空を読み、雹を知る思考プロセス

「テレビで天気予報を見る」。一人暮らしを始めてから、毎朝の日課が1つ増えました。日課といいつつ、先日起床時間が遅れて焦って自宅を飛び出したら、洗濯物がびしょ濡れになったのが最近では一番つらかったことです。

さて、コンサルティングファームで使われる思考パターンに「空・雨・傘思考パターン」というものがあります。これは

「空」：今日は曇っている
「雨」：雨が降るかもしれない
「傘」：傘を持っていこう

この思考パターンによって「びしょ濡れになる」といった問題を事前に予測し、問題に対処する解決策を生み出すことができます。「空」とはファクトを主観で認識すること、「雨」はファクト・経験に基づく仮説や解釈、「傘」とは判断や知恵のことをそれぞれ意味します。この推論プロセスは「演繹的推論(三段論)」と呼ばれ、原則原理、普遍的な前提や知識をベースにしています。演繹的推論と対になるのが「帰納的推論」であり、いくつかの具体的事例から、共通項を導き出し結論を求める推論です。それぞれの違いは「今日は雨が降る」を題材にすると以下なイメージ。

推論は得意不得意、そして時に難あり

演繹的推論は、自ら観察し、自ら事実を捉え、そして自ら解釈を導き、判断すること、つまり「自分でなんとかする」力です。そこには正しい知識と正しく考察する目、そして技量が試されます。例えば雨が降ることはわかっていても、「もしかしたら雷がなるかもしれない」「この雲の形状はよく雨が降る雲だから想定以上の雨が降るだろう」といったことはすべて知識を前提としています。

帰納的推論はファクトを集めたり統計の力が必要になり、「ファクトがなんとかする」力と言い換えてもいいかもしれません。天気予報が雨と言ってたはわかりやすく、よく天気を当てる友達が「今日は雨」と言っていたというのもデータの1つとして取り扱えるかもしれません。(余談ですが、子供の頃に聞いた「燕が低空飛行だったら雨が降る」っていうのはもう古い話なのか・・)

この2つの推論は向き不向きがあり、Aという場合は演繹的推論を使おう！Bという場合は帰納的推論が解決してくれるはずだ、とケースバイケースで使い分ける必要があります。あとは自分がどっちよりの思考を好むか？というのも大事で、例えば僕だとデータを扱う習慣がある時のドキュメンテーションや話グセは帰納的思考タイプ、市場分析やユーザヒアリング後は演繹的思考によりがちかなと。両者を棲み分けながら、今はどっちタイプの推論をしているんだろう？どっちがよりフィットするだろう？ということを意識的に心がけています。

雹が降ることを予想するには？

今日は雹が降るという推論をこの2つのフレームワークから導き出すのは難しいかもしれません。演繹法は雲を読んで雹が降る事象を導き出すのに十分な気象予報士学、帰納法は(例え天気予報で雹が降るアナウンスがあっても)、雹が降ることへの共通項を導き出すのに十分なサンプル・ファクトがない可能性があります(実務レベルだとない場合が多い)。こうした予想打にしない(普遍的でない振る舞い)結果やリスクを孕んでいる、ある種の不確実性をより高い精度で推測し、排除するにはどうしたらいいでしょうか？

実は、演繹法や帰納法につぐ第三の仮説的推論というフレームワークがあります。これは、結果から原因を仮説を考えていくアプローチです。このフレームワークが「見たことがない雲がある。これはきっとただの雨じゃないな。」と仮説立てることで、雹が降ることへの対策を考案するのに役立てることができます。「結果」を正しく捉えることができても、原因となる仮説を導き出すにはアイデア力・想像力が大事になります。

演繹法や帰納的法が線形的(AがBだからCである)なのに対して、仮説的推論は非線形的(AとBからCかもしれない)なので、始めのうちは難しいかもしれません。アイデアの検証や幅広い知識をつけながら徐々に鍛えられていく思考プロセスなのかなと思います。仮説的検証プロセスは前述通り、不確実性の高い事象をマネジメントすることに向いてるので、僕は普段PdMをやっているので、毎日のように用いる推論だし、他の職種や学生さんでも日々の中にある不確実性に立ち向かうために、今後より必要になってくるのかもしれません(手法とか鍛え方とかはいろんな本や記事があると思うので特に触れません)。

再三になりますがどのフレームワークも正しい・正しくないはないです。そういうのがあるんだね！使い分けが必要なんだね！◯◯さんはこういう思考してるね！ということだけでも、把握したり判断できればそれでいいように思います。

ちなみに天気予報は75％以上の確率らしいです。これからは毎日、明後日くらいまでの天気予報はしっかり確認したいと思います。100円に設定しましたが、部屋干しできる洗剤を買いたいと思います。