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父親になってわかった事

私の父は

私の父は昭和16年生まれだ。私が仕事の関係で、たまにしか帰省できない事も原因だが、たまの実家となると決まって酒を酌み交わし、酔いがまわってくると必ず出てくる話がある。

俺(父)がちっちゃい頃はとても貧しくて、小さい頃から新聞配達で家計を支えていた。自分の父は俺が小学校時代に他界した。新聞配達は今みたいに道路も舗装されておらず、砂利道を身体の割りに大きな自転車にまたがり大雨だろうが、雪が降ろうが、寒い朝だろうが配達に出向いた。それに比べて今のお前たちは幸せだな。

そんな話が始まる「くだり」は大体わかるので、はいはい、わかったわかったと話を遮るか、空いたグラスにビール、または日本酒を継ぎ足し話の流れを折る作業が毎回発生した記憶が残っている。

でも具体的に言葉には出さなかったが、人に気遣うやさしさを身体で表現していて、古い言い方で言えばその「背中」を私は見て育ってきた。

中でも「自分がされて嫌な事は、人にもするな」という言葉は、よく聞かされた気がする。

自分も父親になった

私も今は2人の男児を持つ父親だ。長男はすでにコミュニケーションはとれるし、次男も自分の意思を主張し、嫌なことは嫌だ、と今では家族の中で一番の頑固者にまで成長した。

私の信条も、基本的には世の為、人の為、がまず一番!と信じてやまない。

そして、当たり前の事を、当たり前にする事が簡単ではあるが、継続して行う事なども含め実は一番大変な事であり、意義のある事だと思っている。

子供達同士が公園で遊んでいるよくある光景で、ある事がきっかけで自分の子供がふいに女の子と喧嘩になり、結果的に女の子が泣いてしまっていた光景をある日目にした。

自分の子供に何が起きたのか理由を聞くと、自分がもう一度遊びたかった遊具を譲ってくれなかったので、思わず感情が抑えきれず喧嘩になってしまったという。

自分がされて嫌な事は、お友達にもしてはいけないんだよ

思わず口から出たセリフだった。納得した自分の子供はまた元気に友達と公園で遊び始めた。

お父さん、ありがとう

先日、こんな事があったんだよ。と、自分の父親に報告へ。

この前俺の子供が友達同士公園で遊んでいたら、喧嘩になったんで思わず叫んで「自分がされて嫌な事は、人にもするな!」って言っちゃったよ。

誰に似たんだか・・・。


私の父親は、もういない。

今から7年前に闘病の末、この世を去った。私の妻のおなかに命を授かったことは幸い報告できたが、結局孫の顔を見る事なく数年前に他界した。

生前間際、髪は真っ白になり、体は痩せ、身体が弱っていく姿を目の当たりにした。そんな私の父親は、僕の奥さんに新しい命を授かった、と報告した時のガッツポーズ、は今での脳裏に焼き付いている。

「やったな、でかしたぞ!」


人の人生などそんなものか。これほど儚いものか。

父親の存在など、小さい頃には何とも思っていなかった。死ぬ前に親孝行しろ、とはよく耳にする言葉だ。それが何だと社会人になってからも正直わかっていなかった。

自分が父親となり、同じ立場になり初めて分かった。

自分の子供には人の気持ちがわかる優しい人間にへと成長してもらたい。

おとうさん、ありがとう。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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