マガジンのカバー画像

星の味 │ 徳井いつこ

12
日常のふとした隙間、 ほっとため息をつくとき、 眠る前のぼんやりするひととき。 ひと粒、ふた粒、 コンペイトウみたいにいただく。 それは、星の味。 惑星的な視座、 宇宙感覚を…
運営しているクリエイター

2024年6月の記事一覧

星の味 ☆12 “向こうから来るもの”|徳井いつこ

 人の記憶は、何でできているのだろう?  いつまでも消えない思い出がある。  瑣末な、どうでもいいような記憶がありありと残る。ある種の石ころが、引いていく波に連れ去られることなく、波打ち際に点々と残っていくように。  金沢の旅といえば、浮かんでくるのは、中華料理屋のテーブルだ。  町家を改造したそのお店はずいぶん繁盛していて、コップの水が置かれたきり、注文の皿はなかなか現れなかった。2時半を過ぎた遅い時間だったから、入れただけで安堵したのが、空腹も加勢してだんだん不安になって

星の味 ☆11 “大事の大事”|徳井いつこ

 「社会内存在」と「宇宙内存在」という言葉に初めて触れたのは、谷川俊太郎さんの本だった。  『詩人なんて呼ばれて』という本のなかで、谷川さんは、詩の比較において、同世代の茨木のり子さんを「人間社会内存在」、自分自身を「宇宙内存在」と位置づけていたのだった。  この二つの呼称は、すんなり呑み込めた。  人間は「社会内存在」であると同時に「宇宙内存在」である。  二重の在り方をしているのが、人それぞれの資質、傾向で、どちらかが強くでるということだろう。  芸術家においても、例外で