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[Climate Curation #126]異常気象と気候変動:報道の転換点と次世代エネルギーの台頭

以下の内容は2024年9月7日に配信したニュースレターClimate Curation #126と同じ内容です。今後継続的にメールとして受信を希望をされる方はtheLetter 、或いは Linkedin経由で購読頂けたら幸いです🙂。毎週土曜日にメールボックスにお届けしています。

こんにちは。新しく登録してくださったみなさん、ありがとうございます。直近1週間の気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の国内外のニュース・トピックをご紹介するニュースレターを配信している市川裕康と申します。継続して読んでくださっているみなさん、いつもありがとうございます。おかげさまで「Climate Curation」は現在theLetterにおいて700名を超える方に購読頂いてます。2023年秋にスタートしたLinkedinのニュースレターでは1,040名を超える方に登録いただき心より感謝いたします。*日本関連の英語記事をキュレーションしている英語版のJapan Climate Curation [購読者数約2,800人]もよろしければぜひ覗いてみてください。


【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

【🙋】先週のニュースレターの中でも触れた『メディアにおいて異常気象と気候変動の関係性をもっと報じるべきではないか』という課題に対し、今週は数多くの関連性を指摘する報道に触れることができました。8月が終わり、月をまたいで9月になったことで、夏の異常気象(猛暑日、熱中症、台風、ゲリラ豪雨)を振り返り、気象庁、コペルニクス気候変動サービスなどからも分析結果が公表されたことで、報道のきっかけも多かったように感じます。
ふと思ったのは中世ヨーロッパなどで「地球は丸い!」ということを多くの人に知ってもらうのと同様に、「異常気象は気候変動と関連性があります!」ということを伝えることがどれだけ難しいか、また長年取り組まれている研究者や専門家や活動家の方々がいかに継続的に警鐘を鳴らされているか、ということを感じます。3年近く前の映画ですが、Netflixの「ドント・ルック・アップ」はまさにそのようなテーマを軸に製作され、Netflixの歴代2位の視聴回数を誇る映画となってます(約1.7億回以上)。国内ではほとんど知られてないのはとても残念です🥲
気候変動、科学、メディアに社会がどう向き合うかを問う痛快コメディ映画〜「ドント・ルック・アップ (Don't Look Up)」[2021/12/25 日経COMEMO / note]
来年以降、気候変動に関するキャンペーンや啓発活動を行う際にはこの8月末から9月上旬というタイミングはとても効果的なのではないか、と感じました🤞🙂
なお、気象庁の発表を受けた異常気象の報道は盛り上がったものの、昨日報道されたEUの気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」による発表は地味な報道が多いと感じました。国内報道では文字情報のみので短尺のものが多い一方、欧州、インドの報道ではコペルニクス気候変動サービスへの取材も交え、グラフも交え、事態の深刻さ、今後の見通しについて深堀りがされています。
最後に、「で、どうする。何ができる?」の視点に関する報道・情報も圧倒的に必要と感じます。今後更に意識していきたいと改めて思いました。
【1】世界の平均気温 8月は去年に並んで1940年以降で最高に [9/6 NHK]

"先月の世界の平均気温が、8月としては去年の8月に並んで最も高かったことがEU=ヨーロッパ連合の気象情報機関の分析で分かりました。これはEUの気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」が6日、発表したものです。"
*北半球の夏が最も暖かく、2024年の暑さ記録を更新へ - 6月から8月にかけての気温は、産業革命以前のレベルを1.5℃上回った[9/6 Financial Times]

"地球観測機関コペルニクスの発表によると、6月から8月にかけての世界全体の平均気温は16.8度で、1991年から2020年の平均気温を0.69度、1850年から1900年の産業革命前の気温を1.5度上回った。"

image credit: EUの気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス

異常気象「最も暑い夏」2024 猛暑や大雨 温暖化の影響はどの程度 ?[9/3 NHK]
経験ないような台風…“背景に気候変動”分析結果 [9/2 日テレnews]

【2】VWが初の独工場閉鎖検討 誤算のEV化、中国台頭響く [9/3 日本経済新聞🔏]
気候変動対策の一つとして注目されているEVシフト。昨年から今年にかけて「EV失速」「ゆりもどし」などとも報じられてますが、今週のVWの苦境を示すこちらのニュースは驚きでした。ドイツを代表する自動車メーカーの今後の動向がとても気になります。

【3】燃料電池、水素、EV生産縮小... トヨタ「マルチパスウェイ」戦略の今後
ハイブリッド車の躍進と中国&東南アジアでのシェア低下など、全体像を把握するのは難しいと感じつつも、日本経済の柱としての自動車産業の行方がどうなるか、こちらも目が離せない大事なテーマ。
*BMW、28年に燃料電池車販売 トヨタと水素で全面提携 [9/5 日本経済新聞🔏]
*トヨタ、水素30年の計 BMW全面提携で欧州攻略 [9/5 日本経済新聞🔏]
*トヨタ、EV世界生産3割縮小 市場減速で26年100万台 [9/7 日本経済新聞🔏]
【4】【#気候テック】 資金調達の課題顕在化で失敗するクリーンテック企業が増加〜金利上昇、資金調達競争、連邦政府支援の遅れがセクターが直面する問題の一因に [9/3 Financial Times]
クリーンテック企業が資金調達に苦戦し、破産や事業縮小が相次いでいるとFinancial Timesが報じています。最近の破綻した企業として「バッテリー新興企業のMoxion Power」「住宅向け太陽光発電設備の米サンパワー」が挙げられています。高金利や連邦支援の遅れが原因で、スタートアップから商業化への移行が困難とのこと。この「ミッシング・ミドル」問題は、資本集約的なクリーンテック分野に特に影響が大きく、再生可能エネルギー成長や炭素削減目標達成に支障をきたす可能性があるとのことです。

