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自家採種のススメ


自家採種しています

ソイルラボでは、毎年多くの野菜の種を採っています。
翌年の野菜栽培に関わることなので、収穫することと同じくらいとても重要な作業です。

自分が育てた固定種や在来種の野菜から種を採るというのはとても貴重なこと。でも昔からずっと続けられてきたこと、命のつながり。
今回はソイルラボが実際に行っている種の採り方をご紹介します。


自分で種を採るということ※注意事項あり※

種ってどんなカタチ?

野菜の種ってどんなカタチですか?

こう聞かれてみなさんがパッと思い浮かべるのは、例えば「スイカ」や「メロン」、「トマト」や「きゅうり」、などではないでしょうか?枝豆やナッツ類も種ですね。


固定種のミニトマト「ステラミニトマト」

このように「種」は、種まきのためのものと意識していなくても、いつも生活の中にあって、毎日ごはんを食べるときなどに目にすることがとても多くあります。


種は自分で採れるもの

食べるときに見たり、そのまま食べてしまっている種。
種類にもよりますが、これらはきちんと過程を経ればちゃんと発芽して育ちます。

買わなければならない種もありますが、自分で固定種や在来種の野菜を育てている方なら、その野菜から種を採ることができます。
これを「自家採種」といいます。
翌年その種を蒔いて野菜を育てることが可能です。そして自家採種はそれほど難しい作業ではありません。種を採りやすい野菜もありますよ。


※注意事項です※

自分で種を採ることができるのは固定種や在来種の野菜のみです。この記事は、ご自分でこれらの野菜を育てている方などに向けた内容となっており
ます。

市販されている種の中には「登録品種」という種類のものがあります。こちらの品種は種を採るときに許諾が必要なものがあります。ご注意ください。

また交配種やF1種の野菜から種を採っても、翌シーズンその種をまいても同じような形や性質の野菜に育たなかったり、非常に不揃いな野菜が育つことにありますのでご注意ください。

(2023.1.24 誤解を招く表現がありましたので、記事内容を修正しました)


種の採り方

野菜のカテゴリー

ここで簡単に野菜のカテゴリーについて。野菜をざっくりカテゴライズすると次のように分けることができます。

〇葉茎菜類
主な可食部は茎と葉。小松菜、ほうれん草、白菜、ねぎ、アスパラガスなど。
〇根菜類
主な可食部は根。大根、にんじん、ビーツ、じゃがいもなど。
〇果菜類
できた実を食べる。トマト、かぼちゃ、きゅうり、ナスなど。
〇果実的野菜
できた実を食べるもののうち、木に生る果実と同じように扱われる野菜。いちご、メロン、すいかなど。
〇香辛野菜
可食部の形態による分類ではなく、香辛料の原料となったり料理の添え物として食べるもの。しょうが、わさびなど。


(参考:農林水産省HP 
https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1205/05a.html 、https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/fruits/teigi.html ほか)


ふだん種を目にすることが多いのはやはり「果菜類」と「果実的野菜」ではないでしょうか。
まずはこのイメージしやすい「果菜類」から始めるのがおすすめ。
種採りはじめ、まずは果菜類から2回に分けてご紹介します。今回はピーマンとトマト、きゅうりのご紹介です。


ピーマンの種をとる


ピーマンを食べるときは緑色で硬くしまり、みずみずしくつやつやした状態で食べますが、種を採るときはピーマンをさらに追熟させます。
ソイルラボでは野菜が十分に充実する秋(9〜10月)に種を採ることが多いです。

よく育って形や色、大きさが良いものを選んで、収穫せずそのままにしておきます。
するとだんだん実が赤くなり、柔らかくなってきます。


熟した実から取り出したピーマンの種

赤くなってから1週間ほどおいて追熟させ、収穫し、中を割って種をとりだし、新聞紙などの上にバラバラにほぐして広げます。
そのまま2週間ほど乾燥させれば完成です。追熟させるまで少し時間がかかりますが、手間は少ないので簡単!

