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遠くの社会課題ではなく、目の前の弟を幸せにする事業創り

「わたしのソーシャルビジネス物語」はソーシャルビジネスに携わる人を発信する企画です。読者の皆様に「ソーシャルビジネスを身近に感じてもらうこと」を目的として運営されています。

障害児の弟様の存在がきっかけで起業をした人がいる現在、現役大学生の山本様だ。自身の弟様の特性から、障害児向けのアートイベントとアトリエ教を運営している。どのようなアトリエ教室なのか、なぜアトリエ教室なのか、これからどうするのか。そんな話を伺った。

山本 亮輔(やまもと りょうすけ)| 2001年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部在学中。高校在学中にシード期のスタートアップでのインターンや、フリーランスエンジニアをした後、株式会社タイミーの新規事業部でのインターンでフードデリバリーサービスのゼロイチに携わる。後に、株式会社LITALICOの発達ナビ事業部の編集部でのインターン後、特別支援学校に通学する生徒向けのアートイベントなどを行う、株式会社エラフルーを創業。10歳下に重度の障害を持つ弟がおり、障害を持ったものを囲む社会に課題を感じ、障害を持った人への事業を展開している。

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弟の原体験から事業を作ることに。

――まずは現在やられていることを教えてもらえると嬉しいです。

慶應義塾大学の環境情報学部に所属をしています。また、株式会社エラフルーの代表をしています。事業としては特別支援学校に通学する子供向けのアトリエ教室を運営しています。

――学生起業なのですね。もう少し事業内容について詳しく伺いたいです。

アートや創作活動を通じて他者と交流できる場を提供したいと思っています。現在はテナントを自社で借りて土日に行っています。内容としてはヘルパーさんがマンツーマンでお子様の創作活動をサポートして、ひとつのものを作っていく体験を提供しています。

――特別支援学校に通学するお子様を対象にされているのですね。事業を始めたきっかけや現在存在する課題はどういったものがあるのでしょうか。

10歳下の弟がきっかけです。弟は7番染色体という重度の障害児として生まれてきました。そのような背景から重度の障害を囲む社会に対して非常に課題を感じてきました。現在国や企業がリーチできているのは軽度な障害者がメインです。なので、重度な障害に関しては課題が山積みですね。

――その中でアトリエ教室にしている理由はあるのでしょうか。

健常児向けのアトリエ教室が人気だからです。しかし、障害児向けのアトリエ教室は中々ありません。それは障害を持っているが故に、アクリル絵の具を食べてしまったり、道具を誰かに打つけてしまったりするという問題が発生してしまうからです。そこで、ヘルパーが必要となり、人件費が余分にかかり、企業が進出し辛いという現状です。

他社ができない理由を発見し、ビジネス構造をハック

――人件費がかさむのに何故、御社はそれができるのでしょうか。

協力をしてくださるヘルパーさんの属性が一般的なアトリエの教室と異なるからです。普通はプロのアーティストさんがお子様のサポートをします。しかし、障害児のお子様だと、そもそも創作活動をしないケースが多いです。例えば、水鉄砲を使った創作活動をしようとした際に、水遊びだけをして終わることもあります。なので、それならプロの方にご依頼をしなくてもいいと思い、プロの方にお願いをしていないので、一般的な人件費より安くなっています。

――どのような方にお願いをしているのでしょうか。

例えば、放課後等デイサービスのパートさんや、放課後等デイサービスでバイトをしている学生さんなどです。放課後等デイサービスのパートさんは時間に課題を感じています。働きたいという願望はあるものの、放課後等デイサービスから提示される時間が5時間とかの制限がある、土日も働きたいけど働けないという現状です。また、この問題に関心を持ってくださっている学生さんなどは興味を示してお手伝いをしてくれています。

――そのような方々はどのようなモチベーションで働いているのでしょうか。

子供たちと遊ぶのが楽しい、社会的貢献意義が高い。などのモチベーションから働いてくださっています。また、大学生で僕のように身近に障害児のお子様がいる人やアルバイトを通じて保育園などで働いた経験がある人なども働いてくれています。

――現在は何名くらいのヘルパーさんがいて、どこでやっているのでしょうか。

ヘルパーさんは10人くらいいます。場所は元々廃墟だったアーツ千代田という場所を借りてやっています。また、9月からは文京区でやらせていただけることになります。

自分たちだからこそできる価値を届けるために

――現在は重度の人に対象を定めていると思いますが、その理由はあるのでしょうか。

僕たちだからこそできる領域だと思っているからです。以前僕は福祉系の上場企業でインターンをしていました。そこの企業様もやはり軽度の方を対象に事業をしています。何故なんだろうと自分で考えた結果、それが上場企業様だからと思ったのです。やはり上場企業になると、様々な方が株主となり、制約も生まれてくるのが現状です。

――僕たちだからこそできることとはどういう意味でしょうか。

僕たちはスタートアップであり、投資家の方も「何をやってもいいよ」と言ってくださっています。このような自由度が高いことは1つ影響しているかと思います。

――この先も重度の方を対象にやっていくのでしょうか。

今は6歳から12歳の小学生の土日や放課後の学校外の時間にサービスを提供しようと考えています。その後は重度の方の就労問題に関する事業を作っていきたいと思います。

――就労問題でしょうか。

例えば重度の障害者の方が作業所で働く場合は日給500円で月15,000円といった現状です。そうなった際に、誰が金銭的な援助をするのか、といった問題があったりします。なので、そのような重度の障害者が適切な金銭を受け取れるような就労スキームを作っていきたいと思います。

――他にも考えていることはありますか。

親の亡き後のコミュニティ問題なども考えています。親が亡くなった後、誰が障害を持っている人のサポートをするかなどを考えて、解決していきたいと思っています。

全ては弟のために。

――改めてやりがいなどをお聞きしてもよろしいでしょうか。

弟が身近にいるということが何よりのやりがいです。僕は正直子供がめちゃくちゃ好きという訳ではありません。重度の障害を持って生まれてきたことってどうしようもないことじゃないですか。だからこそ、弟を幸せにしたいと思っています。それがやりがいです。

――他にもありますか。

あとは事業に関してです。僕たちがやっているのは社会課題の解決です。しかし、如何に社会課題っぽくみせないかが重要だと考えています。今度アトリエのイベントを実施予定です。それはエンタメ×アートという文脈で発信をします。その中で対象者は自分のエゴで障害を持ったお子様だよ。という発信をしていく予定です。

――そうですよね。お情け頂戴でお金をいただくのは違いますもんね。

仰る通りですね。それは長期的に回るシステムは作れないですもんね。

――もし、山本さんのようにソーシャルビジネスをやりたい人がいて、その人が一歩踏み出せなかったらどんな言葉を投げかけますか。

この領域は課題の深さが一般的なビジネスとは異なると感じます。0から1のサービスを作るのではなく、マイナス1からまずは0にするところを目指すサービスを届ける必要があると思います。もちろん、大変なこともありますけど、本当にやりがいはあるということをお伝えしたいです。

取材/おかしょー
文/おかしょー
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