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すべてのひとに庭がひつよう|石躍凌摩

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庭師としての日々の実践と思索の只中から、この世界とそこで生きる人間への新しい視点を切り開いていくエッセイ。
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2022年11月の記事一覧

【連載】すべてのひとに庭がひつよう 第8回|場踊り|石躍凌摩

*** 第8回場踊り  日暮れも随分と早くなったものだと、すっかり暮れ果てた家路を辿っていると、何の変哲もない普段はひと気もない公園にひと集りができていて、何事かと見れば皆一様に、夜空に視線を注いでいる。どうやら月が、そうさせているらしかった。さっき月白(*1)から出たときに見た月が、果たして皆既月食のどの段階にあたるのか、月白へと向かう道にはすでに、赤々とした満月が夕空に浮かんでいるのを目にしていたが、ひとしきり話をしてから外へ出て見ると三日月のようになっていて、それが

【連載】すべてのひとに庭がひつよう 第7回|目ざましいものではなくてかすかなものを|石躍凌摩

*** 第7回目ざましいものではなくてかすかなものを  冷蔵庫から|甕を取り出して中を覗くと、その時々で違った香りが鼻腔をくすぐる。きょうのは美味しく漬かっていそうだと右手をさしいれて、そのしっとりとした糠の中から、一週間ほど前に仕込んでおいた人参を取り出してみれば、もとの色からすこし糠色に熟れて、きょうのは色味からしてもいい塩梅に思われた。糠を水で洗い流し、水気を切ってからまな板で切り分けてうつわに盛る、その手つきの二回に一回はつまんでいると、たまらなくなってきて冷酒に