唐辛子などは実を割らずに、収穫したらそのまま乾燥させて種を採ります。


種を天日で乾燥させている様子

注意したいのは、ピーマンと唐辛子を近くに植えないこと!
ピーマンと唐辛子は交雑しやすいので、受粉の時ピーマンに唐辛子の花粉で受粉してしまうと、その種からは辛いピーマンができてしまいます。


トマトの種をとる

トマトは枝も太くて樹勢がいいもの、実付きが良い樹を選んでおきます。その樹からとれる大きくてきれいなトマトを選び、赤くなってから1週間ほどで収穫します。

収穫したら家の中などにしばらくおいておき、真っ赤で表面が少し柔らかくなるまで追熟させます。

トマトを割って中の種を取り出してタッパーに入れます。種はゼリー質の中に含まれていますので、そのままゼリー部分も取り出して入れます。
タッパーにふたをしてそのまま3日間発酵させます。あまり暑すぎないところに置くと良いでしょう。発酵させるとゼリー質から取り出しやすくなりますし、種の病原菌などの殺菌もされます。

3日経ったらタッパーに水を入れて種を洗います。ゼリー質から指でもみだすようにして種を取り出し、何度か水を変えて種がきれいに取り出せたらOK。水に沈んだ種だけを新聞紙の上などに重ならないように広げ、1〜2週間くらい乾燥させます。


きゅうりの種をとる

きゅうりもつるや枝の樹勢がいいもの、実付きが良いものや葉が病気になっていないものを選んでおきます。ほかの種類のウリ科の野菜が近くにあると交雑するのでなるべく離して植えましょう。
実がなったら形の良いものを選び、樹上でそのまま大きくします。

十分に熟したきゅうりを割ってみると…

実が大きくなって色が黄色に変わり柔らかくなってきたら収穫します。
実を縦半分に切り、真ん中のゼリー質ごと種を取り出してタッパーに入れます。

タッパーにふたをしてそのまま3日間発酵させます。長く放置すると発芽してしまうことがあるので気をつけてください。発酵させることで種の病原菌なども殺菌もされます。暑すぎない所に置いて、ときどきふたを開けてガス抜きをしてください。

3日経ったらタッパーに水を入れて種を洗います。ゼリー質から指でもみだすようにして種を取り出し、何度か水を変えて種がきれいに取り出せたら、水に沈んだ種だけを新聞紙の上などに重ならないように広げて1〜2週間くらい乾燥させます。

発酵後、取り出したきゅうりの種

果菜類の種採り、次回はナスとかぼちゃをご紹介します。お楽しみに。

【参考図書のご紹介】

http://www.soshinsha-pub.com/bookdetail.php?id=334

「固定種野菜の種と育て方」 著者:野口勲、関野幸生(創森社)


種の保管と発芽試験

種の乾燥を終えたら小瓶や小さなチャック袋、紙袋などに乾燥剤と一緒に入れ、温度変化の少ない冷蔵庫などで保管します。湿気が多かったり暑くなり過ぎたりする場所は避けてください。
このとき品種名と採種日を小瓶や袋に明記しておきます。種にも寿命がありますが、きちんと保管していれば、使いきれなかった種を翌年に蒔いても大丈夫でしょう。

今回ご紹介した野菜のうち、ピーマンやトマト、きゅうりは長命種子の部類で3~4年ほどもつといわれています。
また野口種苗さんで種を購入すると、種袋に採種方法や種子寿命が明記されていますよ。

参考:「野口のタネ 野口種苗研究所」HPより 


また、種を採ったら発芽試験をするようにしています。

ポットに10粒ほどバラバラに種を蒔いてみて、どのくらい発芽するかを観察します。
10粒中8〜9粒発芽して、双葉や茎が貧弱すぎるようなことがなければ成功ではないかと思います。


まずはイメージしやすい果菜類の種からチャレンジ!

いかがでしたか?大切な野菜の種を自分で採ることができると、野菜作りがもっと楽しくなりますし、満足感や充実感が格段に上がります!

また、これから先どんなことが起こるのか誰にもわかりませんが、自分で食べ物を作り、守る手段やスキルを持っていることは、とても重要なことになるのではないかと私たちは考えています。

難しい話はともかく、家庭菜園などで固定種や在来種の野菜を育てている方は知っておいて損はないですよね、生きることに関わることなので。

次回の記事ではナス、かぼちゃの種の採り方をご紹介します。






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