[Climate Curation #110]世界的な異常気象 / 世界の再エネ発電割合が30%超に
以下の内容は2024年5月4日に配信したニュースレター「Climate Curation #110」と同じ内容です。今後継続的にメールとして受信を希望をされる方はtheLetter 、或いは Linkedin経由で購読頂けたら幸いです🙂。毎週土曜日にメールボックスにお届けしています。
こんにちは。新しく登録してくださったみなさん、ありがとうございます。直近1週間の気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の国内外のニュース・トピックをご紹介するニュースレターを配信している市川裕康と申します。継続して読んでくださっているみなさん、いつもありがとうございます。おかげさまで「Climate Curation」は現在theLetterにおいて620名を超える方に購読頂いてます。2023年秋にスタートしたLinkedinのニュースレターでは990名を超える方に登録いただき心より感謝いたします。*日本関連の英語記事をキュレーションしている英語版のJapan Climate Curation [購読者数約2,600人]もよろしければぜひ覗いてみてください。
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】SusHi Tech Tokyo 2024 Global Startup Program (東京都主催)に参加してきました。
昨年は「City-Tech Tokyo」という名前で有楽町の東京フォーラムで開催された国際的なスタートアップイベントが、今年は「SusHi Tech Tokyo 2024 Global Startup Program」と名称が新たになり、5月15日と16日の2日間に渡って東京ビッグサイトで開催されました。昨年の様子はClimate Curation でもレポートしましたが、気候テック関連の国内外の起業家・投資家も数多く集い、とても刺激的な機会でした。そんな経緯もあり、今年も参加して会場を巡ってきました。
「SusHi Tech」はそもそも「Sustainable High Tech」の略で、4月27日から5月26日にかけて東京都が国内外から自治体関係者、投資家、起業家を招き、「2050年の東京を体感できる①「ショーケースプログラム」②アジア最大級の「グローバルスタートアッププログラム」、③ 五大陸のリーダーが集う「シティリーダーズプログラム」を開催する一連の巨大イベントになります。私が今回参加したのは②になります。
150名を超える起業家、投資家、専門家らによる47ものセミナーやパネルディスカッション、昨年の328社から430社に増加した出展ブース、世界43の国/地域、507 社の応募の中から選抜されたスタートアップ20社によるピッチコンテストが主な構成となっていました。
いくつかハイライト・感じたことを箇条書きで書いてみたいと思います。
1️⃣Sustainable、Impact、脱炭素、環境・エネルギー関連の国内外のスタートアップ、起業家、投資家が数多く参加する巨大ミートアップの様相。「気候テック / Climate tech」という言葉を国内で目にする機会はまだ少ないものの、大きなトレンド、国内外のトレンドの様子を伺う上でとてもよい機会でした。
2️⃣エッジの効いたテーマも
*『2024年の炭素除去の状況:新興リスクとアーリーリワード』
2日目の朝一番の会場内の最も大きなスペースで行われたのは炭素除去(Carbon Dioxide Removal)をテーマにしたセッションでした。海外においてはこの分野は昨年くらいからとても注目が集まっている分野であるものの、国内での取扱はまだこれからということを感じました。「CDR」だけでなく、「DAC(Direct Air Capture)=直接空気回収技術」、「CCS / CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)=二酸化炭素の分離・回収・貯留・利用技術」、「ETS(Emission Trading Scheme)=排出量取引制度、「カーボンクレジット」等、専門用語も数多く繰り広げられる中、もっと知見やリテラシーのキャッチアップが必要なのではないかと思いを新たにしました。
*参考:大気中の炭素を吸引する世界最大のプラント「マンモス」が始動 アイスランド [5/9 CNN]
*『日本から世界へ: イチゴ植物工場が生みだす200兆円産業』
アメリカでいちご植物工業を手掛けるOishii Farm 共同創業者&CEOの古賀大貴氏が登壇。4月にカナダのバンクーバーで開催のTED2024でも登壇された様子を先日オンラインで視聴し、その革新さとスケールに度肝を抜かれていたのですが、今回は創業秘話や今後の展望について詳しく話を伺うことができました。前列に座っていたことで特別に日本では手に入らないいちごを試食することができたのですが、本当に甘くてびっくりです。日本の技術が世界に広がるという点で、とても希望を感じられる取り組みで、今後の更なる展開を楽しみにしています。
*日本のイチゴが大ヒット、アメリカで脚光の200億円調達ベンチャー。「世界で一人勝ち」の理由 [5/8 Business Insider Japan /Yahoo!]
