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子どもたちの薬剤アクセスについて提案したいこと

はじめに

まずは、こちらの動画をご覧ください。2022,12,14日の放送です。
(お時間難しい方はとばして頂いても大丈夫です)

https://www.nhk.jp/p/nw9/ts/V94JP16WGN/plus/

※残念ながら埋め込み許可をもらえずでしたので、個別でご連絡頂き対応させてください。

まず現状整理させてください。
私の息子は現在、脳腫瘍があり、非常に効果があると予測される治療が保険適用になっておらず、治療が進んでいません。
(特例研究参加や保険外の選択肢はありますが、永久に飲み続ける必要があるので、保険適用になっていないことは当事者として大きな課題です)

なぜ、保険適用されないのか、医師・厚生労働省・PMDA・議員の方々など、できる限り多くの方々の話を聞き、調べてみました。
ですが、それでもなお、現状、明確な理由はわからないのです。

しかし、総合的に考えて、この薬剤がいまもなお保険適用されていないことに大きな違和感があります。なぜドラッグラグは生まれるのか、その原因は非常に複雑なのですが(詳細は1つ前の私のnoteのメディア記事やNHKさんの動画を参照ください)、その中でも、1点に絞り、解決策を提案し、多くの皆さんのご意見を伺いたいと思っています。

詳細を読んで頂ける方はこちらのnoteをどうぞよろしくお願いします🙇


提案したいこと

結論、私が提案したいことは、
「こどもの希少疾病において、標準治療がないことに加えて、新薬の治験登録が終了しているにも関わらず、海外で承認されている効果が認められた薬剤は、薬事申請・承認に関する特別措置の仕組みを作ること」を求めます。

具体的には、一定条件を満たした特別措置において承認or仮承認された薬は、親の同意書を得た場合、薬剤を使用しながら安全性をメインに確認する仕組みを作ることを求めます。(もちろん海外のデータでは安全性も確認されていることが前提)

※標準治療がない=例えば小児脳腫瘍神経膠腫であれば、抗がん剤は標準「的」治療ではありますが、奏功率は20%ほどであり(以下に別途論文添付)、見方によっては標準治療とはいえないと考えています。

※子どもだけ?というご意見もあるかと思います。今回は、ドラッグラグ件数、子どもは自ら意志を表明する環境にないことが多いなど、以下に述べる複数の要因を考慮して限定しました。

※1点だけに提案内容を絞る様々なリスクも承知しています。提案「条件」にある程度の幅をもたせる余地はあると思います。ですが、こうしたカタチでまずは1点突破するケースを示すこと以外に、道が開かれる可能性を感じないので提案しています。

本当にその薬剤は効果があるのか?

なぜこの提案をするのか、その理由について、私の考えをひとつずつ述べていきます。

まずは、この薬剤は本当に効果があるのか?について。

論文を以下に添付します。
この論文内に示された治療前後の画像の変化には本当に驚きました。
(画像添付の許可が得られなかったため、URLを添付します)

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/pbc.26086

英語ですが、画像だけでもよければご覧ください。(※購入する必要があるので、どうしても気になる方は個別でメッセージください)
化学療法では効果が見られなかった腫瘍が10ヶ月のダブラフェニブ投与にて驚異的な改善が見られています。これが2016年の出来事です。

次に、こちらの論文は、有効性、安全性を比較検証した第2相のバスケット試験(臨床試験においてその薬剤が標的とする遺伝子変異があれば、どのタイプのがん腫でも登録できる試験のこと)のアブストのURLです。

2014〜から集められているデータです。結果も非常に良好で低悪性度神経膠腫では69%の奏功率です。

さらに、こちらの論文でも、化学療法と比較した場合の無増悪生存期間は明らかに違うことがわかると思います。これまでの抗がん剤は奏功率は23%。

上記のとおり、これまでの抗がん剤などの標準的治療と比較して、安全性を含めて効果がある薬剤であると考えられると思います。


海外ではどの様な対応をとっているのか?

海外既承認、国内未承認の医薬品への対応には、欧米では古くからコンパッショネートユース(以下:CP)制度というものがあります。

重度の患者さんや既承認の代替薬がない患者さんの救済を目的として、公的に未承認薬へのアクセスを可能にし、一定のルールのもと、例外的に未承認薬の治療目的での使用を認める制度です。CP制度に関する日本語論文は少ないのですが、以下にURL添付します。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rsmp/5/2/5_141/_pdf/-char/ja

行政の議論で初めて使用されたのは2007年、積極的に議論されはじめたのは2014年で、現在も国内では本来のCP構成要素を満たした制度設計はされていません。

理由は明らかではありませんが、国内で安全性が確立されていない未承認薬を患者に供給する問題と、アクセスを可能とすることで医薬品の開発に必要な臨床試験の遂行を妨げるジレンマがあると予測しています。(この問題も工夫次第で対応可能では?と思ってしまいます。。)

※日本版CP制度はありますが、まだ使いやすい制度には至っていません。
(しかしながら、関係者の皆様が日々動いてくださり、この制度もできたことだと思います。)

その他、海外CP制度事例などはたくさん事例がありますが、上記文献などをご参照ください。

日本には迅速に承認できるフローがないのでは?

