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新卒から社内起業を通じてソーシャルビジネスを。

「わたしのソーシャルビジネス物語」はソーシャルビジネスに携わる人を発信する企画です。読者の皆様に「ソーシャルビジネスを身近に感じてもらうこと」を目的として運営されています。

自身の原体験から、子供に関わる課題解決をしたい。そんな思いを持って事業を作っている人がいる。藤浦 啓伍様だ。藤浦様は新卒で株式会社LIFULL
に就職をして、社内新規事業提案制度を活用し、事業を作っている。本日は社内起業のメリットや制度の内容、そして彼が目指す世界などを伺った。

藤浦 啓伍(ふじうら けいご)|佐賀県出身。株式会社LIFULLに2020年に新卒入社。現在は営業職と社内新規事業創出プログラムに従事。

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利他主義を加速するために生まれたSWITCH

――藤浦さんはLIFULLで新規事業を創られていると思うのですが、詳細を伺ってもよろしいでしょうか。

はい、現在はLIFULL(ライフル)のLIFULL HOME'S事業本部に所属をして営業を行っています。本業の時間とは別に社内の社内新規事業提案制度であるSWITCHを活用して新規事業を作っています。

――SWITCHとはどういったものなのでしょうか。

子会社グループ会社を含む全従業員、内定者から年間150件以上の新規事業提案が寄せられる企画になっています。元々は学生向けの新規事業コンテストとして2006年にスタートしたものです。同時期に社内向けの新事業制度を立ち上げ、この2つが現在のSWITCHにつながり、現在までに30回を超えるピッチイベントが開催されていますね。

――ビジネステーマなどは決まっているのですか。

特にテーマは決まっていません。実際に事業が上手くいき、事業化した案件は、本業である住まい領域にとどまらず、花の定期便サービス「LIFULL FLOWER」などがあります。ただ、入賞の有無に「LIFULLらしさ」が求められるかと思います。

――LIFULLらしさとはどういったものなのでしょうか。

「利他主義」ですね。元々、LIFULL創業者の井上が創業当初から「利他主義」という考えを掲げています。LIFULL HOME'S自体も井上が前職で感じた、業界の不を元に立ち上げた事業です。当時から「目の前の人に貢献をしていく」という「利他主義」を大切にしています。

大学時代に感じた課題を社会人として、サービスへ昇華。

――素敵な考えですね。そこで藤浦様はどのような事業を作っているのでしょうか。

実は一度4月でサービスをクローズしています。そこでの苦い経験も含めお話をさせてください。放課後等デイサービス向けの業務支援サービスを開発していました。現場で働く方の記録業務を単純化するサービスです。

――そもそも放課後等デイサービスとはどういったものでしょうか。

放課後等デイサービスは発達障害をお持ちのお子様が放課後や土日に訪れる場所になっています。運営は国からの予算で行います。その代わりにどのようなサービスをお子様に提供をしたか、紙に書いて、国に報告をしなければいけません。

――紙を使用するってだけでとても大変ですね。

はい、なのでそこをタブレットでデータ入力ができ、その分できた時間で子供達のサービスを向上させていきましょう。というサービスを作っていました。

――とてもいいサービスね。どのようにしてこの課題は見つけたのでしょうか。

私は元々大学時代に児童福祉のNPO法人で働いていました。そこで記録作業の大変さを感じ、専門性を持っている方が子供に時間を使えていないことの疑問を持っていました。そのような原体験から思いついたサービスです。

――なぜ、クローズしてしまったのでしょうか。

競合に勝てる道筋を描けなかったからです。商談なども進んでいたのですが、他社様から想定しないプランが出てきて、これでは勝てないと思いクローズしました。

――それは残念でしたね。サービスの開発にかかる人的リソースや資金はどうしていたのですか。

まず、SWITCHは大きく2フェーズに分かれています。事業化承認のフェーズと子会社のフェーズです。その間にいくつか関門があり、その関門ごとに予算が変わってくる感じですね。私はピッチで入賞をして、その後の3つの関門の内2つ目の関門で一旦サービスクローズとなりました。

――2つ目の関門クリアの条件はどういったものがあるのでしょうか。

競合優位性と収益化ですね。また、チームは基本的に自分で集める必要があります。私は同期のエンジニア2名とデザイナー1名に声をかけて、一緒に業務時間外にサービスを作っていました。他にもアクセラレータという月に1回ほど壁打ちにご協力をしてくださる方がいます。