3️⃣ピッチコンテスト「SusHi Tech Challenge 2024」
数多くの応募企業の中から最優秀賞に選ばれたのは、未利用資源を発酵・蒸留してエタノールや様々な発酵原料を開発・製造する株式会社ファーメンステーションCEOの酒井里奈さんでした。起業前からご縁があって以前からご活躍を伺っていただけに、発表の瞬間を会場で目にして、とても嬉しかったです。おめでとうございます🚀🎉
4️⃣会場のあちこちでの様々な出会い
何より印象的だったのは会場内のブースやフロアで出会う様々な方との出会いでした。コロナ禍以来何年ぶりに出会う業界の知り合い・友人、お世話になった方、雑誌やメディアで存在を知っていた起業家や識者など、イベント会場特有の高揚感の中での会話はとても刺激的なものでした。Climate Curationのニュースレターを読んでくださっている方にもお目にかかることができて、とても嬉しかったです🙂。
【2】2040年脱炭素戦略を年内策定 首相指示、電力需要に対応 [5/13 日本経済新聞]
今週は「GX実行会議の開催」、「エネルギー基本計画の策定へ向けた議論のスタート」など、気候変動関連の政策的な動きがあり、ついていくのが大変と感じる程でした。様々なメディアが解説記事、コラム、社説等で取り上げていますが、気になったものを以下いくつかピックアップしてみます。
【3】第11回GX実行会議提出資料 [5/13 内閣官房]
【4】脱炭素を加速できるか エネルギー基本計画改定の焦点 [5/15 NHK 時論公論] *NHKプラス見逃し視聴( 5/22(水) 午後11:40迄)
【5】脱炭素、日本が問われる「多様な道筋」の中身 - 編集委員 安藤淳氏 [日本経済新聞]
「多様な(現実的な)道筋」という言葉が使われている背景の解説、石炭火力の早期の全廃の難しさ、「ゼロエミッション火力」への依存が避けられない現実、高まるCO2回収・貯留への期待等について書かれています。
"「多様な道筋」という言葉は、日本が議長国を務めた23年5月の「G7広島サミット」首脳宣言に明記された。「現実的な道筋」とも言い換えられる。それまでも日本政府関係者がよく口にしたが、サミットのお墨付きを得て、頻繁に登場するようになった。"
【6】生成AI“急速普及”電力需要が増加?どうなる今後のエネルギー [5/15 NHK]生成AIの急速な普及が電力需要に影響をもたらす様子が紹介されています。
【7】マイクロソフトのAI推進が気候変動目標を阻む - 炭素排出量が30%急増 [5/16 Bloomberg Green *🎁Gift URL]
マイクロソフトの排出量は2020年以来既に30%増加し、主にAIへの投資により2030年までにカーボンネガティブになるという目標が危機に瀕していると報じられています。
【8】排出量取引、年内にも制度大枠 企業規模や業種別指針 [5/17 日本経済新聞]
政府は2026年度に大企業の参加を義務づける排出量取引制度の大枠を年内に固めるとのこと。炭素に価格をつけ、排出量の過不足分を企業間で売買できるようになります。経済界は長く難色を示してきたものの、国際的な脱炭素の潮流を受けて態度を変化させているようです。制度設計では公平性の担保が重要となり、排出削減は気候変動対策のみならず、企業戦略の中心にもなっていると指摘されています。
【9】講演録:Journalistic Leadership in The Age of Climate Change ( 気候変動時代におけるジャーナリズムのリーダーシップ - ヴォルフガング・ブラウ氏)
こちらはオックスフォード気候ジャーナリズムネットワークの共同設立者であるウルフギャング・ブラウ Wolfgang Blau 氏による講演のアーカイブ動画になります。気候変動をテーマに報道に取り組むフェローシップをこれまでに約500人輩出され、この分野の取り組みを牽引するリーダーのお一人です。ニュースルームと一般市民の間の気候リテラシーを向上させること、気候問題の効果的なコミュニケーションの必要性についてお話氏ています。メディア関係者の方にとって参考になればと思いピックアップしてみました。
以前に御本人許諾の上翻訳した講演録も併せて紹介させてください。
【10】全米の保険会社が気候変動ショックから資金を流出させ、住宅所有者は損失を被る [5/13 New York Times *🎁Gift URL]
上記の講演では、気候変動を切り口とした報道が今後ビジネス、農業、スポーツ、文化、政治、安全保障等、様々な分野で当たり前になる、と語られています。以下の記事とニューヨーク・タイムズの人気ポッドキャスト「ザ・デイリー」のエピソードでは、アメリカ全土で頻度と激しさが増しつつある気候変動による台風、洪水、山火事、ハリケーン等の影響で、住宅保険に入ることができない世帯が増えつつあるということが報じられています。日本の報道でも「災害多発で保険会社が撤退 料金も高騰 アメリカで進む異常事態[2023/12/15 NHK]」と取り上げられていますが、影響が全米に深刻なレベルで広がっている様子が伺えます。
冒頭触れた「SusHi Tech Tokyo」においては気候テックの期待溢れるイノベーションの話が中心で、今にして思うと報道で話題になっていた「GX戦略」、「エネルギー基本計画」等に関してはほとんど見聞きする機会はありませんでした。
気候変動がもたらす脅威と課題、そして解決策。今後もバランスを意識しながらニュースレターを通じてお届けできたらと改めて思います:)
ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、同僚、ご友人、或いはSNS等でご興味ありそうな方に共有いただけたら嬉しいです🙂。
*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。▶お仕事お問合せフォーム
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市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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