次に、そんな薬剤の特例措置など、これまで実施した事例がないから制度化はハードルが高いのでは?について。

国内では、これまでの薬害の歴史もあり、迅速承認や仮承認できるフローがないから、なかなかドラッグラグの問題は解決できない。。。
と聞くことが多いですし、私自身もこの様な要素はあるだろうなと思っていました。

ですが、みなさん、日本のこどもにおけるコロナワクチンの承認スピードをご存知でしょうか?

PMDAが出しているこちらの資料を読む限りでは、

https://www.pmda.go.jp/drugs/2022/P20220826003/672212000_30400AMX00015_A100_1.pdf

2022.5.17〜アメリカで緊急使用許可が承認
2022.6.22〜日本でファイザー株式会社が申請
2022.8.17〜日本、特例承認に関する報告書が一般公開(詳細な承認日?)
もちろん参考データは、国内ではなく、海外のデータのみです。

コロナワクチンの場合は、「海外のデータのみで超迅速に承認されている」ことがわかるかと思います。

こんなに早く承認制度が実施されるフローがあることは、上記からも予測できるのではないでしょうか。

※もちろんワクチンの場合は予防接種と捉え、先駆け承認は容易では?などの意見もあるとは思いますが、いずれにしても日本はこれだけ迅速に承認できるフローがあったということをお伝えしたい意図で記載。

また、日本には薬機法第23条の26に再生医療等製品に対する「条件及び期限付き承認」の制度があるのですが、これを稀少疾患やがんなどの効果が高い医薬品にまで拡大できるのではないか?と考えてしまいます。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000145


国はなんらかの制度をこれまでに作っているのでは?

皆さんに知っていただきたいことは、
・新薬は、エビデンスがあったとしても、目の前にがんが進行している子どもがいたとしても、欧米のように金銭的サポートをしながらすぐに薬が飲める制度がありません。
・ずっと昔からある問題だけれど、子供を救える制度には至っていないといえます。

現在、小児がん薬剤開発への政府の取り組みとしては、

  • 薬事規制改革などを通じたコスト削減と効率向上

  1. 先駆け審査指定制度

  2. 条件付き承認制度

  • 薬価加算(5〜20%)

  1. 2016年2月1日 日医薬審第107号

  2. 2016年2月10日 保発0210第1号

  • 再審査期間の延長

  • 医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議

  • 特定用途医薬品指定制度

上記におおよそ集約されると思います。詳細はググって頂きたいのですが、現状の国の政策はある程度確認したうえで言います。

小児がんの治療開発に関連した政策はありますが、有効な打ち手になるものはないです。今まさに必要な子にとって、今の制度では救えないです。


財源は?

現状、子ども、希少疾患という枠組みで、増額は厳しいですよね。
ですが、こちらの文献を参照して頂きたいです。
日本の急性期病院における「価値の低い医療」の頻度や推移を大規模に調査した研究です。

https://bmjopen.bmj.com/content/bmjopen/12/9/e063171.full.pdf

健康上のメリットが無いと報告されているものの日本で保険収載されている薬・医療機器・医療行為は、医療費の0.23〜0.51%あると報告されています。

日本の医療費44兆円の0.23%〜0.51%は約1,000〜2200億円であり、これらを保険から外せば、国民の健康へ悪影響を与えることなく、医療費も適正化し、子どもたちに使えることも検討できないでしょうか。


とはいえ、保険適用されない理由の予測は?

