見出し画像

ボルシアMGが首位。何が起こっているの?

 本誌編集部の近藤七華が、“ミスター・ブンデスリーガ”こと鈴木良平さん(サッカー解説者)に直撃!

Q:ボルシアMGが首位。何が起こっているの?
A:前線の3人が、ローゼのハイプレス&ショートカウンターを具現化しています。

 このクラブが首位にいるということ自体、何十年ぶりかの出来事です。開幕3、4試合で首位に立つことはどのクラブでも考えられますが、9試合を終えて首位というのは、確実に力がついてきている証だし、十分に価値のあるものだと思います。

 1-3で敗戦した第3節のライプツィヒ戦は、完全にティモ・ヴェルナーのスピードにやられましたが、完敗という内容ではありませんでした。第9節のフランクフルト戦では白星を挙げているし、1つ前の試合ではドルトムント相手に接戦でした。昨シーズンまでに比べ、どこと戦ってもそれなりにいい試合ができるようになりました。このまま首位を維持できるとは限りませんが、成長していることは明らかです。

 好調の最大の理由は、この夏、監督が代わったことだと思います。昨シーズンはディーター・ヘッキング体制で5位にフィニッシュ。ボルシアMGにしては上出来です。それでもクラブは、ザルツブルクから43歳のマルコ・ローゼを招聘し、さらに上のレベルを目指しました。

 ヘッキングはしっかりとボールをキープするサッカーを目指しましたが、ローゼはキープよりも早く前に攻めようとするサッカーを好みます。前線からプレスをかけてボールを奪い、そこから一気にゴールを目指す。今のトレンドと言われるスタイルですね。つまり、チームは今、昨シーズンまでとは全く違ったサッカーをしているわけですが、これがすごくいい形で表現できているんです。

 前線の3人は特に調子がいいですね。この夏ギャンガンから加入したマルクス・テュラムは、元フランス代表のリリアン・テュラムの息子で、スピードとテクニックを備えています。ブリール・エンボロはシャルケが2016年に高額の移籍金で獲得した青年で、シャルケではケガやチームスタイルに悩まされ、力を発揮できずにいたところをボルシアMGが引き抜きました。もう一人、アラサン・プレアは昨シーズン加入してきたフランス人です。この3人が、開幕からローゼのハイプレス&ショートカウンターを具現化しています。

 彼らの活躍を支えている中盤から後ろの選手の中では、アンカーのデニス・ザカリアの急成長ぶりが見逃せません。在籍3年目を迎えた22歳は来シーズン、おそらくどこかに引き抜かれるでしょう。右サイドバックのシュテファン・ライナーは、ローゼがザルツブルクから連れてきた選手です。彼はとにかくよく走る。ローゼのサッカーには必要不可欠です。

 正直、僕が3年いたクラブでもあるので結果を残してくれたらうれしいですが、優勝候補ではありません。残念ながらこのクラブは、毎年のように中心選手を引き抜かれてしまうんです……。財力の問題もあるし、選手はやっぱりトップクラブでプレーしたいですからね。

鈴木良平(サッカー解説者)
体育教師を志して東海大学へ入学するも、サッカー指導者になる夢が芽生えて1973年にボルシアMGへ留学。ドイツサッカー協会公認のS級ライセンスを取得した。1986年には日本女子代表の監督に就任し、AFC女子選手権(現・女子アジアカップ)で2位という好成績を収めた。1990年頃からはサッカー解説者として、主にブンデスリーガを担当している。

▼11月15日発売の雑誌『SOCCER KING』12月号では、「異変だらけの序盤戦、36のなぜ?」と題し、各国の序盤戦で生まれた36の疑問に迫っています。ご購入はこちらから!


最後まで読んでいただきありがとうございます! 「こんな記事を読みたい!」「これおもしろかった!」などのコメントもお待ちしております。