自分の歴史を音楽と振り返る(14)2019〜レインボーパレードを歩く
話が多少前後するが、2019年、東京レインボーパレードに初めて参加した。緊張と熱気で通り過ぎたその時のことを回顧してみたい。
渋谷の街を歩いて〜TRPへ初参加〜
毎年4月下旬からの2週間をプライドウィークと称する虹色のお祭りをご存知だろうか。そのの目玉である「東京レインボーパレード(TRP)」に初めて参加したのは、当時LGBTQ×精神疾患・発達障害の自助会の運営をしていたことが縁で、LGBTQの活動をされている方と知り合いになったことがきっかけだ。それまでは、正直TRPなんて一部の人だけが参加するもので、自分のような日陰のゲイには関係のないものだと思っていた。それが、知り合った方がみな代々木公園を歩くと言うので、ちょっと勇気を出して私も歩くことにした。
TRPは、様々なテーマごとに分かれて人が集まり、列をなして公道を歩くというもの。コースは代々木公園から渋谷、表参道、そして原宿を通り代々木公園に戻ってくる。ちなみにこの年のパレードは参加者数が初めて1万人を超えたという。
代々木公園では様々なブースが出店したり、情報提供をしたり、ステージではいろいろなアーティストが歌い踊り盛り上げていた。有名なところだと、この年は青山テルマやm-floに清水ミチコ、そしてRYUCHELL(りゅうちぇる)が登壇していた。
さて私は、知り合いに医療従事者が多かったのと、私自身も精神保健福祉士の資格を持っていたので、医療従事者の集団(フロート)の中でパレードを歩くことにした。当日は晴れた春の陽気で、長袖にそれぞれのテーマのTシャツを着ている人が多かったが、うちらのフロートでは白衣を着ている人が多かった。各集団にはDJブースのついた車とそれに乗るドラッグクイーンたちがイケイケな曲とダンスでお祭りを盛り上げる。
開始時間を1時間以上過ぎてようやく自分たちの歩く番になった。渋谷公会堂(当時)、PARCO、タワレコ、神宮前交差点、明治神宮前といった渋谷の街を公道で堂々と歩くのはとても新鮮だった。歩道には虹色の旗を持った人、歩道橋から手を振る人、中にはビルの中(会議室?)から手を振っている人もいた。そうそう、小さな子を抱き抱えて一緒に手を振る人もいたし、外国の人も多かった。車椅子の人もいたなあ。「ハッピープライド!」とお互いに言いながら、こちらも手を振り返したり、ハイタッチをしたりした。
1時間強だっただろうか。パレードはあっという間で、代々木公園に戻ってきた時には、途中で半袖になったにも関わらず私は汗をかいていた。ゲイである自分を隠さずに人前で歩くのがとても緊張していたのだろう。そして、フロートの雰囲気が想像していたよりもあたたかで、歩道の人たちがみなハッピーそうに手を振ってくれることがうれしかった。自分もそのままでいいんだよと認めてくれたような気がした。家に戻ったら筋肉痛と疲れでダウンしたのもいい思い出。
翌年にもTRPに出ようと思ったがコロナ禍に。久しぶりに行こうと思った昨年も、一緒に歩く人が見つからず歩くのを断念。しかし久しぶりに雰囲気だけ味わおうと少しだけ代々木公園に行ったが熱気がすごくてすぐ退散してしまった。いつか誰かとまた歩いてみたいなあ、とほんのりと思っている。
Mr.children「Here comes my love」
さて、音楽の話だ。この曲は2018年に配信リリースされた。自分がLGBTQに関する活動をするときに思い浮かぶのがこの曲だ。この曲はドラマ「隣の家族は青く見える」主題歌で、ドラマの中でゲイカップルが登場している。その影響もあってどうやら脳裏に流れるようになったようだ。しかし、この曲の良さはそこではない。
全体的にゆったりとしたバラードだ。静かでちょっと無骨な退廃的なAメロには孤独を感じる。一旦落ち着いた後思いが溢れるようサウンドが強く変化し、祈りや叫びとなるBメロ、そしてサビの広がりに海原のそれを投影してしまう。その中には希望という一筋の光が見えるようだ。
ショートフィルムが公式よりUPされている。そこには、思いは距離を超え時間を超えるというささやかな奇跡が描かれている。
という感じ。今年は4月21日(日)にパレードがあるそうだ。参加する人も、参加できない人も、こういった祭りが苦手な人も、みな大きく包み込むような社会になればいいなと願っている。