見出し画像

膝伸展制限因子9選 理学療法 コラム編Part2

膝関節伸展制限因子
・鵞足、伏在神経
半月板(MM)、内側側副靱帯(MCL)
・半膜様筋、腓腹筋内側頭
・大腿二頭筋とLCL
・大腿二頭筋短頭と腓腹筋外側頭
・大腿二頭筋と関節包、腸脛靭帯
・坐骨神経、脛骨神経、総腓骨神経(脂肪組織に包まれるため)
・上内側膝神経、下内側膝神経
・膝伸展機構

今月は半月板と内側側副靱帯による膝関節伸展制限を深掘りします。

半月板の基礎解剖 (図1を参照にしながら見てみてください)

半月板は大腿骨顆の大きな凸面と脛骨の浅い関節面の緩衝材として適合性を良好にします。
役割は関節軟骨の潤滑、摩擦の減少、固有受容感覚の供給、関節包内運動の誘導補助などが挙げられます。
圧縮力を輪状にも吸収しますが内側半月板の後角の損傷があると輪状のストレスを吸収することが困難になると言われています。

前半月大腿靱帯および後半月大腿靱帯は外側半月板の後節と連結しています。
膝横靱帯によって内側半月板と外側半月板の前節は連結されています。
内側半月膝蓋靱帯および外側半月膝蓋靱帯はそれぞれ、内側半月板前節、外側半月板前節と膝蓋骨を繋ぎます。
内側側副靱帯の深層は、内側半月板の中節に付着します。
一方で外側側副靱帯は外側半月板に付着しません。
半膜様筋の一部は、後斜靱帯や後方関節包を介して内側半月板(後角)に付着します。また、43.2%の膝では、外側半月板にも付着することが報告されています。
膝窩筋も外側半月板に付着します。(諸説あり)

図1

内側半月板に付着する組織 まとめ
脂肪体
半膜様筋
大腿四頭筋
内側側副靱帯
内側半月膝蓋靭帯
内側半月大腿靭帯
冠状靭帯
膝横靭帯
など

MCLの 解剖学

簡単に、MCLは膝側方に位置するため基本は前額面上の安定性を担います。
膝伸展位で緊張し屈曲位では比較的緩みます。
(厳密には軸伸張を受けるので浅層前方は屈曲位で伸張し後方は伸展位で伸張されます)
深層は屈曲、伸展でそこまで伸び縮みしないとも言われています。
また大腿骨の後側方から脛骨前側方に付着するため、外旋で伸張します。
後方関節包の拘縮によりMCLが後方変位しているとMCLがより膝関節軸の後方を通るため、余計伸展制限になりやすいです。(図3)
後斜靭帯(POL)は内側半月板後節を介して半膜様筋と連結します


図2



図3


運動学

膝関節の屈曲と伸展では、脛骨の転がりと滑り運動が生じています。(図5.6)
特に転がり運動は屈曲の初期に発生します。
さらに屈曲を行うと、滑り運動を起こします。
この滑り運動に制限がある場合、膝関節の屈曲に伴い大腿骨と脛骨の後部でインピンジメントが生じるため、完全屈曲は不可能となります。
脛骨(凹面)が動く場合は転がりと滑りが同方向(図5)、大腿骨(凸面)が動く場合は反対方向に起こります(図4)。

転がりと滑り運動の発生比率は、内側で約1:1、外側で1:4となっています。
従って、膝関節の外側は内側に比べより大きな滑り運動が生じていることになります。
半月板の運動は、主に屈曲と伸展に伴う滑り運動が生じているときに起こります。
そのため一般的に外側半月板は内側半月板に比べ、より大きな運動が生じます。

図4


図5



図6

半月板の前方移動メカニズム(図1.4.5参照)

膝関節伸展に伴って、膝蓋骨を前上方へ牽引、後斜靱帯および半月大腿靱帯が緊張します
膝蓋骨を前上方へ牽引による内・外側半月膝蓋靱帯の緊張、膝蓋下脂肪体の前方牽引に伴う膝横靱帯の緊張が起こります
後斜靱帯および半月大腿靱帯の緊張による半月板の後方からの押し出すことで半月板が前方へ移動します

半月板の後方移動メカニズム(図1.4.5参照)

膝関節屈曲時に大腿骨顆部のロールバックに伴い膝蓋骨が下制します
膝蓋骨下制に伴って前方組織(半月膝蓋靱帯、膝蓋下脂肪体など)が弛緩します
さらに半膜様筋の収縮による内側半月板を後方に牽引します
(個体差がありますが、膝窩筋による外側半月板の牽引も起こります)
後斜靱帯および半月大腿靱帯の弛緩に伴う後方スペースの拡大により半月板が後方へ移動します