根本の原因は、
患者利益と社会利益の対立構造だろうと考えています。

また、私たちの場合は、
薬を開発されているノバルティスファーマ株式会社が、まだ薬事申請していないからです。ですが、治験の登録期間は終了し、すでにすべてのデータはノバルティス社に提出されています。結果も出ていると聞いています。
そのため、いまなお申請されない理由がわかりません。

考えられる理由としては、
薬価と承認時期に関する、企業と厚労省のなんらかの関係性?と、特に
介入後のフォローアップ期間が終了していないこと、は予測されますが(そういう意味ではすべてのデータが揃っているとはいえない)、
仮に、こうした理由であれば、今回の薬剤に関しては、私が今回提案する特例承認は現実的に検討の余地があるのではないかと思うのです。
(薬剤効果が大きい、コロナワクチン事例、CP制度、財源の件など)

※上記、企業を責めているわけではなく、どちらかというと国が企業に対して、インセンティブ設計を工夫するべきだと思っています。例えば、アメリカでは企業に対して、6ヶ月の販売独占権やバウチャー・プログラムが実施されています。


私が声をあげる理由

  • 課題が山積みで解決に向けたアクションを絞れていない

  • がん対策推進基本計画案に反映されていない(問題があると認識しているだけ)

  • 当事者家族としての声が小さい(と感じている)

  • 当事者の子どもたちは声をあげにくい(環境であることが多い)

以下、理由を述べます。

  • 課題が多く、分野横断的解決に向けたアクションがとれていない

    医療従事者の皆さんや、厚生労働省・PMDAの方々、製薬企業の皆様など、実際にお話を聞くと、皆さん、子供たちを救おうという強い正義感をもち、行動して下さっています。

    ですが、この問題は複雑かつ課題が山積みで、行政は制度がないと動けないものかと思います。そして、それぞれの立場ゆえに、具体的な解決策を1つに絞ることは難易度が高いと思います。

  • 結局、がん対策推進基本計画に反映されていない

    2022.12.7に発表された、第4期がん対策推進基本計画。これは私たちにとって今後の方針が決まる重要な計画です。小児がんの薬剤アクセスについての記載もありましたが、解決策はまだ中身がなく、研究開発を推進するという文面です。もちろん研究開発は大切です。

 ですが、このまま研究開発を進めても、

効果がある薬剤ですら、アクセスが整備されていないこの状況で、子どもたちを救えるのは何十年度後になるのでしょうか。


  • 当事者・当事者家族としての声が小さい(と言われている)

  • 子どもたちは声をあげにくい(環境であることが多い)

    当然です。闘病中は病との戦いで精一杯です。完治後は社会に適用することが第一優先です。要望書など書ける年齢でもないです。闘病期間も主要な癌よりも短いことも多々あります。

    令和5年4月1日に子ども基本法が公布されます。

みなさんは、これまで子供基本法がなかったことをご存知でしたか?昨今、子どもの問題はニュースでも目に付くことが多いと思います。それでも、子どもたち自身が声をあげることは難しいです。多くの子どもたちの事故の問題も、多くの大人が声を上げ続けないと、制度を変えることはできていません。

こうした背景から、当事者家族としては、1点に絞り、解決に向けた提案をしようと決めました。(患者団体の皆様やお世話になっている医師の皆様にも参加のお声がけや組織としての発信提案を頂いたにも関わらず、、今回は個人としてまずは一度、皆さんに意見を聞く挑戦をしたいと思いました。)


最後に強く伝えたいこと

私たちが取材して頂いたNHKさんの動画でも最後にふれていました。政府は、薬剤アクセスの問題は認識していると。


何十年前から、認識のままで終わっているのでしょうか?いつ改善に向けた具体的な行動がされるのでしょうか?何があれば抜本的に変わるのでしょうか?全ての解決策が見えないと動いてもらえないのでしょうか?何人の子どもを犠牲にすれば行動するのでしょうか。

多くの方々の声が、今、必要です。大きな転換を迎えるためのインパクトが必要です。どうか、皆様、声をあげることにご協力頂けないでしょうか。

※反論のある専門家の方々、どうか私の認識の間違いなどご指導頂けませんでしょうか。なぜこうした領域における詳細な専門的情報が少ないのでしょうか。専門家の方々にお願いしていた結果、改善が少ないからこうして声をあげています。

まとめ

・子どもの希少疾患に対して、「標準治療なし」、「国内治験終了or未実施」、「海外で承認済み」などの条件次第では、薬事仮承認などでの対応後、使用しながら安全性を確認できる制度の導入を求めます。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
私がここで記載したことは、あくまでも論文以外の情報も含んだ考えであり、おそらくどこかの情報の解釈は誤解も生じている可能性はあると思います。(口頭で確認した内容など)

しかし、現時点では、私の提案内容について皆様のご意見を伺い、まとめさせて頂きたいたいと考えています。

多くの皆様のお力を貸して頂きたいです。
どうかこの活動にご協力頂けないでしょうか。

皆様にお願いしたいことは、今回のnoteにおける私の「提案内容」についてのご意見を頂きたいです。
(twitterのDMやnote、メールアドレス(socialbrain0506@gmail.com)などでご連絡頂けますと幸いです)

重ね重ね、どうかよろしくお願いもうしあげます。

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