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ヒーローになりたかった少年の唄2021⑪

ピースとハイライト

もう時効だろうから書くけど、僕は小学生の終わりくらいにはもうタバコを覚えてしまい、それ以降50歳手前の今日までほぼ毎日2箱くらいキツイ銘柄のタバコを吸い続けるヘビースモーカーなんである。

当時はどこの家でも屋内禁煙なんて聞いたこともないし、灰皿のない応接室や会議室なんて考えられない感じ。
禁煙パイポというハッカ入りの禁煙グッズは売られていたけど、それは吸えない環境にいる時に仕方なしに咥えるためのものであって、ホントに禁煙するやつなんてほとんどいなかった気がする。

中学生に上がると周りのみんなもフツーにタバコを吸い出し、クラスのまぁ半分まではいかないけど、3分の1くらいの子がタバコを吸ってるような時代。

女の子でも全てのクラスに何人かはタバコを吸う子がいた。

全体的にビーバップハイスクールとか湘南爆走族なんかの影響を非常に受けた荒れた校風だったので、風紀検査では、ロングスカートやボンタンと、改造カバン、剃りこみ、眉毛剃り、染髪に加え、タバコを隠し持っていないかの検査が校門のところで毎日のように行われ、ポロッとライターでも出てきたりしたら上着からズボンからバックの中まで入念にひっくり返されて、靴下のゴムにはさんでかくしたタバコを見つかりひっぱたかれて没収されたりする。

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そのうち隠しポケット付きの変形学生服が登場したりして、それが爆発的に売れたりもした。

それでも僕らは性懲りもなくどこかにタバコを隠してうまく学校に持ち込んでは、昼休みに学校裏の河原の陰に隠れてみんなで一服なんて感じだった。

その頃、電車の中では車輌によって禁煙車輌っていうのが始まったものの、駅の構内にはまだ至るところにモクモクと煙が立ち、線路のレールの上には無造作に投げ捨てられた大量の吸い殻がどの駅にも溢れていて、今思えばものすごい環境だった。

春色の汽車に乗って海へ連れて行ってよ
タバコの匂いのシャツにそっと寄り添うから~♪

清楚なお嬢様キャラの娘ですら、タバコの匂いのするシャツになんの文句も出ない、スモーカー達にとっては天国のような時代でもあった。

台風が去ると、学校裏の河原のグランドにある野球のバックネットが必ずぶっ倒れて、それが土手に引っかかり、ちょうどハンモックみたいな格好になる。

そこに寝転がって、台風一過の澄んだ青空を眺めながら仲間たちと一服した中学生の頃の思い出は、自分の中ではまさに青春そのものであり、今でも作曲していて、曲の中に青春の懐かしさを込めたい時にはよくその時の雰囲気をブレンドしている。

しかし、なぜかある時からやたらと世間でタバコが悪者になっていき、俺たちの青春だったタバコの素敵なパッケージには、ガンになるだの肺気腫が悪化するだのと、吸うやつは死ぬ覚悟で吸えと言わんばかりの警告文が本来のロゴよりでっかく印刷されるようになった。

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これは、一応芸術の端くれに携わる僕としては、デザイナーに対するテロのような下劣なものにしか感じられない。

ピースのあの平和の象徴のような素晴らしいデザインの下に、超ネガティブな言葉を羅列するなんて、芸術に対する冒涜だとしか思えない。
芸術をないがしろにすると、文化はどんどん荒んでいく。

タバコが悪者になって以来、新しく制作される色々なジャンルの芸術作品の質があまりにも劣化したと思うのは、ヘビースモーカーの僕だけではあるまい。

その昔の高名な素晴らしい文筆家や画家や漫画家、音楽家に映画監督、そんな人たちが皆タバコをくゆらせながら制作をしていたのは、単なる依存症なんかではない。

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喫煙時の脳作用として、芸術に関わるシナプスが活性化されることを体感でわかっていたからこそ、大御所たちはみなこぞってタバコを吸っていたのだということは明らかであり、多分iQOSあたりにはその作用がかなり少ないことは想像に難くない。

ウチの母親方の婆さまは、気管支ぜんそくの薬を吸入しながらタバコを吸う強者だったが、90過ぎてもピンピンして、頭脳明晰。
もしかしたら、それもタバコの薬効じゃないのかと僕は勝手に思っている。

それどころか、今の子供達が軟弱になっている大きな要因の一つに、周りの大人達が気を使って子供の前ではタバコを吸わなくなったことがあるんじゃないかとさえ思うことがある。

もちろん、そこに科学的なエビデンスなど一つもないが、天の邪鬼な僕の気性は、

「おい、今の科学なんてぜ〜んぶ金儲けのために都合よく歪められた偽物だぜ!バカじゃね〜んだから、信じるんじゃねぇぞ!!」

と、僕の心に万度囁くのだ。

昨今は受動喫煙を嫌がる人が多いので、あまり嫌煙家を敵に回したくはないが、当時180円とか200円とかだったタバコに莫大な税金をかけて600円近くにまであげたのなら、せめてドライブインとか駅やバス停なんかにその税金から、雨の当たらない空調の効いた素敵な喫煙所くらいは作ってもらいたいものだ。

コロナ禍で、今度は「酒」が少し悪者にされてきているようなニオイがする。

何年か後にタバコみたいに世間からしれ~っと知らんうちに駆逐されていくような時代が来ないことを祈っている。

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