北海学園文学会ウェブエッセイ⑰「言葉に酔いしれて」

 ごきげんよう。文学会部長のソブリテンです。ウェブエッセイではお久しぶりですね。蒸し暑い日が続いたり続かなかったりしていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 明らかに今日終わらせないとやばいレポートをほったらかして読む百合漫画が面白いし、レポート終わったら飲もうと思って昨日冷蔵庫に入れたラムネは冷えていて美味しいし、今日は良い日だな……みたいな。致命的な怠け癖といっしょに、僕はこの夏をだらしなく過ごしています。

 僕の怠け癖は大したものです。たとえばウェブエッセイ。そうです、今まさに僕が書いているこれです。設立したはいいものの、投稿はほとんどほかの部員さんに任せきりになってしまっています。書きたいことは山ほどあるのですが、「書きたい!」からの「書こう!」に時差がありすぎて、今や塵も積もればバベルの塔。そろそろお叱りを受けるのでは、というぐらいまで天高く積み重ねてしまっています。

 この春から夏にかけて、文学関連で色々おでかけをしていまして。どれも素敵な思い出なので、書き留めておきたいな……と思っています。「書きたい!」の気持ちを、忘れてしまう前に。このエッセイはその第一弾です。

 前置きが長くなりすぎましたね、ごめんなさい。本題に入りましょう。

 文学会の後輩から、高校時代に文芸誌を作っていたという話を聞いたのは四月の中旬ごろ。右も左もわからないまま部誌制作を始めた僕にとって、その話は非常に魅力的でした。読ませてもらった文芸誌も、本当に素晴らしくて。特に、後輩が書いた作品は。それを紡ぐ言葉は。酔いしれるほど美しく、きらきら輝いていて。それでいて、心を抉るような繊細さがあり。「こんな作品が書きたい」を通り越して、「こういう作品を世界に届けたい」とさえ思いました。たとえ、それが僕によって書かれたものではなくとも。感情と心を通わせたあの瞬間を、信じたいと感じたのです。

 興味と好奇心にはどうしても抗えない性格の僕。ちょっとしつこいぐらい「その話もっと聞かせて!」と食いつきました。今考えると迷惑だったよな……と反省しているのですが、後輩は目を輝かせながら色々話してくれて。それがすごく嬉しくて、楽しくて。もっと!もっと!と前のめりで聞いているうちに。五月上旬のある日、後輩がこのような提案をしてくれました。「文芸誌の先生に会いに行きませんか」と。

 高校時代の先生とばったり町で会ったりなんかすると、「いつでも遊びにおいで」と言ってくれます。「はい!ぜひ!」とか言っておきながら……。どのタイミングで行けばいいか、そもそも本当に行っていいものなのかわからず。自分の母校を訪問することはないままでした。そして、驚くべきことに。自分の母校よりも先に、後輩の母校を訪問することになりました。

 知らない学校に突然お邪魔するなんて大丈夫なのかな?とも考えましたが、先生には許可を取ってくれたとのことで。こんな機会なかなかないし、色々聞きたいこともあるし。これはもう行くしかないな!と、喜んでついていくことにしました。目の前のキラキラには、いつも飛び込んでいたいのです。

 特定が怖いのであまり詳しくは書きませんが、とにかく素敵な学校でした。誰かの思い出が、ここには生きているんだな。玄関の段差や、階段の手すりに、掲示板。初めて見たはずの情景に、不思議と懐かしさを覚えながら歩いて。後輩に校舎を案内してもらいました。

 廊下で運動部の方々に挨拶されて、「来訪者挨拶をされる側になったんだな」という謎の感動に襲われたりしながら。約束の時間になり、後輩の恩師さま(以後先生とお呼びします)と待ち合わせていた場所へ向かいました。

 先生は、優しく穏やかで、それでいて情熱溢れる方でした。お話をお聞きしていると、ひしひしとそれが伝わってきたのです。まるで、庭園に刺す力強い太陽の光。この先生があって、後輩のあの素晴らしい文章が生まれたのかな。勝手にそう思って、勝手に大感謝していた僕にも話が振られました。

 現在再建したての文学会で、様々な活動を試みていること。そのひとつに、部誌制作があること。右も左もわからないので、文芸誌について勉強したいということ。緊張しながらも、色々お話させていただきました。先生はとても親身にお聞きくださり、興味もお持ちいただけまして。文芸誌に関しては、アドバイスや情報をたくさんお教えいただき。感謝してもしきれないほど、その会話は有意義なものとなりました。文学会といつか一緒に何かしてみたいとも仰っていただき、僕はもう有頂天でしたね。

 楽しい時間はあっという間で。先生や学校関係者の方々にお礼を申し上げ、校舎を後にした僕と後輩。帰りのバスで、なんとなく聞いてみました。「あの作品を、どんな気持ちで書いたの?」と。後輩はしばらく考え込んだあとに、教えてくれました。その内容をここに書くのは、なんか違う気がするので書きません。ごめんなさい。

 『春の配達員と雪だるま』という、部誌掲載予定の拙作があります。この作品は、その言葉によって書くことができました。スランプだった当時の僕に、「今僕が書くべきもの」を気づかせてくれたのです。

 人の心は、言葉を紡ぎ。言葉は人の心を動かして。そうやって、ひろがっていくのです。言葉に酔いしれて。その輝きに憧れて。今日も僕は、言葉を紡ぎます。

ソブリテン

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