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[Climate Curation #96]オープンな情報と議論への期待:日本のGX政策@FT Moral Money Summit

以下の内容は2024年2月10日に配信したニュースレターClimate Curation #96と同じ内容です。今後継続的にメールとして受信を希望をされる方はtheLetter 、或いは Linkedin経由で購読頂けたら幸いです🙂。毎週土曜日にメールボックスにお届けしています。

こんにちは。新しく登録してくださったみなさん、ありがとうございます。直近1週間の気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の国内外のニュース・トピックをご紹介するニュースレターを配信している市川裕康と申します。継続して読んでくださっているみなさん、いつもありがとうございます。おかげさまで「Climate Curation」は現在theLetterにおいて570名を超える方に購読頂いてます。2023年秋にスタートしたLinkedinのニュースレターでは950名を超える方に登録いただき心より感謝いたします。*日本関連の英語記事をキュレーションしている英語版のJapan Climate Curation [購読者数約2,300人]もよろしければぜひ覗いてみてください。


【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

【1】「日本の脱炭素技術を海外に」モラル・マネー・サミット [2/8 日本経済新聞]

2月8日に東京都内で開催されたFinancial Time主催「FT Moral Money Summit JAPAN」に、ご縁があって参加する機会を頂きました。ESGやサステナビリティ経営に積極的に取り組む大企業、金融機関、機関投資家、起業家、コンサルタント、シンクタンクからの登壇者による合計18ものセッションがあり、参加者も約400名と、日本での初開催にも関わらず盛況で、とても刺激的な経験でした。

「アメリカでは政治的な文脈で「ESG=環境・ガバナンス・社会」へのバックラッシュがあり、日本にESG分野での活躍を期待する」という、FT「モラル・マネー」コラムニストのジリアン・テット氏からの発言が冒頭あったのが印象的でした。今年のS&P500の決算説明会ではESGについて言及されたのはわずか9回と2021年の156回から減少し、その代わりに「グリーン・トランジション」、「サステナブル投資」、「責任あるビジネス」、「トランジション投資」というような用語がほぼ同じような意味で使われ、試行錯誤が続いている様子が伺えました。

The photos taken at FT Moral Money Summit Tokyo by Hiroyasu Ichikawa

個人的に最も印象に残っていた場面として、経済産業省の吉田政務官が「日本の気候変動対策」をテーマに講演した際、モデレーターから「国際的な批判の声もあるが...」と振られた際のコメントでした。「日本のGX政策は圧倒的には支持を頂いていると認識している。(アンモニア混焼等に対し)一部の批判はあるものの、それらは現実問題に目を向けてない方からのものであるとの印象を持っている。」ときっぱりとお話されていた点に正直驚きました。午後のセッションでは独立系シンクタンクのCliamte Integrate代表平田仁子氏から現在のGX政策の方向性に対し懸念の声が挙げられる等、やはり多様な声はあるのは事実です。一方でまだ実証実験段階でもある難解な技術に関しては、私自身も十分に判断ができる知識・知見を持ち合わせてないことも悩ましい、と感じています。そんな思いもあり、午後のセッション後半の会場からのQ&A時間に、上記のことに触れた上で、手を挙げ、メディアの役割として分かりやすい深掘り解説コンテンツを期待する旨、希望を伝えてみました。自分自身も理解を深める努力をしつつ、「現実」を踏まえながら、どのような工夫やイノベーションが可能か、一人の市民として考えていけたらと思っています。以下はいくつかの関連記事・資料になります。

【2】GX債1.6兆円支援、日鉄の水素製鉄やホンダのEV電池開発 [2/5 日本経済新聞]

上記触れた日本のGX政策が国際的な信任を得られるか、という点において、注目しているのが来週2/14に発行が予定されている「クライメート・トランジション国債」です。

世界初「移行国債」船出、大手生保が投資検討-海外勢の動向焦点[2/8 ブルームバーグ]

2/5の日本経済新聞の報道に初年度1.6兆円の具体的な使途が紹介されていますが、この中にはアンモニア混焼等、国際的に疑念の目で見られている技術を除外し、水素製鉄等に重点を置いている点が印象的でした。ある意味国際的な動向を注視しながらの現実的な対応で、こうした点、政策担当をされる方のご苦労が伺えます。この点に関して更に深掘り分析をされている米在住の Walter JamesさんのニュースレターPower Japan最新号も、ご興味ある方はぜひご覧ください。

【3】EU、40年までに温室ガス90%削減を勧告 農業分野は後退 [2/7 ロイター]

欧州は2050年のカーボンニュートラル目標に向け、2040年までに温室効果ガス排出量を90%削減するという大胆な新提案を発表しました。政治的な反発もありそうで、6月のEU選挙の行方にも注目が集まりそうです。

