【随筆】怒り


怒りという感情は最後に頼りになる感情だと思う。感情というより、情熱という方が正しいのかもしれない。

絶望して無力感に苛まれて、どうしようもなくなったときに。怒れる人は、踏みとどまれる人だと思う。疲労感のその先の疲労感のような、精神的な限界に対しても、怒りという感情を持ち出すことで、さっきまでの無気力感は嘘だったことになる。世界に対し、社会に対し、他人に対し、自分自身に対し、怒りを向けられるならまだ留まれる。そういうものだと思う。だから怒りは劇薬だと思う。

その劇薬を常習的に使うと、もちろん効果は薄れるし、慢性的な幻覚は現実と区別できなくなって、間違えてしまう。そういうものがテロとかにつながるのだと思う。

だから、怒っている人を見かけたり、態度のデカい人を見ると、気分が悪くなると同時に、少し心配になる。その幸福は幻覚だよって教えてあげたいけど、教えたところで具体的に幸せにする方法を知らない。


『怒る』という行動を目にするのも嫌に感じるのは、自分がおかしいのかもしれない。それに、その嫌という感情自体も自身の怒りからくるものだから、自分自身、だいぶ劇薬に侵されているのかもしれない。


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