「お客が来たら最敬礼を!」の一言が会社へのエンゲージメントを壊す。
ある会社の出来事、役員が指示を出したらしい。「訪問に来たお客さんに最敬礼しなさい」と。しかも「きちんと立ち上がって」敬礼するようにと。「大変な会社だね」と自分は笑って言ったが、以下、話しの概要を書いてみます。
あるディーラー(販売店)からの指摘が発端
その理由は、あるディーラー(つまりはその会社のモノを売っている販売店)がその会社に訪問しても挨拶がないと指摘したからだ。ディーラーはその会社を「挨拶もしないとは殿様商売だな」と嫌味を言ったそうだ。しかも他社はこんなに素晴らしいと付け加えて…
それに対し、指摘された役員は慌てて社員に指示を出した…と言うのがことの顛末らしい。
大いなる違和感、もっと社員を信じてくれ!
ここでAさんは大いなる違和感を感じたらしい。
なぜ彼は怒りに近い反発心を抱いたのか?それは、ディーラーに指摘されて、「はい、注意します」としか言えない役員への失望だった。と同時に集中して仕事している際に挨拶で立ち上がるのは集中力の途切れになると嘆いていた。
なぜ「うちの社員、熱心に仕事やっていて気付きませんね」と言えないのか? 軽く笑い飛ばすくらいの気持ちで言えないのか。大いなる違和感の根源はここにあったのだ。
アメリカの車メーカー、サターンを思い出す
かつて、アメリカの車メーカーであるサターンが日本に進出しようとした時のことを思い出した。
工場で働いている人々が見学者にフレンドリーに挨拶している様子が大々的に放映され話題になった。
その時、自分は思った。「へぇ〜こんな会社があるんだぁ」と。「おいおい、そんな仕事中に挨拶などして、ちゃんと車を作れるのかよ」とも思った。
これに近いものをAさんの会社に感じた。挨拶なんかしていて仕事がきちんとできるのか? 自分なら仕事中に立ち上がって「いらっしゃいませ」と言った途端に、今やっている仕事を忘れてしまう、、、だろう。
挨拶とサターンと効率性と…
サターンの狙いは、会社に親近感を持ってもらい、日本への進出とクルマの売り上げを狙ったのであろう。しかし今はどうなったのかはご承知の通り。
トヨタ方式とは全く別物だったのだ。会社は社員に効率性を求め、残業されるのも人件費がかかり困るとばかりだというのに、一体どういうことなんだとAさんは矛盾を抱く。
挨拶されたお客さんはそんなに喜ぶのか? 自分はそんなことを思ったこともない。むしろ仕事中に申し訳ないと思うが、、、
本音でないことの強制、外面が大事なのだ
最近の皆さんの会社はどうだろう?社会風潮としてこんな感じなのか…
エンゲージメントや会社へのパーパスが大事だとか言われる昨今である。
なぜ経営者はそう言うのか?それは昨今、投資家からESG経営や人的資本経営が評価軸となり、投資する相手先を選ぶ際のポイントになることに脅威を覚えているからであろう。
よって企業は外面は良い顔をしておかなければならないのだ。外面は大事なのだ。そしてうちの社員はみんな会社のパーパスを理解しており、忠誠心やエンゲージメントが高いと言わせたいのだ。
しかし社員はここで気づくだろう。誰もそんな事を考えていないのだ。そもそも自分の会社のパーパスさえ理解していないし話すことさえできない。その理由は経営者が伝えていない、そして管理職さえも語っていないからである。
それなのに経営者はあせって自社のパーパスを無理矢理に、そしてe-learningで機械的、学習的に教え込もうとする。
その結果起きることが、社員の心の疑心と会社離れ
Aさんの会社では「こんな会社はくそくらえだ…」と思っている人もいるらしい。
なぜか?簡単だ、会社は社員に嘘を強要しているからだ。
好きではないのに「好き」と言えと言われているのと同じことである。
社員、いや誰もが嘘はつきたくないのだ。
「グリーンウォッシュ」という言葉がある。これは環境に対して何も対策していないのに、あたかも環境に良い貢献をしているように世間に見せかける行動のことだ。
それと同じことが起きると言うことだ。
実際Aさんの会社で起きていること、社員はランチや飲み会でますます会社の悪口を言うようになっているとのこと。
もしくは鼻からそんなこと期待していないよと言う、感度の高い人間もいたようだ。SNSで拡散されなかっただけでもマシだと言えるのかもしれない。
会社に対するエンゲージメントの低さは、世界先進国の中でも最下位に近いと言われている所以はこんな所にもある。
社員が望んでいること
泥臭いが、社員が求めているのは経営者の"熱い想い"だと思う。
自社のサービスをどんな風に社会に役立てたいのか、、、
しかしその熱い想いが現場に全然伝わっていない。自分の言葉でなく、安易な方法で、例えばe-learningや自社ホームページでいきなり伝えようとする。どこかの制作会社に作らせたホームページは、残念ながら社員も見ていない。
こんな安易な手段では伝わるわけがない。真剣な表情を見たいのである。
管理職はリアルに、もっともっと熱い思いを伝えなければならない。
その結果としての笑顔は素晴らしい
自然に出る笑顔で挨拶するならそれは最高だ。
恩着せがましさや作り笑顔なんて必要ない。真剣に仕事に取り組んでいる姿を見せれば良いだけだ。
お客さんや見学者と目が合ったら、「私たちはこうやって働いていますよ」と心で伝われば、それこそ最高だと思うのだが、、、
(終わり)
あとがき
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