『My Girl』など多彩な楽曲をソロアレンジで披露してくれた。ちょうど夕暮れの時間帯も相まって、会場は一層チルな雰囲気に。だんだんと麓の町に電気が灯るのと同時にキーボードの電子音が絶妙に相まみえる。町に溶け込むかのような音が耳に優しく響いた。とくに中高年の男女からの人気が高く、都内からKan Sanoだけを聴きに来た、という人もいたほど。南魚沼の雰囲気が石川県の地元と似ている、とシンパシーを感じていることを語ってくれた。

突き抜ける魚沼平野とKan Sano氏

ローカルへ贈る熱い言葉

 そして、ヘッドライナーをつとめてくれたのは田我流。バックDJは安定のMAHIBE。会場には新潟出身の映像作家であり『夢の続き』のMV監督を務めた丸山雄大氏の姿もあった。釣りと旅をライフスタイルとしている田我流は、魚で有名な南魚沼へ過去にも足を運んでいる。そして、この町には多くのファンがいる。クライマックスを飾るのにこれほどふさわしい人物はいない。現在も生まれ育った山梨県笛吹市”一宮町”に住みながら活動し、ローカルへのリスペクトを惜しまない彼の一言一句に心揺さぶられた人も多いはず。「俺も明日は消防に行かなきゃいけない! 分かるだろ新潟のやつなら!」の言葉に全員が親しみを抱き、笑った。夜景を見下ろすグッドロケーションで夏から秋へと季節の変わり目に聞く『ゆれる』は最高の一言。正に誰もが心がゆれた瞬間だったのではないだろうか。この場所でこの曲を聞けたことは一生忘れない。『夜のパパ』を歌っている時に「サイレントを楽しもう。月でも見上げてさ」と言い、見上げた月の美しさも忘れられない。月が照らして、見守ってくれたおかげで、このイベントが行えたのかもしれない。

確かにあの日、みんなの心がゆれた。

 ラストは『夢の続き』。会場にいた全員が聞きたかったこの曲を最後に聞けて、もう本当に思い残すことはない。2022年の収穫祭は終わってしまうが、前途多難なこの時代に町のみんな、会場に来てくれた全員にまだまだ夢は続いていくことを示してくれて、明るい未来が見えたようだった。収穫祭は今後も、音を止めませんよ。そしてマイクパフォーマンスでは「地元を大切にし、この町の魅力を知って守っていこう」とする主催者の声を代弁してくれた。これにはスタッフ一同泣きそうになるのを必死に堪えた……。

まるで夢のような瞬間。今年はこの夢の続きを見に行こう。

 今年初開催となった南魚沼ー収穫祭は、マーケットやグルメ、アートを通じて南魚沼の文化にも触れられ、誰もが楽しめるフェスになった。この日に聴いた音は、最高の景色と共に忘れられない記憶となっただろう。2023年の秋は、ぜひ南魚沼収穫祭へ。

南魚沼収穫祭2023
2023年10月21日(土)
ザ・ヴェランダ石打丸山(石打丸山スキー場)
入場無料 ※一部エリアゴンドラ乗車券必要
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