肌の匂いが変わってしまう前に
ずっとこの人とは友だちだろう
そう思っていた人ほど、今はもう会えないこの現象に何か名前はあるのだろうか?
『チワワちゃん』という映画の中で、こんな台詞があった
私の好きな漫画や、歌詞の中の登場人物はやたらと会えない誰かを思って、肌の匂いが変わってしまうことを気にしていた。
そんなに重要かな、それよりも大事なものありそうだけど…そもそも肌の匂いって何?
学生時代、私の頭の中は?が散乱していた。
大人になって、子どもと触れる機会が増え、ひとつ気づいたことがある。
人の匂いの変わる速度は、他のものに比べてうんと遅いということ
髪の伸びる速度や、子どもたちが言葉を覚えていく速度。それよりもうんと遅い。
少しの間一緒にいたくらいでは変わることのないその人の匂い。それを覚えるまでには時間がかかるし、忘れたと思っても同じ匂いを嗅げば遠い記憶をふと思い出したりする。
嗅覚をずっと頼りないと思っていた。視覚や聴覚に比べ、得られる情報は少なく感じた。
ごはんの前のいい匂いとか、花の香りとか、活躍するときは幸せで、なんだか能天気過ぎる気がした。
(私の解釈が能天気過ぎたんだと気づくのはずっと後の話)
科学や技術が発展した現代においても尚、時間が経過して変わった形や姿を見ることはできても、匂いだけはその人の場所に行かなければわからない。離れていても駄目。近くに行ってハグするくらいの勢いでないと分からない。
頼りないから、なくなりやすいから大切で。
変わりにくいけど、変化にかかる時間はゆっくりだけど、それでも確かに変わっていってしまうから
その前に。
その人がその人だと分かる間に、会いに来てね。
そういうメッセージが込められていたのかもしれない。
確かに今は、過去を記録して残しておく手立てが増えたけれど、写真も無かった時代、自分の記憶でしか過去を探せないとき、"その人の匂い"は今よりずっと大切だったのかもしれない。
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