【連載】すべてのひとに庭がひつよう 第2回|私という庭師のつくりかた|石躍凌摩
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第2回私という庭師のつくりかた(一)
かねてから、私はずっと何者でもなく、また何者にもなりたくはなかった。そのような私にとって、自己紹介というものは長らく、そうして今でも、至難の業である。いったい、何を語ればよいというのか。知らずに生まれて、気づけば生きていたというのに、この生のどこに、ひとは掴みどころを見出すのか──このような気分は、今となっては随分と鳴りをひそめているが、なおも私が何者でもないということは、この生の根本的な気分をなしている。
そうしてこれ