――実際に仲間と事業を作ってみて、大変だったことをお聞きしたいです。特にLIFULL HOME'S事業本部の営業をやりながらだったと思うのでその観点も伺いたいです。

やはり普段日中はLIFULL HOME'Sの営業をしているので、作りたい事業の顧客に会いにいく時間がなかったことが大変でしたね。基本的には業務開始前の9時くらいから放課後等デイサービスに電話をかけて、業務終了後の夕方以降にアポを入れてお打ち合わせをするというスケジュールでした。

子供に関わる課題解決をしたいワケ

――かなりハードワークですね。

そうですね。入社した当初は本業の方では目標が未達だったりしたのですが、途中からは継続して目標達成もできるようになったのでよかったです。

――そんな中、支えになったこととかはありますか。

事業を作る中で放課後等デイサービスの方々の課題をより強く感じました。そこでより一層、この方々の力になりたいと思ったことは大きいですね。また会社の方の「本業をしっかりとやっておけば何でも挑戦しろ」というスタンスもエネルギーに変わりました。

――そのようなハードワークをしてまで、事業を作ると覚悟していたと仰っていたかと思います。そもそもどのようにしてこのSWITCHを知ったのでしょうか。

就職活動を通じて知りました。就職活動をする中で選考を受けた企業様に「私の軸を聞いた時に御社以外でオススメの会社はありますか」と聞いていたのですよ。なかなか失礼かもしれませんが。(笑)その時に5社ほどの企業様からLIFULLを教えてもらい、自分でも調べてSWITCHがあることを知り、応募しましたね。

――ソーシャルセクターに関心を持った背景はありますか。

私の子どもの頃の身近な人が関係しています。よく一緒に遊ぶ子がアトピー性皮膚炎に悩んでおり,日々の生活の中で,その症状に悩まされている状態でした。そこから「自分が幸せなだけでは嫌だな」と思うようになったのです。

――それが原体験だったのですね。

あとは親友と話している時に自分と全然異なる生い立ちであることを知りました。
そこから、どういった家庭だとどんな人となりになるのだろう。と疑問を持ち、大学では心理学を専攻することにしたのですよ。実際に勉強してみて面白かったのですが、より現場に入りたいと思い、NPOなどに入っていきましたね。

――ソーシャルセクターの一歩目ですね。

はい。そこで様々な子供を見る中で「子供時代が最も自分自身では変えることができない環境である」と思うようになり、子供にアプローチすることをやりたいと思い、ソーシャルセクターに進むことを決めました。

挑戦できる環境を作ることがハードルを下げる

――藤浦様は社内起業を通じてソーシャルビジネスを立ち上げようとしているかと思いますが、社内起業のメリットなどはありますか。

最低限のリスクヘッジができることです。例えば、私はお伝えしたように4月に事業をクローズしています。しかし、LIFULL HOME'Sの仕事をしているため、生活費自体はあります。このような安心が何度も挑戦をすることのハードルを下げてくれますね。

――確かに、それはとても安心材料に繋がりますね。他にもありますか?

社内リソースを使いやすい点です。先ほどのエンジニアやデザイナーの例もそうですね。他にも年末にサービスの利用規約を作っていたのですが、法務部の方に添削をご依頼させてもらいました。これは、通常自身で起業をすると、弁護士さんにお支払いするコストなどもかかってくるので、その点とても有難いなと感じますね。

――社内起業いいですね!今後の目標はありますか。

入社当初から3年以内に累計売上100万円。という目標を掲げています。残り1年半でLIFULL HOME'Sの営業をやりながら、新規事業を作っていきたいと思います。

――4月にサービスをクローズしたかと思いますが、そこから目標達成に向けて現在はどのような事業をされていますか。

ひとり親家庭の孤育て問題解決に向けて事業を作っています。今はヒアリングなどの段階ですね。

――孤独の孤育てですね。目標を達成した後のことは考えていますか。

社内で子会社化するのか、社外でやるのかいくつか選択肢はあるかと思います。しかし、今は明確に方向性を決めずに事業作りをやっていきたいと思います。

――ありがとうございます!最後にこれからソーシャルセクターに踏み込みたい学生さんにメッセージをいただけますか。

チャレンジできる環境を自分に保証することは大事かと思います。就職先や住む場所、関わる場所など自分を応援してくれる場所に身を置き続けることは大事かと思います。

取材/おかしょー
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