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ソーシャルリスニング分析で、家庭の光熱費に対する意識変化を調査する


こんにちは。
ソーシャルリスニング分析の業務を行っている、(株)オン・ザ・プラネットのマーケティング担当です。

弊社では、ソーシャルリスニングと呼ばれる「SNSデータの分析」を行う事で、一般家庭の光熱費に対する意識がどの様に変化したかを調査しました。
その調査方法と分析結果をご紹介していきます。

◆こんな方必見◆
・ソーシャルリスニングに興味がある
・SNSデータを分析する事でどの様な事ができるのか知りたい
・自社ではまだSNS分析を行っておらず、今後取り入れたい
・一般家庭の光熱費に対する意識変化を知りたい
◆活用ツール◆
マーケットリサーチツール「Brandwatch」

分析目的

今回「家庭の光熱費に対する意識変化を調査する」というテーマで分析を行うに当たり、分析の目的を確認しておきます。
弊社では、一般家庭に向けて光熱費(主にガス代や電気代)を削減するスイッチング営業を行っております。
営業をする上でポイントとなるのは、消費者に対して光熱費を削減する必要性ガスや電気をスイッチングする事がトレンドである事を上手く伝える事とされています。
その為、営業活動を行う上で消費者の意識やニーズを把握し、その変化を追っていく事は非常に重要な事と言えます。
本分析を通じて得られた結果を、今後の営業戦略に活かし、また営業資料や営業トークとして情報を営業社員に提供する事で、更なる顧客獲得を目指します。


分析準備①:キーワードの設定

まず最初に、SNSデータの中から抽出したい投稿の「キーワード」を設定します。
データ分析において、データ量の多さはデータの信頼度と直結しますので、なるべくヒット件数の多そうなキーワードを選びます。
今回は、以下の様なキーワード設定で投稿を抽出します。

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[ガス代、電気代、光熱費、節約]のどれかのワードにヒットする投稿を抽出します。


分析準備②:期間の設定

次に、データを抽出する期間を設定します。
Brandwatchでは、Twitterのデータであれば過去10年分のデータを抽出できます。
最近の投稿内容も勿論気になりますが、どの様に投稿内容が変化しているかを調査したい為、

2015年1月1日~2020年9月30日

のおよそ5年弱の期間で分析を行いたいと思います。
(2020年10月に本分析を実施)


分析準備③:データの確認

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対象期間が5年弱という、かなり広範囲のデータを対象とすると1300万件という膨大なデータになります
十分なデータが存在することを確認できましたので、早速分析に移っていきたいと思います。

分析工程①:分析の全体像をイメージする

まず、キーワードを[ガス代、電気代、光熱費、節約]の4つどれかを含む投稿として設定しましたので、それぞれのキーワードの投稿量を時系列毎に見ていきます。

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図A
(キーワード:[ガス代、電気代、光熱費、節約])
(分析期間:2015/1/1〜2020/9/30)


図Aは、2015年1月から2020年9月までの期間で、[ガス代、電気代、光熱費、節約]それぞれのキーワードを含む投稿が、どの様に推移しているかをキーワード別に表したグラフになります。
ご覧いただいてわかる通り、赤線で示される[節約]のワードが圧倒的に投稿数が多い事が確認できます。
その他3つのワードの推移が見え辛い為、[節約]を除いて確認してみます。

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図B
(キーワード:[ガス代、電気代、光熱費])
(分析期間:2015/1/1〜2020/9/30)

図Bは、[ガス代、電気代、光熱費]それぞれのキーワードを含む投稿量の推移です。
面白い事に、ガス代と光熱費のグラフの増減するタイミングがかなり近似している事がわかります。
電気代も、急激な投稿量の増加によって少し外れる時があるものの、概ねガス代、光熱費と増減のタイミングが似ている事が確認できます。

ここで、3つの投稿量の増減が近似している事から、「景気の変動が各投稿量に影響しているのではないか?」という仮説を立ててみます。

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図C
(景気動向指数/赤線:DI指数、青線:CI指数)
(対象期間:2015/1〜2020/9)

