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無職108日目 物乞う仏陀

石井光太著「物乞う仏陀」読了。
アジアで物乞いをして暮らす障害者について書かれたノンフィクション。
かなりハードな内容なので、読む人を選ぶかもしれない。

俺は、自分は旅なんてしないくせに旅行記がわりと好きで、たまに読むのだけれど、大抵は、「世界を旅して自分の小ささを思い知った。世界は広い!」みたいな結論で終わるものばかり。でも、この本を読むと、世界は広くも何ともないじゃねーか、と思ってしまう。見たいものだけを見て世界を知ったような気になっている旅行記なんて無価値だと感じる。ちょっと極端な感想だけれど、それくらい、この本の内容はハードだった。俺にとっては、ね。

舞台は、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、ミャンマー、スリランカ、ネパール、インド。地雷で手足を吹っ飛ばされたり、障害児を抱えて仕事を失ったり、ハンセン病で差別されたり、様々な理由で物乞いをする人たちが登場するけれど、一番ハードだったのは、インドのマフィア絡み。マフィアが赤ん坊を誘拐し、レンタチャイルドで金を稼ぎ、赤ん坊が五歳になったら足や腕を切断して物乞いをさせて稼がせる。レンタチャイルドを借りて物乞いをする人たちもマフィアによって手足を切断されたり、失明させられたりしていて、物乞いを強制され、稼ぎはほとんどマフィアに持っていかれている。けれど、マフィアも、好きでマフィアになった人はほとんどいない。ストリートチルドレンがマフィアの食い物にされ、そのまま構成員になっている。読みながら、悲しみや怒りの感情が沸いてくるけれど、そのやり場が無い。搾取しているマフィア側でさえ悲しみの過去を背負っているのだから。

救いなのは、著者が良くある正義感を振りかざしたりしないこと。かと言って、変に達観もしていないこと。見聞きしたものやことに対して、素直な感情を記してくれるので、読んでる側はだいぶ気がラクになる。少なくとも、俺はかなり助かった。事実を淡々と書かれるだけではつらすぎると思う。

ハードな内容ではあるけれど、物乞い=かわいそうな人、というステレオタイプな本ではなく、物乞いしながらも娼婦を買ったり、仲間同士でバカ話をしたり、みんな明るく生きようとしていて、人間の持つエネルギーを感じられる部分もある。とはいえ、やはりインドの内容がハード過ぎて、スッキリする読後感ではない。

興味のある方はぜひ読んでみてほしい。ただ、子を持つ親はインドのマフィア絡みの話には注意してほしい。本当につらい内容だから。

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