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公徳心(13)道徳性発達段階6-普遍的な倫理原理

道徳性判断基準の最終段階、段階6です。

段階 6 普遍的な倫理原理
法律が倫理的原理(正義、公平)に反している場合には倫理的原理に従うべきと考える。正義、平等、尊厳などの視点から、法と道徳の区別がつけるようになる。
研究紀要 第39号特集:習得・活用・探究型学力の育成と評価の理論@日本教材文化研究財団

法律を批判的に見るところまでは段階5と同じですが、その正しさを論理的包括性・普遍性・一貫性に訴えて、自分で選んだ倫理的原理に従う両親の決定によって決められるとのことです。

これは、カントの道徳法則の根本原理を示す標語「汝の意志の格率かくりつが、常に同時に普遍的な法則として妥当しうるように行為せよ」に通じます。

格率かくりつとは、行為の規則、論理の原則などを簡単に言い表したもので、自分の行為が基づく自主的な規則。自分だけに妥当する主観的な行動の原則である格率なので、社会的に相応しいとは限りません。上の標語は、その格率を道徳的か否かを評価するのに役立ち、利己的な道に陥らず、公益に資するものに導いてくれる考えです。

例えば、自分の行為が違法でなかったとしても、公共の利益に資するものではない場合、公益的な自己の倫理観を優先して、その行為を自制する。「違法じゃないからやっちまえ」的行動を制することができるのが段階5。

合法な行為が自己の倫理観に背くのであれば、違法であっても自身の倫理に見合った行動をするのも段階6。

日本のシンドラーと言われた杉原千畝すぎはらちうねはビザを発給し、何千人ものユダヤ人の命がホロコーストに奪われずに済んだ。

自分の格率は普遍的であると信じることができれば、大きな権力に支配されることなく、自分らしく行動できるようになります。公益的な行動で、自分の精神の安定を確固たるものにさせ、不安に苛まされない幸福を得られる。

カントの標語「汝の意志の格率かくりつが、常に同時に普遍的な法則として妥当しうるように行為せよ」は、自分にも社会にも大事な公徳心です。


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