星の味 ☆1 ”誕生日の気分”|徳井いつこ
年があらたまると、一つ歳をとる。
お正月生まれの私は、わかりやすい。
子どものころはケーキ屋もレストランも閉まっていた。ラジオは春の海ばかり流している。焦った私は親に尋ねた。「今日は何の日でしょう?」
全国民がお祝いしているので、一個人の誕生日は忘れ去られる運命にある。なにしろ新年なのだ。
家の中も、そして街の風景も奇妙にさっぱりしていた。通りはきれいに片づけられ、人一人、犬一匹歩いていない。
世界を覆っている「日常」という蓋が取り外され、どこまでも続くからっぽの