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[Climate Curation #95]横連携、ポジティブ&解決策提示型に期待〜気候変動とメディアの可能性

以下の内容は2024年2月3日に配信したニュースレターClimate Curation #95と同じ内容です。今後継続的にメールとして受信を希望をされる方はtheLetter 、或いは Linkedin経由で購読頂けたら幸いです🙂。毎週土曜日にメールボックスにお届けしています。

こんにちは。新しく登録してくださったみなさん、ありがとうございます。直近1週間の気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の国内外のニュース・トピックをご紹介するニュースレターを配信している市川裕康と申します。継続して読んでくださっているみなさん、いつもありがとうございます。おかげさまで「Climate Curation」は現在theLetterにおいて550名を超える方に購読頂いてます。2023年秋にスタートしたLinkedinのニュースレターでは950名を超える方に登録いただき心より感謝いたします。*日本関連の英語記事をキュレーションしている英語版のJapan Climate Curation [購読者数約2,300人]もよろしければぜひ覗いてみてください。


【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

【1】気候変動とメディアに関しての対話の可能性 [note/日経COMEMO]

1月31日に開催された「気候変動メディアシンポジウム」(主催:一般社団法人Media is Hope / 後援:スローニュース株式会社 会場:スマートニュース)に参加する機会を得ました。気候変動について様々なメディア、国連機関からの登壇者、気候科学者、コンサルタント等が集い議論する機会そのものがとても珍しく貴重な機会と感じたこともあり、イベントの様子をnoteにてレポートしてみました。

私自身も「気候変動とメディア」というテーマでこのニュースレターをほぼ2年続けているのですが、国内での気候変動・脱炭素を巡る情報の量や質、切り口等の観点において、今後もっと盛り上がっていくのではないか、という希望を感じられるひとときでした。記事の中に当日の会場の様子の写真も数多く掲載したのでよろしければご覧いただければ幸いです。

また、当日はMedia is Hope AWARD(気候変動やSDGsといった社会課題解決へ貢献するメディア / ジャーナリストの功績を讃える賞)の発表も行われ、様々なメディアやジャーナリストの取り組みを知る機会にもなりました。

Media is Hope AWARD 2023下半期・年間賞を発表!! - 気候変動やSDGsといった社会課題解決へ貢献するメディア / ジャーナリストの功績を讃える賞 [2/2 Media is Hope / PRTimes]

もう一つ、印象的で、多くの方に共有したいと思ったのが米Covering Climate Nowという気候変動の報道を強化する国際報道キャンペーンの共同設立者であるマーク・ハーツガード氏からのビデオメッセージです。約12分のメッセージの中には国内メディア関係者への期待、気候変動対策に効果的な技術・解決策を提示するソルーション・ジャーナリズムの提言等が込められていました。YouTubeに既に動画が公開されているので共有させていただきます。

*関連記事:気候変動をどう報じるか メディアに課題、米ジャーナリズム誌編集長 [2023/9/14 朝日新聞デジタル]

【2】遊ぶプレーヤーの意識を改革 - 次々とヒット、「環境ビデオゲーム」が世界で注目されている理由 [2/1 クーリエ・ジャポン]

「気候変動をどう報じるか」という点で興味深いとと思った取り組みがこちら。ゲームです。ゲームは今では世界で30億人が参加するメディアであり、楽しみながら気候変動の現状・リスクを学び、解決策をコミュニティの仲間で模索するというような可能性がとてもありそうです。

例えば南アフリカのモバイルゲーム『Terra Nil』は、汚染された土地や干上がった川などに、それぞれ毒素除去や水ポンプ設置などの異なる対応をすることで、土地の生態系を回復するという内容です。厳しい条件下で風力発電や潮力発電などのクリーンなインフラを建設する場面もあり、ゲームをしながらそれらの新しい技術についても学べるしくみとのことです。2023年に公開されると、1週間で30万人以上がプレーする人気作品となり、数々の賞にノミネートされた実績があるそうです。2022年のイェール大学の研究者がアメリカのゲーマー2,000人以上を対象に気候変動に関する意見を調査したところ、およそ5人に1人が、ゲームのプレイやストリーミングを通じて気候変動について見聞きしたと答え、8人に1人が、学んだことをもとに実生活で行動を起こしたとの調査結果も。

【3】アダム・マッケイ(Netflix映画「Dont't Look Up」監督)とレイン・ウィルソンが「ゲーム・オブ・スローンズ」のパロディビデオを公開、#ImWithScienceキャンペーンを実施 [1/26 Variety]

こちらも気候変動とコミュニニケーションについて。気候科学者を主人公にした気候変動映画として海外において話題になった「ドント・ルック・アップ」監督であるアダム・マッケイ氏が手掛けた4分間のパロディ風刺動画。人気ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」に登場していた実際の俳優が出演している点、気候科学者の発する警告に耳を傾けるべき、という啓蒙メッセージとしてとても注目しました。

【4】2024年にのぞんで 地球温暖化を止めるために インタビュー 江守正多・東京大未来ビジョン研究センター教授 [2/2 毎日新聞]

