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【レビュー】 久保不在でも成立する4-3-3へ 第31節 ソシエダ - アルメリア

3連勝中。ホーム。相手は最下位アルメリア。
簡単に勝てる試合は無いと分かってはいるが、勝ちの条件が揃っている。


チームコンディション

  • 2週間ぶりの試合

  • 久保は負傷明け

  • 現在6位

先週はコパデルレイの決勝戦があった関係で、前節からの間隔が空いた。CLにコパ、代表招集と超過密日程だった主力メンバーにとっては久しぶりの休養期間となった。



スターティングメンバー

23-24 ラ・リーガ 第31節 アルメリア戦

4-3-3のウイング問題

今季のソシエダの基本布陣は4-3-3だ。ワイドに開いた両ウイングが前を向いてボールを保持するところからチャンスメイクを行う。そのファーストチョイスは久保とバレネチェア。ここまでは問題ない。

困るのは久保バレネの交代後、あるいは不在時だ。
孤立しがちなソシエダのウイングにはスピードか突破力が求められる。オヤルサバルを置いた場合、本人は右WGを好むようだが、この点で物足りなさを感じてしまう。左WGに起用されるザハリャンにははっきり言って適性が無い。その他、下部から数人起用するもハマらず。
代役の不在が続いていた。
そんな中、頼りの久保が1月にアジアカップで長期離脱。冬のマーケットでスピードを武器とするベッカーを獲得した。そんな経緯がある。

ベッカーが主戦場とするのは久保と同じ右WG。
数試合に出場したのち、初めてスタートから4-3-3右WGで起用されたのは第23節ジローナ戦になる。その試合では相手CBのブリントをかけっこで圧倒するシーンを見せ、ソシエダにいなかったスピードタイプの存在を印象付けた。なお、この試合途中でハムストリングを傷めてしまったこともあり、その後はベンチからのスタートが多くなっている。
今回は久保が怪我明けということで、ベッカーにとっては自身2度目の右WGでのスタメン起用となる。



試合結果


シュート数とファウル数に注目

交代

  • ベッカー → 久保

  • バレネチェア → トゥリエンテス

  • オヤルサバル → アンドレ・シルバ

  • ザハリャン → パチェコ

退場

  • スベルディア (87')

得点

  • ベッカー (アシスト:ハビ・ガラン)

  • オヤルサバル (アシスト:ベッカー)



試合内容

ファウルの数

スタッツのポジティブな要素を赤で記した。
まずは珍しく17本ものシュートを放っていること。そして16のファウルだ。

ソシエダは本来ファウルが多い。これにはちゃんと理由がある。
攻撃時にボールをロストしてしまい相手ボールに切り替わった瞬間、いわゆるネガティブ・トランジションのタイミングで、高い位置からのカウンタープレスをかける。相手のビルドアップやカウンターの芽を最初に摘みつつ、あわよくばボールを奪ってまた攻撃に繋げようという意図だ。
ソシエダの試合ではここが最もスピード感があり、インテンシティが高い。接触も多くなる。突破されれば大ピンチとなるため、最終的にはタクティカルファウルも辞さない。必然、ファウルがかさむ

単にファウルが多いだけでは困り物だが、シュート数とファウル数がリンクして多い時は調子が良い表れとも言える。
以下に参考として、チャンピオンズリーグでの2試合をピックアップした。

ディフェンスラインからの丁寧なビルドアップをするチームでありながら、支配率が重要でないことも興味深い。


インテンシティの高さ

インテンシティ(プレー強度)の高さはオフェンス時にも表れていた。
ベッカーが持てばザハリャンがポケットを狙い、バレネチェアが持てばガランが内側のレーンを駆け上がる。ボールホルダーを味方が追い抜いていくシーンも頻繁にあり、攻撃のバリエーションと厚みが際立っていた。


左サイドの活性

後半開始早々のシーンをピックアップしてみた。
状況はスビメンディがセンターサークル付近から左SBの位置に流れ、CBからのパスを受けて前を向いたところ。

相手の6、7番がマークのズレを修正できていないタイミングで、バレネチェアが縦パスを受けようと下りてくる。18番のSBを引っ張ることで生まれる裏のスペースにガランとメリーノが走り込む。

スビメンディは浮き球をメリーノに送る。メリーノは釣り出した21番のCBを背負ってキープ。ガランとバレネの両方が使える状態からバレネを選択。
その後、バレネ→ガラン→オヤサバと繋がり、ゴール(オフサイド)となった。

このシーンの優れた点は多い。
まず攻撃に絡む人数が多い点。前後でポジションを入れ替えている点。
また、当たりの強いメリーノをポストで使ったり、クロスの得意なガランにセンタリングをあげさせたりと、個性が活かせている点も良い。

加えて見逃せないのは、ウイングがハーフレーンで基点になっている点だ。

ウイングがハーフレーンでも活きてくれば、ワントップとの距離感が良くなり、攻撃のパターンが増えることも期待できる。スピードや突破力に頼らなくても機能するはずだ。


久保不在でも成立する4-3-3へ

先述の通り、今季のソシエダはウイングがワイドで張ってボールを受ける形がとても多い。シーズン序盤はそれで結果が出ていた。だが、久保にマーク3枚をぶつけた第9節のアトレティコ以降、どのチームもここの対策を講じてきている
実際、久保はその試合までは5得点も挙げていたのに、以降は2得点だ。バレネチェアに至っては第5節までに3得点を挙げたものの、その後のリーガでは無得点の状況が続いている。
今季の得点力不足は9番問題だけに集約されるものではない。

今節のように複数人がサイドで絡む崩しが増えれば、久保不在時でも4-3-3は成立するし、久保がいる時には上位勢と渡り合える期待感もある。


休養は大事

そのためには、ただでさえ運動量の多いサイドバックと中盤の選手に、高いインテンシティが不可欠だ。そしてそのためにも休養は必須、ということをした再認識した一戦でもあった。

思えば昨年末あたりから退屈ともいえる試合が続いていた。
引いた相手を崩せない。シュートシーンがほぼない。ソシエダらしいプレッシングもない。メリーノの競り合い頼み。結果もイマイチ。
それら全てが過密日程に因る疲労から来るものだったのかもしれない。



雑感

あまり取り上げなかったが、ベッカーに関して少し。
この試合で最も活躍し、ゴールも決めたのでほぼ完璧だったと思う。ただ気になった点もいくつかある。

逆サイドでソシエダの攻撃が展開されていく際に中央への寄せが遅かったり、数的不利のオフェンス時に取る選択だったり、4-4-2に変形したディフェンス時のプレスだったり。連動にほころびが見られ、まだシステムに馴染んでない感が時々ある。
とはいえ、そのどれもが時間とともに解決される話であるし、伸び代という風に考えれば今後の楽しみにも思える。


次節

次節はアウェイでのヘタフェ戦になる。
バレンシアが未消化だった試合を含め2連勝で7位に上がってきたことで、もう余裕がない状況だ。

幸いなのは、もうラ・リーガ以外の試合がないこと。約1週間の休養を挟むということで、高いインテンシティを伴った勝利を期待したい。


次節のマッチレビュー


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