図Cは、内閣府が公表している「景気動向指数」を時系列に沿ってグラフにしたものです。
赤線がDI(ディフュージョンインデックス)の一致指数と呼ばれる指数、
青線がCI(コンポジット・インデックス)の一致指数と呼ばれる指数です。

大まかにご説明すると、増減が激しい赤線のDI指数は景気の局面判断や転換点判断に有効なものであり、緩やかな青線のCI指数は景気動向の大きさやテンポなどの大局を判断する上で有効なものです。
DI指数・CI指数共に、数値が高いほど好景気を、数値が低いほど不景気を観測しています。

DI(ディフュージョン・インデックス)とは
景気動向の方向性を示す指標で、各経済部門について、指標の数値が上昇しているのか低下しているのかを調べ、景気がどのくらい波及しているかを把握するためのもの。
CI(コンポジット・インデックス)とは
構成する指標の動きを合成する事で景気変動の大きさやテンポ(量感)を表し、2015年を100として前月の指数が大きく増えているようであれば景気回復が急ピッチであるなどと見る事ができる。

それぞれを比較してみると、「DI指数のグラフ」と「ガス代・電気代・光熱費の投稿量のグラフ」の増減が見事に反比例している事がわかります。

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図D
(上からDI指数、[電気代]、[ガス代]、[光熱費]投稿数のグラフ)
(分析期間:2015/1/1〜2020/9/30)

DI指数のグラフ(一番上)の増加が確認されたポイントでは、他のグラフの減少が、DI指数のグラフの減少が確認されたポイントでは、他のグラフの増加が見えるのがわかります。

また図Eより、投稿数の増減に変化が乏しい[節約]のキーワードについても、大局的に見るとCI指数と反比例して増減しているのがわかります。


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図E
(上からCI指標、[節約]投稿数のグラフ)
(分析期間:2015/1/1〜2020年9/30)


以上の結果から、[ガス代・電気代・光熱費・節約]それぞれのキーワードにおいて、「好景気の場合は各キーワードの投稿量が減少し、不景気の場合は各キーワードの投稿量が増加する」事が分かります。
つまり言い換えると、
「好景気の場合は各キーワードに対する関心が低く、不景気の場合は各キーワードに対する関心が高い」
という事になります。

では、[ガス代][電気代][光熱費]の3つのキーワード毎にそれぞれ内容を調査してみたいと思います。


分析工程②:[ガス代]に関する投稿を調査する

分析肯定①で、景気の変動によって各投稿量に変化がある事がわかりました。
それでは、投稿の内容についてはどのように変化しているのでしょうか。
まずは[ガス代]で抽出された関連ワードについて見ていきます。

関連ワード分析

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(右)図F:2017年の関連ワード、(左)図G:2018年の関連ワード

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(右)図H:2019年の関連ワード、(左)図I:2020年の関連ワード
(キーワード:[ガス代])
(分析期間:2015/1/1〜2015/12/31、2020/1/1〜2020/9/30)

それぞれ、2017年1月~2020年9月末時点における、[ガス代]と一緒に投稿されている関連ワードになります。
2017年、2018年、2019年の関連ワードの内容にあまり大きな違いはありませんが、2020年に入って急に「エネチェンジ」「キャンペーン」「切り替え」「当たる」など、キャンペーン要素の強いワードが検出されている事がわかります。
それらのワードを含む投稿について詳しく確認すると、「ガスと電気を同時に切り替える事で、ギフト券が当たるキャンペーン」についての投稿が多くありました。
2020年に入って、業界の中でSNSを使ったキャンペーンが大きな反響を呼んでいる事がわかります。

ポジティブ・ネガティブワード分析
また、[ガス代]を含む投稿内容を、ポジティブ・ネガティブ・ニュートラルの3種類に振り分けた時に、それぞれどのような単語が関連して頻出しているかを調査します。

