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余は如何にして土壌学徒となりし乎

私がなぜ土壌学という分野の研究者になったのか書こうと思います。

大学院での唐突な土との出会い

私は農学部4年間で所謂「バイオテクノロジー」を学び、一度も農場などのフィールドで実習をやったことはありません。
そんな中、大学院で研究室を選ぶ際にふと思い立ちます

「あっ、放射光の実験したい」

分析機器は好きでしたが、それまで生物実験がメインの僕はいまだになぜこう思ったのかは自身でも理解できません。
そんなわけで放射光実験している研究室はないか探したところ、今も社会人博士でお世話になってる研究室と遭遇します。

「ここに行けば、放射光で実験できる!」

そのあとは勢いのまま入試を受け、研究室に所属していました。
そして、その後に研究対象を知らされます。

「ここは『土』を研究する研究室です」

これが僕と土の出会いです。
「放射光が使える研究室に所属したら、対象は土だった」
売れないラノベみたいな展開で土壌研究をはじめました。

土壌学という分野の人の少なさに気が付く

私は大学院の2年間、黒ぼく土に含まれるリンの研究を行っていました。ここについても今後書きます。
とにかく土のことなど全くわからぬ僕は手当たり次第に勉強し、論文を読みみ、そして気がつきます。

「あれ?この分野の研究者、かなり少ないぞ。僕でも世界を狙えるかもしれない」

私の学部の専門でもあるバイオテクノロジーは、農学部以外にも、理学部、医学部等、様々な学部で行われているため、研究者は多いです。
それに比べると、土壌学は研究者が少ないです。
理学部等にも近い研究はありますが、それを含めてもバイオテクノロジーの方々の比ではないでしょう。

そして土壌学の研究は、質より量大味な研究だと個人的に思います。
土壌学研究で大切なのは「様々な土壌に共通したものは何か」です。
その理由はシンプルで、世界にはいろんな土壌があるからです。
モデル植物、動物なんてありませんから、総当たりで攻めていくのです。
こうした側面も、大雑把な私にはむいていました。

「研究者の少なさ×質より量」

こうしたことから研究のモチベーションを上げて、研究を行っていました。
また、研究でご飯を食べようと思い出したのもこの辺りです。

化学メーカーを辞め、再び土壌学へ

大学院卒業後は化学メーカーに就職し、研究職として働きはじめました。
これはこれで面白かったのですが、ふつふつとわく思いがありました。

「研究がしたい」

私はメーカーでは研究者というよりは、コストダウンについて研究する「技術者」でした。
メーカーで全く新しい、研究要素が強い研究を行う研究者は一握りで、完全にガチャです。
多くのメーカー研究者は、製品のコストダウンについての研究をしていることが多いと思います。こちらは技術者的側面が強いです。
どちらも人との相性があり、僕はコストダウンにむいていないなと3年間ずっと感じていました。
また、若いうちに方向転換しないと、このメーカー以外どこにも働けないのでは不安がありました。

その結果、3年で会社を辞め、現在の所属に移りました。
その際に幸運なことがあり、私が採用された年は土壌のポジションが空いていたのです。
その結果、私は土壌肥料学を研究しています。
気がついたら、私は土壌を研究してお金をもらう「土壌学徒」となっていました。

結びに

全ては偶然の出会いとメーカーでの葛藤と幸運から、私は土壌学徒となっていました。
土壌学は数が少ない分野です。ただブラックボックスな側面が多いため専門性も求められる分野です。
そのため、他分野に比べたら一廉の人物となるのは容易です。
しかし、お金が取りづらい、人がこないetcいろんな問題は抱えています。
今後もnoteは続けていこうと思っていますので、土壌学の裾野を広げることに少しでも貢献できたら嬉しいことはありません。

読んでいただきありがとうございました。

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