風景のレシピ #1“眠たい海辺の町”| nakaban
序文
何もしたくない休日の昼下がり。僕はキッチンの小さな窓から外の風景を眺めていた。この数日、暗い灰色だった空にようやく青い色が生まれ、インクの染みのようにゆっくりと拡がりはじめていた。空の下は、息をひそめたようないつもの町。その稜線から突き出て、古い煙突が見える。来月解体されるその煉瓦の塔は、羽を休めに来た一羽の鳥に何かことづてをしているようにみえる。今、鳥のくちばしは水辺の方を向いている。海までそう遠くない汽水は、光をふくみながら美しくささめいていた。
食事を摂るこ