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図J(緑:ポジティブ、赤:ネガティブ、灰:ニュートラル)
(キーワード:[ガス代])
(分析期間:2015/1/1〜2020/9/30)

ネガティブな投稿には、やはりお金にまつわる投稿が多い事を確認できます。
景気が悪い時ほど投稿量が増える事からも、ガス代の節約を気にしている人にとって、SNS上でキャンペーンを行う事は非常に合理的であると言えます。

シーズン分析
最後に、投稿季節について見ていきます。

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図K(時系列毎の投稿量を棒グラフで表現)
(キーワード:[ガス代])
(分析期間:2015/1/1〜2020/9/30)

赤丸を置いている箇所が、1月の投稿量を示しています。
その年によって投稿量に違いはあるものの、どの年も1月になると急激に投稿量が伸びている事がわかります。
冬はガス代が高くなる事もあり、1月をピークに、寒くなるにつれて消費者のガス代に対する意識も向上している事が確認できます。

また、2020年に入って6月以降の投稿の伸びが著しい事が見て取れます。
これはコロナの影響で在宅時間が伸びた事が関係していそうですが、投稿内容にあまり「コロナ」に関するものは検出する事ができませんでした。
どちらかというと、コロナが投稿数に直接影響しているというよりも、コロナの影響で不景気感が広がり、その影響で投稿数が伸びていると解釈する方が自然かと思います。


分析工程③:[電気代]に関する投稿を調査する

続いて、[電気代]の投稿内容について見ていきます。

トレンドワード分析<男女別>
[電気代]というキーワードについて、2015年のキーワードに対する関連ワードを男女別に表示してみます。

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図L
(キーワード:[電気代])
(分析期間:2015/1/1〜2015/12/31)

左が女性の投稿、右が男性の投稿の頻出ワードです。それぞれ男女の投稿内容にどのような違いがあるかを調査してみると、かなり女性の投稿に寄っている事がわかります。
つまり、女性は「電気代の節約」に関連する内容を数多く投稿しており、男性はそれが殆ど無い事がわかります。

では、この意識が2020年になってどの様に変わったかを見てみます。

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図M
(キーワード:[電気代])
(分析期間:2020/1/1〜2020/9/30)

相変わらず女性の電気代節約に関連する投稿は多いものの、男性の投稿量も大きく変化している事が見て取れます。
2015年時と比べて、男性の電気代節約に対する意識が向上している事がわかりました。

ポジティブ・ネガティブワード分析

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図K(緑:ポジティブ、赤:ネガティブ、灰:ニュートラル)
(キーワード:[電気代])
(分析期間:2015/1/1〜2020/9/30)

また、[電気代]の関連ワードについて、ポジティブな投稿・ネガティブな投稿それぞれに振り分けた結果が図Kになります。
本分析の趣旨とは外れる為あまり深くは言及しませんが、ポジティブな投稿には[エアコン]というワードが、ネガティブな投稿には[アイロン]というワードが頻出している事が非常に興味深いです。

シーズン分析
先ほどと同様、季節毎に投稿量がどう変化しているのかを調査します。

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図L(時系列毎の投稿量を棒グラフで表現)
(キーワード:[電気代])
(分析期間:2015/1/1〜2020/9/30)

緑丸を置いている箇所が7月の投稿量を示しています。
どの年も、7月、8月にかけて投稿量が大きく増加している事がわかります。
[ガス代]の時とは逆で、夏場の暑い時期が一番電気代に対する意識が高いと言えます。


分析工程④:[光熱費]に関する投稿を調査する

同様の手順で、光熱費に関する投稿内容の調査を行います。

トレンドワード分析<男女別>
[光熱費]というキーワードを設定し、2015年と2020年のキーワードに対する関連ワードを男女別に表示し、比較をします。

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(左)図M:2015年の男女別トレンドワード
(右)図N:2020年の男女別トレンドワード
(キーワード:[光熱費])
(分析期間:2015/1/1〜2015/12/31、2020/1/1〜2020/9/30)

