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星の味 │ 徳井いつこ

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日常のふとした隙間、 ほっとため息をつくとき、 眠る前のぼんやりするひととき。 ひと粒、ふた粒、 コンペイトウみたいにいただく。 それは、星の味。 惑星的な視座、 宇宙感覚を…
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星の味 ☆11 “大事の大事”|徳井いつこ

 「社会内存在」と「宇宙内存在」という言葉に初めて触れたのは、谷川俊太郎さんの本だった。  『詩人なんて呼ばれて』という本のなかで、谷川さんは、詩の比較において、同世代の茨木のり子さんを「人間社会内存在」、自分自身を「宇宙内存在」と位置づけていたのだった。  この二つの呼称は、すんなり呑み込めた。  人間は「社会内存在」であると同時に「宇宙内存在」である。  二重の在り方をしているのが、人それぞれの資質、傾向で、どちらかが強くでるということだろう。  芸術家においても、例外で

星の味 ☆2 ”人ではない”|徳井いつこ

 詩集は不思議だ。  ひらくたび、違う詩が目にとまる。  初めて読んだように沁みてくる。  ひらくそのときどきが、毎回、新しい出会いなのだ。  昔、クルド系イラン人の友人宅を訪ねたとき、詩集占いをしてくれたことがあった。羊や豆を煮込んだ夕ごはんを食べ、小さなグラスに何杯もお茶を飲んで、もうお腹いっぱい……とみんなが暖炉の周りに腰を下ろしたとき、友人は待ってましたとばかり分厚い詩集を取りだしてきた。  それはスーフィーの偉大なる詩人ルーミーのもので、ひとりずつ順番に本を手にと