気候科学者の江守正多氏からは「気候変動対策としての化石燃料からの脱却に向けた合意が進むものの、その実現への道は依然として難しく、全世界的な温暖化防止と不公正の解消に向けた挑戦が必要」とのメッセージが掲載されています。

【5】世界クリーンエネルギー投資、23年は過去最高-ネットゼロには不十分 [1/30 ブルームバーグ]

ブルームバーグNEFが発表したリポートによると、昨年のクリーンエネルギー関連投資は17%増の約1兆8000億ドル(約265兆円)で、これには、再生可能エネルギー導入や電気自動車(EV)購入、水素製造システムの構築、その他の技術導入への投資が含まれるとのことです。

image: BloombergNEF

国別に見ると中国の存在感の大きさが伺えます。中国の投資規模は日本の約21倍、米国は9.5倍の規模ということが分かります。

image: BloombergNEF

【6】脱炭素化: ストックとフロー、豊富さと希少性、ネット・ゼロ(Decarbonization: Stocks and flows, abundance and scarcity, net zero) [1/31 Nat Bullard]

気候・エネルギー分野の専門家でインフルエンサーでもある Nat Bullard 氏(元ブルームバーグNEF)による、毎年恒例のプレゼンテーションスライドが公開されました。全200ページに渡り、エネルギー移行の資金・投資、再エネ技術導入、バッテリー、EV、森林伐採等、様々な分野のデータ・グラフが満載です。日進月歩で進化しているこうしたクリーン・エネルギー関連技術の最新動向を包括的に理解しておくことの大切さを感じます。


image: Mr. Nat Bullard

【7】Oxford PV sets new solar panel efficiency world record [1/31 Oxford PV]

そんな中注目したのがこちらのニュース。英国気候テックスタートアップであるオックスフォードPVが、ペロブスカイト・タンデム太陽光パネルの効率世界新記録、25%を達成し、クリーンエネルギー移行における重要な進歩を示し、生産増加と新工場設立の計画を進める変革的な2024年の舞台を整えた、とのことです。

日本発の肝いりの技術として注目を集めるペロブスカイト太陽光発電技術ですが、中国や欧州でも技術開発が進んでいることが伺えます。

*ペロブスカイト太陽電池の商業化競争、鍵はシリコンとのタンデム [1/18 MITテクノロジー・レビュー]

【8】気候データサービスWatershedが1億ドルのラウンドを獲得 - 元Stripeの従業員3人が率いる排出量追跡スタートアップは、企業の炭素情報開示に対する要求が強まる中、成長を続けている [2/1 Bloomberg Green]

CO2見える化ツールは国内でも既に様々なサービスが提供されていますが、米スタートアップの「Watershed Technology, Inc.」は、企業の温室効果ガス排出量を追跡および削減するソフトウェアスタートアップとして大きな存在感を持っている企業です。今回のシリーズCの資金調達ラウンドでは著名VCのクライナーパーキンス、セコイアなどから1億ドル(約148億円)の調達に成功し、評価額を18億ドル(約2,670億円)に引き上げました🦄。こうした投資は、企業が自社のカーボンフットプリントを理解し、軽減することにますます焦点を当てる中で、カーボン開示への需要が高まっていることを反映しているといえます。

共同設立者のテイラー・フランシス氏は先月ダボスで開催された世界経済フォーラムでの会話を振り返り、「炭素会計の普及は15年前から始まっていたが、今や一気に到来した感がある。気候変動ビジネスそのものがビジネスになりつつある」と語っています。以下はWatershedのプロダクト紹介動画です。

【9】「 Positive News / https://www.positive.news 」〜英国発の前向きソルーションジャーナリズムメディア

今回は冒頭ご紹介した「気候変動メディアシンポジウム」に触発され、できるだけ、前向きで解決につながりそうなトピックをご紹介してみました。そんな中で偶然に見つけたサイト、その名も「ポジティブ・ニュース」というサイトがあったのでご紹介です。

「Positive News」は、うまくいっていることに関する厳格なジャーナリズムを提供するメディア・ブランド。再生可能エネルギーの世界的なブームから、ホームレス問題を解決する都市まで、社会的意義があり、元気を与える進歩のストーリーを報道し、人々、コミュニティ、組織がどのように世界をより良く変えているのか、点と点を結ぶ、とのことです。

オンラインで記事を毎日配信し、毎週土曜日のメールニュースレターのタイトルは『What went right this week: the good news you should know about(今週うまくいったこと:知っておきたい良いニュース)』。雑誌も年4回印刷物として発行しているそうです。こういうアプローチ、いいですね🙂👍

image: Positive News

【10】イベント:先日お伝えしたものですが以下2件、現地に伺う予定にしています。参加される方がいらしたら会場でお目にかかれることを楽しみにしています:)


ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、同僚、ご友人、或いはSNS等でご興味ありそうな方に共有いただけたら嬉しいです🙂。

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🌏Climate Curation 情報源 [気候変動・脱炭素・気候テック (climate tech ) 関連情報]:https://bit.ly/ClimateCuration_Info [ストック系情報 : 掲載数109]

🌏Climate Tech List ⚡ :https://twitter.com/i/lists/1611344400122253312

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市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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▶2021年夏以降気候変動・脱炭素・クライメートテックについてCOMEMO記事として公開した記事のリスト


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