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3 国によって英語学習に差がある理由② 〜言語の違い⑴ 文法〜

りんごがapple、犬がdog、くらいしかわからない子どもの頃、日本語を英語にするとはこんなふうに考えていたと思う。

https://alote.inmybook.jp/in-house-training/japanese-difficult/


これはタイ語だが、こうやって、りんごがappleのように全ての日本語の単語がそれぞれ英語に置き換わるだけだと。でも実際は違う。とりあえずどうなっているのか見てみよう。


https://alote.inmybook.jp/in-house-training/japanese-difficult/


中学英語くらいを勉強してきた人ならわかるが、単語を英語に置き換えるだけで、英文ができるわけではない。むしろ日本語の場合は真逆に配置し直さないといけないし、他にも時制の問題だってある。現在完了って、日本人の感覚としてもあるけど、文法規則にまではっきりさせた形になっていない。だから使い方が難しい。私はまだなんとなくしかこういう時に使うんだなくらいにしか分かっていない。

というわけで、英語と日本語は文法的にかなり異なっている。そもそも見方が異なるのだ。遠藤雅義は「英会話 イメージトレース習得法」の中で主に3つの見方の違いを述べている。

①認知の順序が逆になっている。
→日本語では周辺から中心へ、英語では中心から周辺へ。

②日本語に「私」が出てこない。
→日本語はプレイヤー自身が場に埋め込まれている一人称ゲーム、英語はプレイヤーを表すの自機が画面上に映るインベーダーゲーム。

③日本語は受け身、英語は発信源
→日本語は視点に依存、英語は発信源に依存。

「英会話 イメージトレース習得法」

詳しいことは、また「言語が思考に及ぼす影響」のところでじっくり考えるとして、今回はこの程度にしておく。でも文法の違いはそもそも見方・世界観の違いからきていて、そこに大きな差があると習得が難しいのは想像できる。

さてここで、実際に習得難易度の調査結果を見ていこうと思う。

ここに二つの資料がある。上の資料はFSI language courses という団体が、英語話者の人たちがそれぞれの言語を学ぶ時の難易度と目安の習得時間を示したものである。そして下の資料はアメリカ国務省が発表している、同じような資料である。

Category I – Languages that usually require around 24-30 weeks or 600-750 class hours to reach S-3/R-3 proficiency. This group contains languages like French, Spanish, Romanian and Dutch.

Category II - German - Language that requires around 30 weeks in a category of its own.

Category III – Languages that usually require around 36 weeks or 900 hours of instruction to reach S-3/R-3. These languages are slightly more difficult, and this group includes Indonesian and Swahili.

Category IV – Students usually need around 44 weeks or 1100 class hours to reach S-3/R-3. This is the largest group and contains a wide variety of languages, including Russian, Hindi, Tamil, Thai, Vietnamese, Turkish, Finnish and many more. They are described as “hard languages”.

Category V – It usually takes 88 weeks or 2200 hours to reach S-3/R-3 proficiency in these languages. This small group of “super-hard languages” includes Chinese (Mandarin), Cantonese, Japanese, Korean and Arabic.

FSI( https://www.fsi-language-courses.org/blog/fsi-language-difficulty/)


アメリカ国務省

どちらの資料からも英語話者にとって日本語の難易度は最上位に位置づけられている。だから日本人にとって英語の習得はある程度難しいことはここから推測できる。ただここで注意したいのは、同程度の双方向性ではないということ。これはあくまで英語話者にとってに日本語が最も難易度が高いということであって、日本語話者にとって英語が最も難易度が高いという結論が導き出せるわけではないということ。

次の資料を見てみよう。これはDILA社という国際語学アカデミーを運営しているところが出している資料からある人が作成したものだ。

難易度:Ⅰ・比較的やさしい ⇔ Ⅳ・比較的むずかしい
難易度 言語
Ⅰ 韓国語、インドネシア語、マレーシア語、スワヒリ語
Ⅱ スペイン語、ポルトガル語、トルコ語、中国語、ベトナム語
Ⅲ 英語、フランス語、ドイツ語、ハンガリー語、タイ語
Ⅳ ロシア語、ポーランド語、チェコ語、アラビア語
(参考:DILA社データより作成)

https://www.shoko-ranking.com/entry/2020/03/25/日本人が習得しやすい言語ランク(日本語のルー#日本人にとって英語は比較的習得が難しい言語


英語はやはり比較的難しいところに位置づけられているが、それよりもアラビア語が難しいというのはなんとなくわかる。なんだかんだアルファベットには日常的に触れているが、アラビア文字に日常的に触れることはない。でもそれだけではない。その理由をこれから探っていく。

あと一つ前の資料に戻るが、英語話者にとってタイ語が意外と難しいというところに位置付けられているのが意外だ。語順が似ているなら、簡単そうに感じられるけどそうではない。文法の構造だけが習得の難易度を決める要素ではないのだ。当たり前だけど。

では、他にどんな要素があるのかを、タイ語を通して考えてみる。ニュージーランドに来るとき初めにkindleに入れたのは高野秀行の『語学の天才まで一億光年』。その中にタイ語の難しさをこのように述べているところがあったので、少し要約させてもらったがこのように書いてある。

①文法 人称や時制によって動詞が目まぐるしく変化するフランス語やスペイン語とは違い、「行く」という意味の動詞は主語が私でもあなたでも、現在でも過去でも「パイ」しかない。おそろしくシンプルである。
②発音 タイ語には「声調」がある。ヨーロッパ系の言語にも声調はない?と思うし、日本語の場合は高い音と低い音の二種類しかないのだが、タイ語では「平ら」「低く下がる」「下がって上がる」「高く上がる」「上がってから下がる」という五種類の音程がある。
③語彙 近しい言語(今後語族・語派の説明をしようと思うが今回は便宜上近しい言語とした)であれば、基礎言語が似通っているが、タイは日本同様、植民地にされた経験がないアジアでは数少ない国の一つなので、タイ語は日本語以上にヨーロッパからの借用語が少ない。
④文字 アルファベットではない、タイ文字が使われている。

高野秀行『語学の天才まで一億光年』より要約 

つまり、英語とタイ語では4分の1しか似通っているというところがないとも言える。もちろん、文法・発音・語彙・文字が等しく重要だというふうに考えた時にそうなるのであって、実際はそれぞれの配分は異なる。どの順番で学習の難易度に与える影響が大きのだろうか。私の考えではおそらく文法つまり見方・世界観のところが一番比重が高いのではと思っている。

そう考えると、文法・発音・語彙・文字の全てがかなり異なる、日本語は英語話者にとっても、日本人にとっても難しいことは容易に想像がつく。

さて、次回は発音について、少し詳しく考えてみたい。

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