半月板の内外旋時の動態

内外旋時の運動は図1.6を照らし合わせるとわかりやすいです。
内旋のみ例にとると
外側半月膝蓋靭帯の付着部距離が近づくため緩み、半月大腿靭帯は緊張するため外側半月板は後方に移動します。


アプローチ

① パテラの動き、リフトアップ、周辺組織(脂肪体、半膜様筋)の硬さ
脂肪体や半膜様筋が硬いことにより前後に壁ができてしまいます。
そうなることで半月板の本来の動きを妨げるため、インピンジメント などを引き起こすことがあります。
<例> 膝関節伸展動作時
転がりと滑りに伴って半月板が前方に移動しますが脂肪体が硬く前方に壁ができてしまうと半月板が前方に移動することができずに大腿骨と脛骨間で挟まれて膝伸展制限が起こります。

パテラの動きで膝蓋上嚢や脂肪体、膝蓋支帯などの硬さをスクリーニングします。
上下の動きが少なければ膝蓋上嚢や脂肪体、左右の動きが少なかったりリフトアップができなかったりすると膝蓋支帯などの硬さを疑います。
膝蓋支帯の硬さがあると膝屈伸時に脂肪体が膝蓋支帯の下方を通過することができず、半月板の動きが制限されます。

② 機能不全
① の組織の硬さはないが、大腿四頭筋(特に広筋群)の機能不全によりパテラの上方への牽引ができない場合や脂肪体を前方に牽引できない場合、半膜様筋で半月板を後方に牽引できない場合も同様にインピンジメント を引き起こします

③ 滑走不全
機能不全と類似していますが広筋がしっかりと筋繊維方向に滑走することができないとパテラの動きを阻害するため同様の現象が起きます。
また前々回の記事同様、内側側副靱帯と周辺組織の滑走性が悪いと半月板の動きを阻害するため膝伸展制限が起こります。

④ 脛骨過外旋
正中位(本来の膝のアライメント、正常なスクリューホームムーブメント)で膝の屈曲、伸展が行えていれば上記の運動学で話した通り外側の方が半月板が動きます。
しかし、そもそものアライメントが過度に外旋していると、外側半月板の動きが少なくなる(本来動くはずのスペースがなくなる)ため、内側半月板が本来以上の可動性を要求されたり、インピンジメント を起こしたりします。

介入例 (初学者向けに簡単に)

① 膝周囲の硬さ② 機能不全③ 滑走不全
硬くなると半月板の動きを阻害する組織(脂肪体や後方組織)の柔軟性をとります。
パテラの可動性を上下左右、リフトアップ(パテラの外縁を押した際に逆側が浮きあが)でしっかりと出す。
大腿四頭筋やハムストリングスなどの滑走性を出した後に、しっかりと牽引できるように収縮させます。
初めはセッティングやレッグカールで徒手的にパテラを誘導するだけでも十分な治療になると思います。

④過外旋
外側支持機構を緩めて内側広筋などを鍛えまくります。
もちろん過外旋の原因をあげるとたくさんあるため少し雑に感じると思いますが、上記のことを丁寧に確認するだけでも介入効果があがると思います。

初学者ではない方は膝周囲から隣接関節の可動域や筋力、整形外科テスト、モーターコントロールなど様々な評価をして原因を突き詰めてくださいね(笑)
治療後は良いものの時間が経つと膝が伸びなくなったり、膝周囲が硬くなったり、過外旋が起こってしまう場合は雨漏れの床をひたすらに拭いている状態です。
着眼点は良く、二次被害が出ている部分は見つけられています。
根本の原因を見つけ出して雨漏れの天井の穴を埋めるように頑張りましょう!!

〜以上、月末理学療法士/そう でした〜
こちらのコンテンツは「巨人の肩の上」という言葉があるように、文献などを参考に臨床経験(失敗体験も含む)も交えて発信しています
またメディカルに完璧な正解がないことをひしひしと感じます
そのため、あくまでも自身の治療の〝引き出しの一つ〟にして頂けると幸いです

参考文献、書籍
Donald A.Neumann(原著者)PaulD.Andrew 有馬慶美 日高正巳(監訳者)筋骨格系のキネシオロジー2018

Ricard L.Drake etc(編集)グレイ解剖学2007


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?