[光熱費]の関連ワードでは節約に関する投稿が多い事がわかります。
一番重要なのは、[電気代]の分析結果と同様、男性よりも女性の方が光熱費・節約に関する意識は高いものの、年月を経て男性の意識が徐々に高まっている点です。

また、男女混合のトレンドワードは以下の通りです。

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図O
(キーワード:[光熱費])
(分析期間:2015/1/1〜2020/9/30)

光熱費について意識が向いている人は、オール電化や太陽光発電、エコキュートに対する関心が強そうです。

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図P(緑:ポジティブ、赤:ネガティブ、灰:ニュートラル)
(キーワード:[光熱費])
(分析期間:2015/1/1〜2020/9/30)

但し、図Pより太陽光発電については良い意見と悪い意見の両方ありそうです。
弊社では太陽光発電は取り扱っていない為今回深堀りはしませんが、弊社サービスの競合に当たる為、営業現場で太陽光発電の話が出る事は多い様です。
今後別の機会に調査してみたいと思います。

シーズン分析
[光熱費]の場合は、季節毎に投稿量がどう変化しているのかを調査します。

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図O(時系列毎の投稿量を棒グラフで表現)
(キーワード:[光熱費])
(分析期間:2015/1/1〜2020/9/30)

赤丸が1月、緑丸が7月を示しています。
やはり、1月と7月の投稿量は他の月よりも多く見えます。
ただ7月の投稿量は1月程多くはない様です。

因みに、[節約]で抽出した場合はどうでしょうか。

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図P(時系列毎の投稿量を棒グラフで表現)
(キーワード:[節約])
(分析期間:2015/1/1〜2020/9/30)

他の時ほど顕著では無いものの、1月の投稿量が他の月と比較して多い事がわかります。
7月も時々投稿量が増えている場合もありますが、他の月と大きな違いはありません。

つまり、総合的に見て、1年の中で最も光熱費について意識が向くのは1月であると言えます。


今後の施策

今回、ソーシャルリスニング分析を行った事で様々な事がわかりました。

<ポイント>
1:[ガス代、電気代、光熱費、節約]それぞれの投稿量は景気と相関しており、不景気な時ほど関心が強いと言える。
2:今年に入って、ガスのスイッチングキャンペーンがSNS上で話題を呼んでいる。
3:ガス代に対する関心が最も高いのは毎年1月、電気代に対する関心が最も高いのは毎年7月~8月であり、光熱費や節約意識全般で考えると、毎年1月が最も意識の高い月と言える。
4:光熱費に対する節約意識は、男性よりも女性の方が依然として強いが、男性の意識も年々強まっている。
5:光熱費に関心を持っている人は、太陽光発電やエコキュートに関心を持っているが、意見は賛否ある。

以上のポイントを踏まえて、今後弊社では以下の様な施策に繋げたいと考えています。

<今後の施策>
1:「不景気な時ほど光熱費について検討する人が多い」というデータを営業資料・営業トークに取り入れる事で、顧客心理に訴え、訴求に繋げる。
2:SNSを使ったスイッチングキャンペーンを今後新たに企画する。(効果については今後追加検証が必要)
3:ガス代・電気代それぞれの関心が高い月に営業リソースを充てる事で、売り上げの最適化を目指す。
4:女性の節約意識の高さと、男性の節約意識の推移を情報として営業資料・営業トークに取り入れる事で、訴求に繋げる。
5:競合商品についての情報を調査し、メリット・デメリットを把握する事で営業戦略に繋げる。(今後追加検証が必要)


まとめ

今回は、BrainPad様より、マーケットリサーチツールの「Brandwatch」をお借りして、市場調査を行いました。
今後追加で調査が必要な項目も幾つかありますが、大変有益な情報が得られたと思います。
今回得られた結果を元に、売り上げの向上に繋げていきたいと考えています。


最後に

本記事を最後まで見て頂き、ありがとうございます。
弊社では、マーケットリサーチツールを活用し、様々なソーシャルリスニング分析サービスを行ってます。

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