星の味 ☆12 “向こうから来るもの”|徳井いつこ
人の記憶は、何でできているのだろう?
いつまでも消えない思い出がある。
瑣末な、どうでもいいような記憶がありありと残る。ある種の石ころが、引いていく波に連れ去られることなく、波打ち際に点々と残っていくように。
金沢の旅といえば、浮かんでくるのは、中華料理屋のテーブルだ。
町家を改造したそのお店はずいぶん繁盛していて、コップの水が置かれたきり、注文の皿はなかなか現れなかった。2時半を過ぎた遅い時間だったから、入れただけで安堵したのが、空腹も加勢してだんだん不安になって