【4】欧州がソーラーブームを輸入中。ほぼ誰にとっても朗報〜安価な中国製太陽電池がEUのグリーン約束を実現しつつある / Europe is importing a solar boom. Good news for (nearly) everyone [2/8 The Economist 🎁Gift URL]

EU圏では2030年までにソーラーパネル設置数を3倍にすることが目標に吸えられているとのことですが、驚いたのは昨年2023年を通じ、毎週原子炉1基分相当の太陽光電力容量が新規に設置されたそうです。安価な中国製のソーラーパネルに依存する状況には懸念や反発がありながらも、急速に再エネ化が推進されているようです。

【5】太陽光発電「終活」に難題 2030年代、廃棄費足りぬ恐れ [2/6 日本経済新聞]

日本経済新聞の調査報道として、太陽光発電の「終活」問題に対して分析が紹介されています。事業者は将来のパネル廃棄費を積み立てているものの、災害リスクが高い斜面にある設備は撤去コストが膨らみ、費用が不足する懸念があるとのことです。業界団体、自治体、起業、スタートアップ等でもこの問題に備える事例も見られますが、世界に先駆けて課題解決の取り組みが広がることを期待です。

*太陽光発電パネル、リサイクルどうなる? 大量廃棄へ備え急務 企業、自治体の動きは [2023/4/15 東京新聞]

【6】「国にはしごをはずされた」 再エネ出力制御急増 拡大の足かせに [2/10 朝日新聞]

再エネを導入すれば全てが解決するわけではなく、太陽光と風力による発電を一時的に止める「出力制御」というものがあるということを昨年学びました。本当に奥が深いと感じます。しかも驚いたのは23年以降は急増しているとのことです。

画像:朝日新聞

【7】「気候変動は疑似科学で危機は存在しない」は誤り 全く同じ記事が再拡散【ファクトチェック】 [2/5 日本ファクトチェックセンター]

昨年8月に拡散し、誤情報/偽情報として日本ファクトチェックセンターが分析した同じ内容が再度拡散しているとして、改めてファクトチェックがされています。この「何度も繰り返して拡散する傾向」を見るにつけ、気候変動の否定を強く信じ拡散する人が世の中には一定数いることが伺えます。

*約3分の1が否定論に傾倒 - 英国の若者の間で「気候変動は誇張」という意見が急増したのはなぜか [2/3 クーリエ・ジャポン]

*団塊の世代より若い男性のほうが「右傾化」 Z世代の男女間の溝が過去最大[2/8 クーリエ・ジャポン]

image: "A new global gender divide is emerging" [1/26 Financial Times]

【8】気候科学者、自身の研究を中傷した保守派作家に対する訴訟で100万ドル以上を獲得 [2/9 CNN]

著名気候科学者のマイケル・マン氏が、彼の気候研究を嘲笑した元学者とTVパーソナリティに対する名誉毀損訴訟において、100万ドル以上を獲得したと報じられています。気候変動科学者や専門家に対するSNS上等での誹謗中傷や攻撃は大きな問題とされてますが、今回の裁判結果が一定の抑止効果につながることを願ってます。

*マイケル・マン氏の書籍についての書評ブログ:「気候変動問題と向き合う際の羅針盤としての一冊、「The New Climate War(新しい気候戦争)」[22/1/24 日経COMEMO]

【9】【衝撃】トヨタ絶望市場。最高益の先の「落とし穴」 [2/10 NewsPicks]

🚗EV先進国ノルウェー・オスロでの現地取材を踏まえた動画コンテンツ、とても面白く、将来のEVシフトを考える上で参考になる内容でした。おすすめです💚

【10】続々と誕生する気候変動関連メディア・コンテンツ

上記NewsPicksさんの取り組みのみならず、英語圏では本当に驚くほどのスピードで気候変動メディアのコンテンツ、報道量が増えていると感じます。今週スタートしたものだけでもこちらの2つに注目しました。動画、音声等、専門家による知見や世界の様々な地域の現地レポート等、いろいろなアイディアやインスピレーションが得られそうです。ブルームバーグのコンテンツでは日本の上勝町のゼロウェイストセンターの様子も紹介されています[34:47~]


ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、同僚、ご友人、或いはSNS等でご興味ありそうな方に共有いただけたら嬉しいです🙂。

🌏Climate Curation 情報源 [気候変動・脱炭素・気候テック (climate tech ) 関連情報]:https://bit.ly/ClimateCuration_Info [ストック系情報 : 掲載数109]

🌏Climate Tech List ⚡ :https://twitter.com/i/lists/1611344400122253312

*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。▶お仕事お問合せフォーム

では、どうぞよい週末をお過ごしください🙂🙋
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org

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日経COMEMO/noteでの過去掲載記事


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