【5】クリーンエネルギーの次の1兆ドルビジネス - グリッドスケールのバッテリーがついに離陸 [9/1 The Economist]

グリッドスケール(電力網用蓄電池・系統用蓄電池 )のストレージは、急速に進歩しているとして、価格低下と新技術により、2040年までに市場規模が1〜3兆ドルに成長する可能性が指摘されています。中国メーカーが支配的ではあるものの、「太陽光発電が15年かかったことを、電池は5年でやってのけた」、イノベーションと競争が世界的な発展を促進する、と前のめりな記事。

image credit: The Economist

【6】ペロブスカイト太陽電池に高まる期待 - 軽量化が進展、 窓・壁面一体型も [9/4 自然エネルギー財団]
ペロブスカイトを含む新しい技術による太陽光パネルの軽量化と用途の拡大に焦点を当てて、技術開発の動向、性能やコストの比較、新たな用途や先進事例をまとめた自然エネルギー財団によるレポート。太陽光発電の新技術はコストと耐久性の点で共通の課題を抱えています。新技術のさらなる普及に向けて課題を整理し、解決策とロードマップを提示したとのことです。
以下のような大量生産を見越した動き、関連書籍の出版なども注目です。

【7】排出量取引の価格に上下限 実効性と負担配慮、両にらみ [9/3 日本経済新聞🔏]
【🙋】先日開催されたカーボンプライシング専門ワーキンググループ(第1回)[ 会議資料 / YouTubeアーカイブ ]を受けて、記事が掲載されていますが、今ひとつ分かりにくいこのテーマ。以下のまとめ記事に記載のある通り、ワーキンググループでは鉄鋼・石油・化学・電力業界などの「排出削減が特に難しいとされる(hard-to-abate)業界団体からの「緩い制度」を求める切実な声が窺えます。
政府のGX実行会議。企業の自主的排出量取引とした「GXリーグ」を早くも修正。「GX推進法」改正のWG立ち上げ。目標設定など義務化の方向へ。産業界は軒並み「緩い制度」要望(RIEF)[9/4 一般社団法人環境金融研究機構(RIEF)]
"政府のGX実行会議は3日、「GX実現に向けたカーボンプライシング専門ワーキンググループ(WG)」の立ち上げ会合を開いた。現在、GXリーグとして導入している、企業の自主的な目標設定に基づく試行的な排出量取引が実質的に機能していないことから、CO2多排出企業の参加・目標設定の義務化を盛り込んだ法改正を目指す。初会合では、電力業界が「脱炭素への移行期に配慮した制度設計が重要」「GXに伴うコストは、広く社会全体・国民全体 で負担すべき」等と主張したほか、鉄鋼業界も「脱炭素化に伴うコスト増を社会全体で受容する仕組みが必要」等と、脱炭素の取引コストを消費者等に転嫁する制度化等を求めた。"

【8】気候対策「自国は強化を」8割 日本「わからない」多く 国連開発計画77カ国調査 [9/1 毎日新聞🔏]
"今回の調査結果について、気候科学の専門家でメディアを通じた情報発信を続ける東京大の江守正多教授は「あなたの国で気候変動対策に最も影響を与えたのは誰か」との設問で、日本では50%以上が「わからない」と答えた点に着目した。世界全体では11%だった。"
【🙋】国ごとのデータは国連開発計画の特設サイト「https://peoplesclimate.vote/」から簡単に調べることができます。以下は試しに世界平均、アメリカ、英国、日本のデータを抽出したものです。日本の回答からは気候変動について考える頻度が低いことが示されています。また、気候変動対策に最も影響を与えているのは誰か、という問いに対しては日本の50%が突出していることが窺えます。欧米では「政府」「キャンペーン実施者/アクティビスト」が多く選ばれています。

【9】「コメ不足」だけじゃない。リンゴにミカンも…気候変動時代の「食料不足」、専門家に聞く乗り越え方 [9/6 Business Insider Japan]
お米だけに限らず、今後の食料不足に備えるための必要な心構えが専門家の取材を踏まえ長尺で詳しくまとめられています。
解決策の例:高温耐性品種の開発と普及 / 栽培作物の転換 / 栽培方法の工夫 / 高齢化対策と温暖化対策の一体化 / 国際的な資源管理と協力 / 食料供給の安定化に向けた法整備 / サプライチェーン全体での情報共有 / 地域活性化と循環型生活の推進 / 企業の取り組み / 柔軟な対応力の育成:

【10】気候テック・スタートアップは希望の語り手になりうるのか? Media is Hope メディア向け勉強会開催報告 [8/9 Media is Hope]
8/7にMedia is Hope主催により開催された #気候テックxメディア イベントのレポートを書かせて頂きました。当日は短い時間ではありましたがとても密度の濃いプレゼンテーション、議論がかわされました。その雰囲気、議論の様子が少しでも伝わっていれば嬉しく思います。


ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたらSNSなどで「いいね」や「シェア」をお願いします 🙇‍♂️🙂[ハッシュタグ: #ClimateCuration ]。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです🙂。


*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

では、よい週末をお過ごしください🙂🙋
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org

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